スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・グループ「ÄLGARNAS TRÄDGÅRD」。 69 年結成。 76 年解散。 グループ名は「The Garden Of The Elks」の意。 メンバーは、RAGNAROK や COSMIC OVERDOSE にも関連する。 SILENCE レーベル。
Andreas Brandt | violins, rebec, cello, guitars, sitar, piano, zither, organ |
Mikael Johansson | flutes, zinks, jew's harp, tablas,percussion, moog, VC-3 |
Dennis Lundh | |
Sebastian Oberg | |
Dan Soderqvist | |
Jan Ternald | |
guest: | |
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Margaretha Soderberg | vocals on 3 |
72 年発表のアルバム「Framitden Är Ett Svävande Skepp, Förankrat I Forntiden」。
内容は、打楽器、管弦楽器、鍵盤楽器などのアコースティック楽器をメインに電子ノイズをまぶしたメディテーショナルなサイケデリック・トラッド・ロック。
出発点は世俗古楽かもしれないが、宇宙意識に基づくさまざまなアイデアと音響操作を気まぐれっぽく盛り込むことで新たな世界に到達した。
そしてそのアプローチと到達点が時代精神と見事にシンクロしたのである。
錯綜する効果音やテープ操作、エコー、ノイジーなフリー・インプロ等、アヴァンギャルドな感性が横溢し、シタールがうねり出せばそこはもう紫煙にけぶるヒッピー・カルチャーど真ん中だ。
薄暗くふわふわととりとめない流れを辿りながらも、耳をすませば女性ヴォーカルや荒々しい弦楽アンサンブルをフィーチュアした純トラッド=世俗古楽風の作品から、ギター、ドラムスをしっかりフィーチュアして泥酔リヴァーヴを効かせたヘヴィ・サイケデリック・ロックもあり、文脈は単調どころかかなり複雑である。
初期のシンセサイザーも使われていることや、ボーナス・トラックでもかなりヘヴィな演奏が行われていることから、瞑想的な世界を作り出すための方法をさまざまに追求し、本作では、その途中の段階で古楽風アプローチという一断面を見せたということなのだろう。
一部のドイツ・ロックと似たアプローチである。
素朴な土臭さ、野卑な力強さとともに宗教音楽の厳かなニュアンスもある。
キワモノ的な面は確かにあるが、初期の KING CRIMSON を思わせる緩みのなさ、厳めしさとリリカルで平安なムードが並立していて、そこをきっかけにすると混沌としながらも美的であることに気づきり耳に馴染みやすい。
とはいえ、いわゆる演奏を積極的に聴かせるタイプではなく「羅列された音が耳に注がれるうちにリスナーのイメージが自然と高まっていけばいい」という気楽なタイプである。
演奏家とリスナーの間には差がほとんどなく、同じ広場に寝転んで音響空間を共有するということだと思う。
じつにピッピーらしい感覚である。
THIRD EAR BAND やテリー・ライリーという表現も散見されますが、聴いたことがないので分かりません。
怪しげだがゴシックのような様式美とは離れた世界であり、よりアナーキーなイメージである。
音程の不安な弦楽器が緊張と弛緩を一度に表現できる飛び道具として機能している。
また声がコラージュされるのに加えて一部でヴォーカルも入る。
アルバムタイトルは「未来とは過去に錨を下して浮遊する船である」の意。
「Revolution #9」に、もう少しきちんとした表情をつけたような感じ、と個人的には思ってます。
楽器の担当は不明。
「Two Hours Over Two Blue Mountains With A Cuckoo On Each Side, Of Hours....That Is」(13:13)
「There Is A Time For Everything, There Is A Time When Even Time Will Meet」(6:10)序盤は教会でお神楽。後半はお経。
「Children Of Possibilities」(3:12)ソプラノ・ヴォイスのヴォーカル入り。
「La Rotta」(1:41)乱調弦楽奏。
「Viriditas」(2:59)泥酔ジャズ。
「Ring Of Saturn」(7:15)幾重にもこだまするギターが軸となる幻惑ロック。
「The Future Is A Hovering Ship, Anchored In The Past」(5:06)百鬼夜行的な緩やかな即興空間。
「5/4」(10:26)ボーナス・トラック。
72 年のライヴ録音。4 分の 5 拍子によるミニマル・ミュージック+ノイズ。音の悪さが却って臨場感を煽る。後半はファンタジックに。
「The Mirror Of Gabriel」(8:25)ボーナス・トラック。瞑想音楽あるいは祈祷。初期の TANGERINE DREAM やクラウス・シュルツェ。72 年のライヴ録音。
(SRS 4611 / SRSCD 3611)
Andreas Brandt | violins, vocals, flute |
Mikael Johansson | bass, handdrum, zither, mellotron on 3 |
Dennis Lundh | drums, tabla, percussion |
Dan Soderqvist | guitar |
Jan Ternald | mellotron, moog modular, organ, electric piano |
Sebastian Oberg | cello, sitar |
2001 年発表のアルバム「Delayed」。
73-74 年に録音されるも、未発表であった第二作の発掘盤である。
そのサウンドは、酩酊、浮遊感あるトラッド・サイケデリックだった前作から、一気に英国ヘヴィ・プログレを思わせるものへと変化した。
茫洋としたメディテーショナルな音楽が基調に、突如ファズ・ギターが咆哮とともに牙を剥き、メロトロンとチェロ、ヴァイオリンが発狂したように炸裂する。
その暴力的な音の嵐によって世界は一変する。
攻撃の手を緩めないドラミング、ぎりぎりの緊張感を孕む弦楽器らによる演出もすごい。
ひらたくいって、KING CRIMSON の第一作や第二作、あるいは「太陽と戦慄」に通じるところすらある。
しかし、KING CRIMSON と異なるのは、ギタリストの技量だけではなく、いまだ IRON BUTTERFLY のような原色泥酔嘔吐サイケデリック調が強いところだろう。
緊張感はあるが、揺ぎ無い緻密さやカミソリのようなキレはなく、過激な変転よりは、ある種の単調さを保ったまま邁進することを好むようだ。
タブラやシタールを使用した「ベタ」なエキゾチズムがあるかと思えば、息を呑むほど幻想的で美しい場面もある。
ホルストの「火星」や THIRD EAR BAND からの引用もあり。
インストゥルメンタルが主。
最終曲は、ヴォーカル入りで前作に近い瞑想的世界。
全体としては、ドイツ・ロック的な世界だと思う。
「Takeoff」()
「Interstellar Cruise」()
「Reflection」()
「Almond Raga」()
「Beetlewater」()
「The Arrival Of Autumn」()名曲。
「My Childhood Trees」()
(SRSCD 3626)