ACQUA FRAGILE

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「ACQUA FRAGILE」。 71 年結成。75 年解散。作品は二枚。2017 年再編し、新作「A New Chant」を発表。 ヴォーカリストのランゼッティは、後に P.F.M に加入。 ウエスト・コースト風のハーモニーと、クリアで透明感のあるサウンドが特徴。

 Acqua Fragile
 
Piero Canavera drums, acoustic guitar, vocals
Gino Campanini guitars, vocals
Bernardo Lanzetti guitars, lead vocals
Franz Dondi bass
Maurizio Mori keyboards, vocals

  73 年発表の第一作「Acqua Fragile」。 内容は、英語のヴォーカル・ハーモニーがリードする、きらめくようにクリアーなサウンドのシンフォニック・ロック。 アコースティックなイメージの音を使いながら、変拍子の込み入ったアンサンブルや大胆な展開も盛り込んだ、いわば YES 風のサウンドで GENTLE GIANT をやっているような芸風である。 へヴィな演奏になっても、ハードロックというよりはフォーク寄りなのは、イタリアン・ロックらしさであるとともに、YESGENESIS のそういう音を目指したためでもあるだろう。 もちろん、透明なハーモニーのせいでもある。 天性の芸術センスでベタなエレガンスとへヴィでアヴァンギャルドなタッチを大胆に入り交ぜたイタリアン・ロックの中では、英国ロックの影響をそのまま受け止めたという点で異色の存在だろう。(BANCOP.F.M はその受け止めを非常に洗練された形で行ったといえる) 随所に GENESISGENTLE GIANT の明らかな影響を見せつつも、爽やかな音色のアンサンブルにオリジナリティを感じさせる佳作だ。 ジャケットは、海の軟体動物の器械体操。 おそらくグループ名を表現したものなのだろう。
   楽曲は、ヴォーカリストのランゼッティとドラマーのカナベーラの共作であり、タイトルも歌詞も英語である。 プロデュースは、P.F.M とクラウディオ・ファビ。

  1 曲目「Morning Comes」(7:25)ギターの和音がそよぐ、たおやかなイントロダクション。 テーマは、ささやきかけるように優しげなフォーク・タッチである。 バッキングはひそやかなアンサンブル。 サビは、ヴォカリーズで力強く高まる。 いったん沈み込んでからのオブリガートのオルガンは、トニー・バンクス風。 強弱の変化をきめ細かくつける丁寧な表現だ。 軽やかなギターのストロークが、一転してチャーチ・オルガンのヘヴィなリフレインへ変化すると、間奏のスタートだ。 ギター・ソロは、レガートなスティーヴ・ハケット流である。 たたみかけるオルガンとサイド・ギターの伴奏が、ドライヴ感を生む。 そしてシャウトで決めるヴォーカル、オブリガートで轟くオルガン、ヘヴィなギター。 熱気のほとばしる演奏だ。 メロトロンとシンバルが一閃し、ギターのリフがテンポを落ちつかせる。 ギター・リフにリードされて、ミドル・テンポのタイトなアンサンブル、そしてヴォーカル・パートが復活。 再びヴォリュームが落ちて、ギターのアルペジオとベースがひそやかに語り始める。 ヴォーカルも、ささやくような風情だ。 オルガンも加わり、演奏に力が満ち始め、クレシェンドとともに舞い上がってゆく。 これは「Musical Box」か。 伸びやかなギター、オルガン伴奏でヴォカリーズが高まり、エンディングはクラシカルな五度の和音をストリングス・シンセサイザーが吸い込んで、静かに去ってゆく。
  リリカルなヴォーカル・パートから、シンフォニックな調子を保ってスケール大きく変化してゆく作品。 緩急、音量の変化を用いた語り口やギター、オルガンの音には、初期 GENESIS の影響が強く感じられる。 新鮮なのは、GENESIS 風の演奏にアメリカ、ウエスト・コースト風の開放感のある爽やかなテーマやアコースティック・ギターを持ち込んだところだろう。 終盤のタイトなリズム(ドラムスがみごと)による演奏と、長いクレシェンドを駆け上がるシーンには、思わず胸がときめく。 シンフォニック・ロックの逸品。

