ALAN BOWN SET

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ALAN BOWN SET」。 トランペット奏者アラン・ボウンのグループ。65 年結成。72 年解散。作品は五枚。

 The Alan Bown !
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Alan Bown trumpet, flugelhorn, maracas
Jeremy Roden vocals on 1-4, 6-10, percussion
Vic Sweeney drums, percussion, vocals on 5
Stan Haldane bass
Tony Catchpole guitars, vocals on 5,7
Jeff Bannister piano, organ, vocals on 7
John Anthony tenor & alto saxophone, recorder, clarinet
John Hemmings trombone

  69 年発表のアルバム「The Alan Bown !」。 内容は、ジェス・ローデンのソウルフルな歌唱をフィーチュアした R&B テイストとフォーキーな哀愁の入り交じった英国歌ものロック。 ビートポップス、サイケデリック・ロックをブラスをスパイスに整理した一つの最終形であり、ここからジャズに焦点を当てたプログレッシヴ・ロックへと進展してゆく、いわば橋渡し的な音である。 デリケートなアコースティック・サウンドと管弦楽を使ったアレンジも当たっている。 ボウンのトランペット・ソロのスペースがあまり大きくないこともあって、ジャジーな広がりは今一つ。 ギタリストとキーボーディストがリードする B1 は PROCOL HARUMTHE MOODY BLUES のハイブリッドのようなマジカルで無常感あふれるシンフォニックな佳作。 ポリドールの CD 音源は UK 盤ではなく US 盤と同じマスターを使用しているようだ。

  「Still As Stone」(2:46)
  「Strange Little Friend」(2:21)
  「Elope」(3:36)
  「Perfect Day」(3:00)名バラード。
  「All I Can」(2:44)トニー・キャッチポールの歌うセンチメンタルな 60 年代調バラード。小さいが名曲。
  「Friends In St. Louis」(2:29)

  「The Prisoner」(10:18)
  「Kick Me Out」(2:57)
  「Children Of The Night」(2:55)
  「Gypsy Girl」(2:30)
  
(DES 18032 / POCJ-2835)

 Listen
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Gordon Neville vocals
Alan Bown trumpet
Jeff Bannister keyboards
John Anthony Helliwell sax
Tony Catchpole guitar
Stan Haldane bass, vocals
Vic Sweeney drums, percussion

  70 年発表のアルバム「Listen」。 ISLAND レーベル移籍後の第一作。(グループとして四作目) 内容は、ソウルフルなヴォーカルと管楽器を中心としたジャジーなロック。 R&B の熱気、サイケデリックな浮遊感と酩酊感、フォーキーな幻想性が入り交じった空気を若気のストイシズムで抑えた、英国ロック固有のくすんだ色合いの作風である。 ギター、ベース、ドラムス、オルガン、ピアノらがタイトで重心の低いアンサンブルを成し、それらのいい仕事が甘みと苦味が絶妙なヴォーカリストの歌唱を支えて、曲に多彩な雰囲気を適切にあてはめている。 ギタリストは、控えめなプレイにもかかわらず小さいスペースでビシッと決めるところからして、おそらくかなりの遣い手だろう。 同様にオルガンとピアノも要所で見せ場を作っている。 そして、トランペット、サックスの二管ではあるがブラス・ロックといっていいほどの勢いを見せて華やかに曲を飾る。 リリカルなトランペット、イケイケだが締まったサックスもじつにいい感じだ。 全体を貫くのは「クールさ」であり、そこからしみ出す「幻想性」だろう。 汗臭い R&B や重いブルーズ、埃っぽいフォークをちらつかせるが、ジャジーな音で温度も湿度も下げてスタイリッシュに仕上げている。 その先導となるのが、つややかで軽快な管楽器である。 前作のサイケデリック→ポップという変化から、音楽的な冒険を希求してアングラ気味のジャズロックという方向へと舵を切り直した作品といえるだろう。
   プロデュースはメル・コリンズ(KING CRIMSON のサックス奏者とは同名異人)。 製作中にロバート・パーマーが脱退したため、急遽ゴードン・ネヴィル(声質、音程ともに適任)を加入させてヴォーカル・トラックを録り直したらしい。(パーマー自身も前作で脱退したジェス・ローデンのヴォーカル・トラックを置き換えているという興味深い因縁がある) サキソフォニストのジョン・ヘリウェルは後に SUPERTRAMP に加入してビッグネームとなる。

