98 年発表の作品「Symphonic Holocaust」。 怪奇映画のサウンド・トラック作品へのトリビュート・アルバム。 オムニバス・アルバムへの曲提供をきっかけに結成したプロジェクトによる作品である。 全 8 曲中、プロジェクトによるオリジナル新作は 1 曲のみ。 サウンドは、出身グループの音を反映したメロトロンを駆使するヘヴィかつ叙情的なもの。 しかし、種々の SE や叙景的なギター曲、スキャットの入ったバラードなど、サントラならではのさまざまな趣向もある。 スキャット以外は、ほぼ全編インストゥルメンタル。

  1 曲目「Apoteosi Del Mistero」は、メロトロンが 4 台が重なり合い響き渡る凄絶なまでに美しい音のタペストリ。 衝撃的なサウンドである。 ゾンビ映画のサントラにはもったいないような重厚さと品格を備えた暗黒シンフォニーの傑作。 また、4 曲目「Lullaby」は、有名な「ローズマリーの赤ちゃん」のサウンド・トラック。 沈痛なリズムが刻まれ、メロトロンとギター、エレピによる哀しげな伴奏で暗い女性のスキャットが続く。 哀感とともに恐怖もつのる作品である。 そして 8 曲目「Symphonic Holocaust」は、オリジナル作品。 ヴァイオリンとメロトロンの響きが恐怖を煽り緊張を高め、重量感にあふれるリズムとともに轟音が渦巻き、超ヘヴィー級アンサンブルが牙をむく、正に別格の傑作。 ANEKDOTEN のヘヴィネスと LANDBERK のメランコリーが見事にブレンドした戦慄の美学である。 メロトロンが轟き、ベースは高鳴り、ギターは斧のように空気を切り裂いてゆく。 テンポが上がり、シンバルの響きとともにギターがメタリックな雄たけびを上げ、究極の恐怖が待つ奈落の底へと落ちてゆく。 テルミンのスペイシーな音とノイズが息苦しくなるほどに空間を埋め尽くし、やがて哀しみに満ちた旋律が高鳴り、轟音が渦巻く高みへと上りつめてゆく。 渾身の力で悲痛な旋律を叩き付ける 17 分。 ヘヴィな中にサイケデリックな広がりと光ゴケのような暗黒の光沢をもつ作品だ。

  1 曲目「Apoteosi Del Mistero」（4:20）「CITY OF THE LIVING DEAD」より。
  2 曲目「Threats Of Stark Reality」（2:59）次曲へのイントロダクション。
  3 曲目「Sequenza Ritimica E Tema」（7:06）「THE BEYOND」より。
  4 曲目「Lullaby」（8:05）「ROSEMARY'S BABY」より。
  5 曲目「Quiet Drops」（6:46）「BEYOND THE DARKNESS」より。
  6 曲目「Opening Theme」（2:53）「CANNIBAL HOLOCAUST」より。
  7 曲目「The Photocession」（7:14）「GOLDEN GIRLS」より。
  8 曲目「Symphonic Holocaust」（17:51）オリジナル作品。


  1 曲目や 4、5 曲目のようにオリジナル以外の作品も見事に ANEKDOTEN/LANDBERK 風の個性でまとめあげ原曲に新たな輝きを加わえている。 そして最終曲は圧巻。 轟々たるアンサンブルの凄絶なまでの力強さ、そして哀愁ある旋律の美しさに圧倒される。 エンディングに向け駆け上っていく様子はワンタイムのプロジェクトものには似つかわしくない深い感動がある。 第ニ作を期待したい。
（MELLOCD 008）