  2 曲目「Comic Strips」(3:59) オルガンの 4 拍 3 連フレーズにギターがぶら下ろうとする、ポリリズミックで傾いだようなアンサンブルによるイントロダクション。 平板なメロディをうわずったようなヴォーカルのシャウトとギターがユニゾンする。 リズムを無視したようにオルガンとギターがからむオブリガートから、力強いメイン・ヴォーカル・パートへ。 間奏は 7 拍子のハードロック・ギター・ソロ、そしてピアノのトリルとせわしないドラム・ロール。 メイン・ヴォーカルの繰り返しは、変則リズムのアンサンブルへとつながり、ギターとオルガンのブリッジ、そして 8 分の 6 拍子の奇怪なギター・リフ。 ここまでくると、さすがに GENTLE GIANT だと分かる。 ギター・リフとそのまま重なる素っ頓狂なヴォーカル。 ツイン・ヴォーカルが、両チャネルから聴こえる。 珍妙な間奏、繰り返しに続き、再びハードロック・ギターによるせわしない間奏。 再び、力みかえったメイン・ヴォーカルへ。 ランゼッティのヴィブラートはじつに独特である。 ギターとヴォーカルのユニゾンで繰り返し、リズムが壊れて、オルガンが和音を轟かせるとエンディング。
  これは明らかに GENTLE GIANT の芸風である。 4 分弱にもかかわらず、めまぐるしく変転する。 リズムの変化、わざとらしいメロディ、パッチワーク風のプレイは本家そっくり。 これで追いかけコーラスがあったら完璧である。 心なしか、ヴォーカルもデレク・シャルマン似だ。 狂おしく緊張感が途切れない作品である。

  3 曲目「Science Fiction Suite」(5:57) コード・ストローク中心のアコースティック・ギター・アンサンブル。 12 弦ギターだろうか、透明感のあるみごとな演奏だ。 そして、爽快にして繊細なハイトーン・ハーモニー。 すっかり CSN & Y、もしくはそこが出自の初期 YES である。 バンジョーも使われているようだ。 ほのかに土の香りがする、健やかなヴォカリーズ。 独特のあじわいは、ややつたない英語の響きからきているようだ。 次第に、ギターのデュオには、PENTANGLE のような英国トラッドの重めの湿り気もあらわれる。 しかし、ハーモニーはあくまでソフト・タッチである。 コーラスが次第に熱気を帯び、ストリングスが静かに浮かびる。 どこまでも飛翔するようなハーモニー、そして小粋なギターによるエンディング。
  ほぼギターとヴォーカル・ハーモニーのみによるフォーク・ソング。 二つまたは三つのアコースティック・ギターの微妙な重なりが織りなす目映いテクスチュア、そして涼やかなコーラスが気持ちいい。 アメリカや英国のフォークを思わせる曲調であり、根っこにしっかりこういう音楽が息づいていていると思うと、新しい友人ができたようにうれしくなる。 ロックのアルバムなのにこういう歌ものをみごとに仕上げて組み込めるあたりは、やはりイタリアン・ロックらしいといえるだろう。

  4 曲目「Song From A Picture」(4:11) ベース、二つのギターによるたおやかなアンサンブル。 ヴァイブのような余韻を響かせるエレクトリック・ピアノに支えられて、静かにメイン・ヴォーカルが始まる。 力みのない、むしろ無常感に身をゆだねるようなヴォーカル。 ヴォーカルに寄り添う透明感ある 12 弦アコースティック・ギターのきらめくストローク、オブリガート。 またも、初期 GENESIS を思わせる展開だ。 さざ波のようなギターとともに間奏から加わるドラムスのていねいなストロークがいい。 堅実なギターの伴奏、そして控えめに、オルガンとシンセサイザーが歌いだす。 抑えていた気持ちが思わず隙間から顔をのぞかせるような、切なく美しく緻密な演奏だ。 再び品よく抑えたヴォーカルへ。 迎えたサビでは声高くコーラスでみずみずしく迫る。 ブレイク、エピローグ風のおだやかなピアノの和音と、ギターの爪弾きが静かにリタルダンド、そして消えてゆく。
  美しく幻想的なフォーク・ロック。 アコースティック・ギターの間断ないさざめきと、ヴァイブの響きが硬くなった心を解きほぐしてくれるようだ。 デリケートにして技巧的なアンサンブル、フォーク風のアコースティックでおだやかな演奏が、シンフォニックな高まりを見せながら進んでゆく様子は、「Stagnation」など最初期の GENESIS の作品を思わせる。 もしくは、KING CRIMSON の「Epitaph」が、長調になったような感じだろう。 もしヴォーカルがイタリア語なら、さらに繊細な表情が現れてよかったような気がする。 しみじみとした名曲だ。 何の絵からインスパイアされたのだろう。

