CONTRACTION

  カナダのプログレッシヴ・ロック・グループ「CONTRACTION」。シンガー、フランク・デルヴューのバックバンド DIMENSION M として結成。大所帯。 作品は二枚。他に発掘ライヴ盤あり。

 Contraction
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Christiane Robichaud vocals & vocal arrangementsYves Laferrière bass
Robert Lachapelle piano, electric pianoRobert Stanley guitar
Christian St-Roch drums on 2,3,5Rawn Bankley acoustic guitar on 1,9
Michel Robidoux acoustic guitar on 2, guitars on 3Marcel P. Huot drums on 7,9
Denis Farmer drums on 1,4Carlyle Miller flute, vocals & flute arrangements on 8, electric saxophone on 4
J.J. flute on 5Michel Séguin congas on 4
Frank Dervieux organ on 7

  72 年発表のアルバム「Contraction」。 内容は、フランス語女性ヴォーカルをフィーチュアしたジャジーでテクニカルなソフト・ロック。 フォーク・タッチの素朴さのある暖かく細やかなポップ・サウンドである。 ピアノやギターのコード・ストロークがさざ波のようにヴォーカルを守り立てる夢見るような曲調が基本である。 70 年代前半の女声によるカレッジ・フォークやポップス、つまりキャロル・キングやカレン・カーペンター、ジャニス・イアンを思い浮かべていただくといい。 ワウやエレピなどまろやかな音を使っても都会的になりすぎず、枯葉の舞う郊外の小道のようなイメージをキープできている。 しかし、ところどころに、突如として曲が分断されたり、クロスフェードで世界が変わったり、広がると思わせて収縮したり、「おっ」と耳を惹くしかけが施してある。 このポップスをくるっと裏返すようなアレンジがおもしろい。
   ドリーミーな曲調をきっちり支えて心地よい緊張を維持するドラムス、ベースは間違いなくテクニシャンであり、ノリでごまかさずに音をいくらでも出すことができている。 特にベーシストは、いいフレーズをタイムリーに放って曲を作っているテクニシャンにして名アレンジャー。 ギター、キーボード、フルートらは時機を逃さずに最小の音で最大の効果を上げるように配されていると思う。 ワウなどエフェクトの使い方も的確である。 B 面のインストゥルメンタル・メドレーは、「ひねり」の効果こそ微妙だが、要所は締めてしっかり聴かせる。
   かなり細かいところを見ないとプログレかどうか分からないのが弱点。 随所にきめ細かくピリッとしまったアレンジ、意外な展開のあるソフト・ロックとしてみれば逸品。 ジャズロックへの進化のヴィジョンもありそう。 FLEETWOOD MAC の「Bare Tree」あたりのファンにはお薦め。 ヴォーカルはフランス語。 プロデュースは、イーヴス・ラフェルリエール。イタリアン・ロック的なメドレーである B 面は収録時間こそ短いがドラマがある。

  「Chant Patriotique」(3:30)70 年代の良心を体現したほろ苦いソフト・ロック。

  「Le Chat Bruinne」(5:10)麻痺性のジャジーな「含み」のある幻想ポップス。

  「Délire (474 Rang De La Petite Côte D'en Bas) 」(3:54)名曲。メロディと声質が抜群の相性を見せる。 フォーキーなギターのアルペジオとまろやかなシンセサイザーとベースの配置もいい。

  「Trois Ou Quatre」(5:21)スキャットのみのジャジーなインストゥルメンタル。ブルージーな重みもカッコよし。傑作。

  「Ste-Mélanie Blues」(3:55)ピアノ、フルートをフィーチュア。気まぐれなタッチと物憂い湿り気が英国ロック的。ベースがいい。

  「42 Nord」(1:48)前曲をそのまま受け取るアンニュイで幻想的なインストゥルメンタル。ピアノとスキャット。

  「Pixieland」(3:17)アップテンポのジャズロック・インストゥルメンタル。タイトな演奏がカッコいい。ここでもベースが目立つ。

  「Spleen」(2:45)アコースティック・ギター伴奏でベースとピアノ、風に舞うシンセサイザーが歌う。 どことなく北欧のグループのようなペーソス。 ヴォーカルがあってもよかったと思う。

  「Fin Du Commencement」(1:50)ダークでヘヴィな面が現れた小品。終曲として不思議な後味を残す。
  
(FS-735 / MPM03)

 La Bourse Ou La Vie
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Christiane Robichaud vocals, vocal and flute arrangementsYves Laferrière bass, vocals
Robert Lachapelle piano, electric piano, organ, Eminent organ, synthesizerRobert Stanley guitars
Richard Perotte drumsJimmy Tanaka congas, percussion
Marcel Beauchamps guitars, Eminent organDenis Farmer drums
Jean-Jacques Robichaud vocalsCarlyle Miller flute
Joey Armando timbales

  74 年発表のアルバム「La Bourse Ou La Vie」。 内容は、お色気系女性スキャットをフィーチュアしたメロディアス、暖かみや包容力もあるジャズロック。 R&B 的な表現がこなれており、良質の 70 年代ロックといえるだろう。 くっきりと明快なアンサンブルによる演奏のキレは抜群であり、物語を感じさせる演出も堂に入っている。 かといって派手かといえばそうでもなく、控えめながらも小粋に決めるスタイルである。 特徴的なのは個性的なのは、インストゥルメンタルにヒネリが効いていて、ニヤニヤ笑いのような余裕たっぷりのユーモアもあるところ。 カンタベリー風のところもあるが、それよりも 70 年代初頭のブリティッシュ・ロックをエレガントにしてちょいとヒネリを加えた感じである。 おそらくこのヒネリこそが「エスプリ」というやつなのだろう。 エレピの音はあるが、ジャズっぽくなりすぎておらず、どこまでもポップス風のやさしげな表情がある。 そして、アコースティック・ピアノによるクラシカルな音の方が主だったりする。 特にみごとなのは、各パートの音を十分活かした耽美でファンタジックな叙景。 聴きものは、18 分にわたるタイトル組曲。 鮮やか過ぎるピアノ独奏がある。 最終曲は、やや毛色が異なり、へヴィなギターが噛みつくかと思えばセクシーなスキャットが渦を巻く怪作。 メイン・ヴォーカルは女性でフランス語。 プロデュースは、イーヴス・ラフェルリエールとクリスティエンヌ・ロビショー。 やや地味めな作風ではあるものの、類を見ない個性を発揮している作品だと思う。

  「Jos Coeur (ouverture)」(1:01)
  「L'Alarme À l'Oeil」(3:48)
  「Claire Fontaine」(6:00)
  「Sam M'Madown」(3:33)
  「Jos Coeur (fermeture)」(4:57)
  「Vent Du Sud」(0:46)
  「La Bourse Ou La Vie」(17:54)
    「a. Au Commencement
    「b. Tout Seul Comme Un Grand Piano
    「c. La Bourse Ou La Vie
  「L'Âme À Tout Faire (4:58)
  
(XDEF-106 / MPM04)


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