  「Wanted Man」(4:20)渋さと華やぎが矛盾なく同居するキラー・チューン。ゲアリー・ピックフォード・ホプキンズを思わせる塩気ある歌唱と奔放なピアノ、そして絶妙のドラミング。
  「Crash Landing」(5:55)隙間だらけのメランコリックなバラード。ここでもブラスが彩りをつける。低空飛行すぎるギター・ソロ。
  「Loosen Up」(3:25)安定感あるブルーズ・ロック。寄り添うように盛り上げるブラス、さりげないギターがいい。 ジャジーな FREE
  「Pyramid」(3:46)哀愁あるもキャッチーな歌ものロック。TV 番組のテーマ曲のよう。
  「Forever」(2:50)ワウとエコーを駆使したトランペットがリードするサイケデリックなジャズロック・インストゥルメンタル。
  「Curfew」(4:00)曲名は「夜間外出禁止令」の意。
  「Make Us All Believe」(4:30)
  「Make Up Your Mind」(8:45)ソロをフィーチュアしたサイケでフリーなオムニバス風ジャズロック。最後にヴォーカルが現れるので、巨大なイントロをもつ作品とも取れる。初期 KING CRIMSON のテイスト。
  「Get Myself Straight」(4:00)PROCOL HARUM 調のオーセンティックなバラード。
  
(ILPS-9131 / ECLEC2193)

 Stretching Out
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Gordon Neville vocals
Alan Bown trumpet
Jeff Bannister keyboards
John Anthony Helliwell sax, clarinet
Tony Catchpole guitar
Andy Brown bass, vocals
Vic Sweeney drums, percussion

  71 年発表のアルバム「Stretching Out」。グループの最終作。 ソウル風味を残しつつもよりアグレッシヴにジャズロックへと傾倒した内容になっている。 器楽の拡張、アレンジの複雑化とともに楽曲は長大化する。 さらに、リズムや反復の実験性など現代音楽的な面も見せる。 リーダーのボウンのアレンジに加えて、新ベーシストのブラウンと鍵盤奏者のバニスターはイマジネーションあるプレイでこの新しいアプローチの核となっている。 そして、そのアヴァンギャルドな姿勢をブルーズやゴスペルやフォークやジャズというフォーマットにはめて独特の土臭さでまとめあげつつ、ポップなアクセスのしやすさをもキープしている。 英国ロックらしさが凝縮された作品といえるだろう。 TRAFFIC と同じセンスはあると思う。 傑作。
   プロデュースはメル・コリンズ。 デイヴ・ロウソン率いる WEB/SAMURAI のファンにお薦め。

  「The Messenger」(7:45)得意のソウル、ゴスペル調の歌ものジャズロック。そこへ大胆なリズム・チェンジを放り込んで自然に聴かせるところが新機軸。後半は酸味の効いたオルガンのソウル・ジャズ風のアドリヴが爆発。リズム・セクションのキレにも注目。 今更ながらサイケデリック・ロックとジャズのアドリヴが同じ方向を目指していたことに気づく。

  「Find A Melody」(5:15)アブストラクトなピアノのリフレインが不思議と感傷を呼覚ます佳曲。ギター・ソロとのバランスもいい。 もう少しで YESGENTLE GIANT に届いたと思う。

  「Up Above My Hobby Horse's Head」(4:20)武骨ながらも軽快なフォーク・ロック。カントリー・フレイヴァーあるギターがさりげなくもカッコいい。リッチー・ヘヴンスのカヴァー。

  「Turning Point」(9:38)フランク・ザッパへの憧憬を隠さない、複雑にしてキャッチーなジャズロック。 ジャジーでルーズなサックス・ソロもこの文脈だとかえっていい感じになる。

  「Build Me A Stage」(3:30)ピアノ伴奏による冬枯れの木立を思わせるバラード。みごとなアルバム構成だ。

  「Stretching Out」(8:25)クールでモダンなブラス・ジャズロック。スペイシーなトランペット・ソロ。リズム・セクションもみごと。 グルーヴィだがファンキーにならないところがおもしろい。

  「Thru The Night」(4:16)ボーナス・トラック。COLOSSEUM を思わせる雄々しくソウルフルなブラス・ジャズロック。ISLAND レーベルのサンプラーより。
  
(ILPS 9163 / ECLEC2194)


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