  5 曲目「Education Story」(4:16) 前曲の雰囲気は一転してヘヴィなリフによって破られる。 オルガン、ギターによる KING CRIMSONBANCO ばりの攻撃的なリフである。 ていねいな打撃を見せるドラムスが抑えを効かせていていい。 ヴォーカルも、不安を高めるようなアジテーション調である。 オルガンのブリッジが緊張を高めると、リズムが巧みに変化、たたみかけるようなアコースティック・ギターのプレイから、ストリングスが高まりスティーヴ・ハウ風のギター・ソロへ。 ソロは、さらにリズムの変化を呼び、コード・チェンジとともに一気に雰囲気が明るくなると、YES ようなヴォーカル・ハーモニーが現れる。 さすが P.F.M の弟分、みごとな場面展開だ。 ハーモニーはアカペラで高まる。 再び、ヘヴィなリフが支える硬質なメイン・ヴォーカル・パート。 ここでは間奏部のギターのバックに YES 風のハーモニーが加わっている。 オルガンのブリッジから、ストリングス・シンセサイザー伴奏のギター・ソロ、ソロはコード・チェンジとともに巧みに明るい曲調への転換をリード。 最後はクリアーなヴォーカル・ハーモニーがリズミカルに進み、ロングトーンを決めて終わり。
  ダークなリフによるメイン・ヴォーカル・パートと開放感のある YES 流のヴォーカル・ハーモニーによるサビが鮮やかにコントラストする作品。 ヘヴィなリフはプログレ常套句の一つなのだが、そこでおさまらずにクリアーなサビへの予想外の展開をしたところに新鮮な妙味がある。 いまさらながら、すべてのアンサンブルが充実していることを再確認できる佳曲である。

  6 曲目「Going Out」(2:59)さみしげなアコースティック・ギターのコード・ストローク。 開放弦をうまく使った maj7 に、独特の響きがある。 ヴォーカルをファルセットのハーモニーがなぞる。 おだやかで張りのあるヴォカリーズは、ギターとともに波紋のように静かに広がってゆく。 半音進行の宙ぶらりんな気持ち。 メイン・ヴォーカル・ハーモニーの繰り返しを経て、最後は美しい三声のハーモニーが滔々と流れてゆく。
  シンプルな弾き語りによる清涼感にほのかにブルーズ・フィーリングがにじむ小品。 さりげなくも豊かな和音の響きを生かしてアルバム後半の流れをなめらかにしている。

