COS

  ベルギーのプログレッシヴ・ロック・グループ「COS」。68 年結成。 83 年解散。作品は六枚。カンタベリー・シーンのサウンドに大きく影響を受けた作品を発表した。

 Postaeolian Train Robbery
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Pascale Son vocals, oboe
Daniel Schell guitars, flute, sound effects
Charles Loos keyboards
Alain Goutier bass
Robert Dartsch drums
Steve Leduc percussion
Adrian Stoop voices on 1

  74 年発表のアルバム「Postaeolian Train Robbery」。 内容はスキャットを多用したインストゥルメンタル中心のジャズロック。 フルートやスキャットやキーボードによるクールなサウンドが特徴だ。 このクールネスは思い切ってブラジリアン・テイストといってもいいかもしれない。 そして、ソフト・タッチのサウンドが生む軽快さだけではなく、変拍子による捻じれや反復による圧迫感、酩酊感もあり。 陽性のロマンチシズムやコミカルさが、あたかも次元の壁をすり抜けたかのように一気に反転して暗黒化することがある。 その感触は、RETURN TO FOREVERMAGMA の中間地点といえばいいだろうか。 テーマは鍵盤楽器、特にエレクトリック・ピアノ、ピアノ、クラヴィネットが主導する。 鋭すぎず肉厚な弾力あるリズム・セクションもいい。 アドリヴのスペースは大きく取られている。
   プロデュースは、グループとパトリック・ストゥールバンツ。ジャケットは左側がオリジナル LP で右側が再発 CD のもの。

  「Postaeolian Train Robbery」(4:13)MC によるイントロダクション。ブリティッシュ・ロック的なオリジナリティを感じさせるジャズロック。テーマ一発にも関わらずムード作りがうまい。
  「Cocalnut」(7:20)ZAO 直系のエキセントリシティと幻想性のある反復圧迫系ジャズロック。
  「Amafam」(8:24)アドリヴ・パートを広めにとったグルーヴあるジャズロック。 ヴォーカルとパーカッションのやり取りがおもしろい。ここはアドリヴではなさそう。中盤はエレクトリック・ピアノの独壇場。チック・コリア風のクリシェ。 ドラムスもフィーチュアされる。

  「Karbok」(再発 CD では割愛)
  「Populi」(3:30)ヴォーカル入りだが詞を歌っているというよりも、単なるブラジル風に聴こえる音声の羅列に思える。ロリっぽく科を作るとダグマー・クラウゼのイメージが出る。10 拍子。
  「Halucal」(3:50)尺八のようなバス・フルートがリードするアップテンポのポップな小品。アドリヴ・パートはエレクトリック・ピアノ。 ベースがささやかながらも見せ場を作る。
  「Coloc」(9:47)冒頭、クラシカルな即興ソロ・ピアノが印象的。RTF に憧れる熱っぽいジャズロック。ロクリアン・モードなの?
  
  MUSEA の再発 CD には以下のボーナストラックあり。いずれもグループの旧名「CLASSROOM」時代の録音。
  「La Partie D'Echecs」(2:42)早口言葉のような女性ヴォーカルをフィーチュアしたクールでテンション高いブラジリアン・ジャズ。
  「Sur Deux」(4:32)ヴァイブも使ったフランク・ザッパ風のアンサンブルあり。
  「Achille」(10:05)大きくブラジルに寄ったカンタベリー。ギターもがんばる。軽い MAGMA というべき展開も。取っ散らかるが傑作。
  「L'Admirable Amas Cellulaire Orangé」(2:13)シャンソン風のキュートな小品。ヴァイブ、ギター、ヴォーカルが一体となった快演。
  
(PRS 8000 / FGBG 4028.AR)

 Viva Boma
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Pascale Son vocals, oboe
Daniel Schell guitars, alto flute, devices
Marc Hollander keyboards, bass clarinet, alto sax, devices
Alain Goutier bass
Guy Lonneux drums
guest:
Bob Dartsch drums on 6,8, percussion on 2,3Denis Van Hecke cello on 8
Pipou, Jean-Louis Haesevoets percussion on 2Marc Moulin Mini-moog on 5,8
Roger Wollaert drums on 10Wily Masy or Jacky Mauer drums on 12, vocals improvisation

  76 年発表のアルバム「Viva Boma」。 スタイリッシュな大陸カンタベリー・ジャズロックの秀作。 マルク・オランデルが参入し、ドラマーもメンバー交代。 ベースの圧力とモダンジャズの格調高さにフレンチ・ジャズロックの矜持を示しつつも、デリケートな音と凶暴な音のコントラスト、変拍子と反復による幾何学模様など全体的な意匠は HATFIELDS からのダイレクトな影響下にあるといっていい。 ダニエル・シェルのフィル・ミラーばりのファズ・ギターが独特のたどたどしさ(この絶妙なギアの落とし方は腕達者の証拠)で縦横無尽に活躍する。 オランデルのエレクトリック・ピアノはデイヴ・スチュアートよりも落ちつきがあり、ジャズの懐が深い。 強いて本家との違いをいえば、やや音が骨太で、子どもじみた諧謔味がさほどでなく、スキャットにシャンソン由来のロリっぽさ、はたまた大人なロマンチシズムが漂うところだろう。(Northettes は女子寮のコーラス隊のようなお堅い娘さんたちのイメージなのだ!) 音楽的な凝り方は本家といい勝負。 第三世界を意識するなど個性もあり。
   ヴォーカルはフラマン語。プロデュースはグループとPLACEBO を率いたマルク・モウリン。 モウリンは演奏にも参加している。(エレクトリックな音響はこの方だろう)

  「Perhaps Next Record」(1:25)
  「Viva Boma(Document Ramene De Koekelberg)」(2:35)
  「Nog Verder」(4:32)傑作。SOFT MACHINE もあり。
  「Boehme」(3:17)
  「Flamboya」(7:33)気だるいカンタベリーって珍しい。
  
  「In Lulu」(4:08)
  「L'Idiot Léon」(10:48)
  「Ixelles」(6:11)
  
  以下 CD ボーナストラック。
  「Mon Rebis(Previously Unreleased)」(6:04)
  「Reine De La Vallée(Previously Unreleased)」(4:16)
  「Nog Verder(Demo Version)」(7:20)
  「Fanfan La Tulipe(Vocal Improvisation)」(2:41)
  
(4B062-23605 / FGBG 4159.AR)


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