INDISCIPLINE

  カナダのプログレッシヴ・ロック・グループ「INDISCIPLINE」。 98 年解散。作品は二枚。90 年代らしいオルタナ・プログレ。 KING CRIMSON は当然として、シアトル系グランジ、PEARL JAM 果ては VdGG の影響も強い。

 A Non-Obvious Ride
   
Jean-Philippe Goulet violin, piano, keyboards, rythm guitars on 4,6,10, lead vocals on 3, backing vocals
Louis Pelletier drums, percussion
Martin Poirier bass, texts
Francois Therriault lead and rythm guitars, lead & backing vocals, texts
guest: 
Bernard Baribeau alto sax on 3,11

  94 年発表の第一作「A Non-Obvious Ride」。 内容は、中後期 KING CRIMSON をフォローするヘヴィでメタリックなギター・ロック。 ディストーションで歪み切ったサウンド、たたきつけるリフ、邪悪なアルペジオ、ぎりぎりとうねるアドリヴが特徴的なギターをフロントに、ズドンと重いスラップを放つベースと手数より鋭さで勝負のドラムスによるリズム・セクションが支えるモダン・ハードロックである。 グループ名はモロに出自を明かしているが、音楽的には、プログレというよりもギター・ロックのバンドが偶然 KING CRIMSON と出会ってしまったというべきだろう。 ただし、ギターのスタイルはグランジ、オルタナなどの轟音系であり、ロバート・フリップのようなジャズ・ベースのテクニカルなスタイルとは異なる。 むしろひずんだ音の凶悪なベースのプレイやヒステリックなヴァイオリンのプレイに KING CRIMSON の影が映って見える。 サウンドこそ HR/HM 的ではあるが、現代風の美メロ志向含め HR/HM 的なクリシェはない。(だから、いわゆるプログレ・メタルではないと思う) したがって、ヘヴィなサウンドとワイルドなプレイに込められた尖った苛立ちは若々しくリアルである。 だから、叙情性は巧まずとも暴力的な音の嵐から自然と浮かび上がる。 ヴォーカリストの歌唱にもう少し存在感があればもっとよかった。
   サックスまでも登場させる CRIMSON 的展開のほかに、ZEPPELIN 風の純正ハードロックの硬質さや産業ロック的なリリシズムも見せる。 また、NIRVANARIDE といったポスト・プログレな音も聴いていそうだ。 いったい CRIMSON 以外のお郷はどこなのだろうといぶかったところ、4 曲目ですべてが氷解。 ずばり PEARL JAM なのだ。 やはりカナダとシアトルは近いのだ。 ANEKDOTEN との違いはメロトロンの有無だけではなく、こういった影響元の差なのだろう。
   ヴォーカルは英語。 CD は紙のカバーで覆われている。写真左がそのカバー。右はジャケット。
  
  「Weakness」(5:05)
  「Last Ground」(4:56)
  「D-Wise's World」(3:40)
  「Generator」(4:56)
  「The Ripper」(3:20)インストゥルメンタル。
  「A Concrete Demand (More)」(7:07)
  「The Valley」(3:50)
  「Sans Fin (Impro)」(3:32)インストゥルメンタル。
  「Over Years」(4:45)
  「Deep Dawn」(4:10)
  「Black And Tans」(5:39)インストゥルメンタル。パンクなタッチとともに本家に迫る充実作。

(ORCD 001)

 Vixit
 
Martin Cormier vocals
Jean-Philippe Goulet violin, piano, keyboards, vocals
Martin Poirier bass
Stèphane Gauthier drums
Francois Therriault guitars

  98 年発表の第二作「Vixit」。 前作の楽曲を含むライヴ・テイクとスタジオ新作を組み合わせた作品。 ライヴ演奏はパワフルにして締まっており、非常にカッコいい。 専任ヴォーカリストが活躍するらしきシアトリカルなパフォーマンスは意外。 改めて「パンクでヘビメタな CRIMSON」というスタイルを認識した。 そして、VAN DER GRAAF GENERATOR のカヴァーにも感激。

  「Black And Tans」(6:40)サックスはないがピアノが圧倒するへヴィ・チューン。力演。ライヴ。
  「La Fenêtre」(3:41)ヴァイオリンが醸し出すエキゾチズムも本家に迫るインプロ。ライヴ(スタジオ編集あり)。
  「Weakness」(5:08)ギターの轟音からほとばしる感傷に図らずも魅せられる。 ライヴ。
  「Le Casseur De Pierres」(3:27)グランジ。スタジオ。
  「Deep Dawn」(3:53)PEARL JAM 直系。ミステリアス。ライヴ。
  「Mektub」(5:05)スタジオ。
  「The Ripper」(3:29)ライヴ。
  「Darkness」(6:33)VdGG の名作のカヴァー。スタジオ。

(ORCD 003)


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