  7 曲目「Three Hands Man」(8:06) オルガンによるスリリングなイントロダクション。 8 ビートを 8 分の 6 プラス 2 拍へ割るフレージングが、緊迫感を高めている。 ピアノが加わってオルガンに絡み、ティンパニがとどろく。 オルガンからピアノへのリレーが、巧妙である。
  ギターがユニゾンすると、オルガンのリードでスピーディな歌が始まる。 ハイトーンのコーラスが重なる、熱気あふれるヴォーカルだ。 加速をあおるようなオブリガート。 クラシックを倍速にしたようなドラマチックな演奏である。
  間奏はヴォーカル・テーマをなぞるオルガン、叫ぶギター、そして一旦やや沈み込んでオルガンとエレピのスリリングなハーモニーが続く。 リズム・セクションも緻密である。
  再び 8 分の 6 のオルガンのリフに続くヴォーカルはランゼッティのソロ。 激しくギター、オルガンと呼応する。 そしてメロディアスな泣きのサビのコーラス。 再びオルガン、ギター、ストリングスと続く間奏からヴォーカルへ。
  リタルダンドからギターのコード・ストロークによるブリッジ。 ここでも 8 分の 6 を交えて、独特のせわしなさがある。 シャープなドラミング。 ストリングス・シンセサイザーが、左右のチャネルを揺れ動きながら湧き上がる。
  そしてギターとオルガンによるヘヴィなアンサンブル。 クロスして飛び込むのは踏み切りの SE? エネルギッシュなヴォーカル・コーラスに続き、スリリングなピアノ、ギターのアンサンブル。
  テンポ・ダウンとともにリズムのアクセントがフラットな 8 ビートへと変化し、雑踏をイメージさせる SE が現れる。 リコーダーのようなシンセサイザーが奏でる、軽やかなフォーク・ソング。 次第に浮かび上がるリズム、ギター、そしてスケルツォ風の輝かしきオルガン。 オルガンの和音がオーケストラのように高まる。 華麗に舞うピアノ。 せわしなくどことなくユーモラスなアンサンブルである。
  オルガンの和音が一際高まってクライマックスを迎えると、弾き語り風のギターからシャンソン風の小粋なヴォーカル・パートへ。 意外な展開だ。 3 拍子アクセントでリズムをくずすギターのオブリガートがおもしろい。 再び雑踏の SE そしてヴォーカルが、テーマを繰り返しながらフェード・アウト。 シンセサイザーのフォーク・ソングが寄り添う。
  緊張感あるタイトな演奏で押し捲り、さまざまな場面を駆け巡るスリリングな大作。 キーボードとドラムスが際立つ。 倍速クラシックのようなテーマやキーボードがリードするめまぐるしい場面展開など、シンフォニックなプログレの醍醐味たっぷりである。 カデンツァよりもスケルツォ風のオスティナートを得意とするキーボードは、やはりトニー・バンクス流。 エネルギッシュに押すヴォーカル・パートを軸にして、小刻みなビートを打ち出してたたみかけるドラムスとギター、キーボードによる息もつかせぬ展開が楽しい。 後半の気まぐれ奇想曲風の展開もおもしろい。

  明快でテクニカルなサウンドが特徴の英国風シンフォニック・ロック作品。 派手めのパフォーマンスを支えるのはタイトな職人芸的アンサンブルである。 アコースティックな歌ものから凝りまくったシンフォニック・ロックまで充実の一枚だ。 英国プログレの雄姿があちこちにちりばめられているのが微笑ましいと同時に、これだけエッセンスを取り出すテクニックとセンスにもびっくりである。 歌ものですら、イタリアよりも英国風である。 根っ子にあって共通すのは、コーラスやアコースティック・ギターの弾き語りに見られるフォーク的な感性だろう。 逆にロックの代名詞のようなブルース、HR 志向のギター・プレイは抑えられている。 テクニカルなプレイの好きな方や、英国ロックのファンにはお奨め。 ポンプも、これくらいうまいといいのですが。 全体に漂うクリアーで瑞々しい空気が魅力である。
(ND 74853)

 Mass・Media Stars
 
Piero Canavera drums, percussion, acoustic guitar, vocals
Gino Campanini guitars, mandolin, vocals
Bernardo Lanzetti lead vocals, guitars
Franz Dondi bass
Maurizio Mori keyboards
guest:
Caludio Fabi piano on 4

  74 年発表の第二作「Mass・Media Stars」。 アコースティックなサウンドと緻密なインストゥルメンタルが進化、ヴォーカル・ハーモニーにも磨きがかかり自然なポップテイストを表現できている傑作。 前作にて散見された英国のグループのあからさまな模倣は影をひそめ、やや性急ながらも躍動感ある演奏を基調に、ギターやキーボード、マンドリンがアコースティックで小粋なアクセントをつけている。 演奏の特徴は、「明晰さ」である。 広がりのある西海岸風のコーラス・ワークは、ほぼ全編にわたってテーマを彩り、ベースを軸にしたアンサンブルは、豊かな音量と粒の揃った音色で輝くような表情を見せている。 そして、ギターとキーボードは、派手さこそないが、ここぞという場所で音色を活かしたみごとなプレイを決めている。 全体に透明感があるのは、ヴォーカル・ハーモニーに加えて、アコースティック・ギターのアンサンブルがあること(ドラマーのカナベラ、ヴォーカリストのランゼッティを加えて計三つのアコースティック・ギターがある)、そしてハードロック的なリフやソロがないことによるのだろう。 曲の面白さもぐっと増したようだ。 いろいろな音が埋め込まれているので聴くごとに発見のある作品だとも思う。 緻密なアンサンブル指向、透明感のある音作りや、ギターがもろにスティーヴ・ハケット風であるなど GENESIS/YES 的な部分は確かにあるが、曲調に健康的で溌剌とした明るさがあり、そこに独自の色がある。 また、P.F.M と同じく高い音楽性のグループが、プログレを越えてからどういう方向を自分たちに自然なものと考えて進んだかを指し示しているという点でも、興味深い作品だ。
  作詞はランゼッティ、作曲はカナベラ。 プロデュースは P.F.M とクラウディオ・ファビ。 ヴォーカルは英語。ヴィヴラートが独特なランゼッティの声色(FAMILY のロジャー・チャップマンにも似る)は好みを分かつ可能性あり。 2003 年久しぶりに BMG より CD 再発。
  1 曲目は、せきたてるような調子ながらも一体感ある演奏がみごとな傑作。 P.F.M の「Chocorate Kings」へつながる音だ。 中盤の展開はギター、オルガンともに初期の GENESIS そのもの。 2 曲目は、透明感あるアコースティック・ギター・アンサンブルを伴奏にした弾き語りに、キーボードやリズム・セクションで弾力を付与した GENESIS 風幻想バラード作品。 ファズギターのロングトーン含め、アンソニー・フィリップスに通じる作風である。 3 曲目タイトル・ナンバーは変化に富み、弾けるような躍動感と開放感あふれる傑作。 緻密なアンサンブルながらも、ラテン、ハワイアンなどさまざまな表情を垣間見せつつ、快調に駆け抜けてゆく。 4 曲目は、かなり本家 P.F.M に近いニュアンスの作品。「Jetlag」に入っていても違和感のない、タイトにしてグルーヴィな作品だ。 5 曲目は、オルガン込みの直線的な疾走感あり。 「The Yes Album」の YES 風でギターだけ GENESIS。ハーモニーが美しい。 終盤の引き方の彫りの深さが、何倍にも感じられる。 終曲は、アコースティックな透明感にフェイズ・シフタでねじれを加えて、ほのかな哀愁を漂わす名品。 ジョージ・マーティン風のエンディングが、P.F.M の「L'Isola Di Niente(甦る世界)」を連想させる。

  「Cosmic Mind Affair」(7:22)音量変化や緊張と緩和の対比が極端。 基本は GENESIS である。

  「Bar Gazing」(5:07)弾き語りに近い歌もの。 穏やかなアコースティック・ギター・アンサンブルは、意外にも GENESIS には聴こえず、むしろナチュラルなイタリアン・ロックらしい田園幻想調である。 しかし、その後の強いアクセントをつける演奏やギター、メロトロンの展開がマンマ。 そうなると続くギター・アンサンブルも GENESIS に傾きそうだが、そうはならず、どちらかといえばアメリカ西海岸的な涼感がある。

  「Mass-Media Stars」(6:55)ベースやピアノでリズムを強調した一気呵成のテクニカル・チューン。 GENTLE GIANT の影響を受けた P.F.M によく似ている。ただし陰にこもらずあくまで「陽性」。 間奏の鮮やかなマンドリンや SE での場面転換など、エンタテインメントとして充実。 SUPER TRAMP にも通じる。

  「Opening Act」(5:40)多声マドリガル、エレアコ、アコースティック・ギターとピアノの刻む爽快なリズム、"リード"・ベースなど本家 P.F.M のスタイルに依拠しつつも、きらきらとポップな(少し暑苦しい)フォーク・ロックを極めた佳作。

  「Professor」(6:49)YES 風の忙しない攻め一辺倒ながらも、いい緊張感とハーモニーを生かして華やぐ傑作。 3 拍子系なので舞曲のイメージである。 アコーディオンまたはバグパイプ風のキーボードの音になんともいえない包容力がある。

  「Coffee Song」(5:57)3 本のアコースティック・ギターが綴れ織をなし、ほのかな憂鬱とともに夢想の翼を広げてゆくスペイシーなバラード。大胆なエフェクトを適用。

(GFX 2055 / BMG 74321980592)


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