MOVING GELATINE PLATES

  フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「MOVING GELATINE PLATES」。68 年結成。作品は 2006 年の再編含め四枚。ユーモア過多の SOFT MACHINE。グループ名はスタインベックの小説から。

 Moving Gelatine Plates
 
Maurice HELMLINGER organ, trumpet, soprano & tenor sax, flute
Gerard BERTRAM guitars, vocals
Didier THIBAULT bass, vocals, 12 string guitar
Gerard PONS drums, percussion

  70 年発表のアルバム「Moving Gelatine Plates」。 内容は、自由でユーモラスなカンタベリー風サイケデリック・ジャズロック。 管楽器/オルガン、ギター、ベース、ドラムス担当の四人編成。 フロントは、サックスがシャープなテーマと奔放なアドリヴ(フリー・ジャズ風のパンチを効かせつつも、わりと明朗で健康的なフレーズが多い)でつとめている。 ギターは、荒っぽいアドリヴ・ソロ以上に、シャープなバッキングとソフトながらも個性的なオブリガートやユニゾンで管楽器に絡む場面が印象的。 ベースは、思い切りファズをかけて変拍子リフと大胆なベース・ラインで演奏のエンジンとなっている。 ドラムスは、軽く緩めで音数の多いロバート・ワイアット・タイプ。 テーマ/ソロ回しではなく、リズム・チェンジを繰り返しながらもかっちりと連携したアンサンブルで突き進むスタイルである。 幾何学的な文様を描くようにアブストラクトな表現もあるし、生臭くひょうきんなところもある。 BEATLES のようにパロディ精神も旺盛なようだ。 したがって、全体の音のイメージはオルガンがギターに代わった SOFT MACHINE または、GONG 風のサイケ・テイストもあるところから、ギターが地味な KHAN といってもいいだろう。(4 曲目のヴォーカルはスティーヴ・ヒレッジによく似ている!) また、SOFT MACHINE の硬派なイメージとは異なる、より泥臭いロマンティシズムやセンチメンタリズムがあり、それが素朴にしてシンフォニックな英国ロックに通じている。 演奏には知的なスリルもあるが、それ以上に、繊細な暖かみがじわじわっとしみてくる。 ユーモア、やさしくももの哀しい叙情性、RIO 風ですらあるエッジの効いた音作りが一つになって、カンタベリーという表現だけにしばられないユニークなサウンドになっているといえるだろう。 70 年代初期の英国ロック、カンタベリーのファンにはお薦め。 スリーヴの写真を見ると、メンバーの風貌までが SOFT MACHINE 風です。
   MUSEA の再発 CD には、80 年のディディエ・チボーの作品「Moving」からの楽曲がボーナス・トラックとして付く。 大きく作風は変わらないが、穏やかにして緊張感のあるミニマル・ミュージック風の作品(かの時代らしいニューエイジ・テイストもあり)やキャッチーでメロディアスな作品も現われ、かなりのいい出来。70 年代初期に優れた音を生み出していたミュージシャンが 80 年代になってもちゃんといい音を生み続けていたことに気づいた。

  「London Cab」(8:30)
  「X-25」(2:00)
  「Gelatine」(8:10)パッチワーク風の力作。アメリカのレコメン系アーティストのような面も見せる。
  「Last Song」(15:20)
  「Memories」(3:15)フルートをフィーチュアした物憂げなインストゥルメンタル。

  「Destruction」(2:47)ボーナス・トラック。
  「Tout Autour De Toi」(4:13)ボーナス・トラック。
  「Frequence Nocturne」(4:22)ボーナス・トラック。名曲。
  「Solaria」(3:45)ボーナス・トラック。
  
(CBS S 64399 / FGBG4062.AR)

 The World Of Genius Hans
 
Maurice HELMLINGER organ, trumpet, soprano & alt & tenor sax, flute, backing vocals
Gerard BERTRAM guitars, 12 string guitar, vocals
Didier THIBAULT bass, vocals
Gerard PONS drums
guest:
Michel CAMICAS trombone
Jean-Pierre LAROQUE bassoon
Guy Boyer vibes
Claude DELCLOO backing vocals
Jean STOUT choir

  72 年発表のアルバム「The World Of Genius Hans」。 内容は、ぎこちなさとユーモラスなタッチが不思議な魅力を持つカンタベリー調のジャズロック。 ワウワウ・ギター、強烈なファズ・ベース、変則リズム、ジャジーな管楽器といった要素を束ねたサイケデリックなタッチの演奏に怪しいヴォーカル・パフォーマンスも交えた、やや逸脱感のある作風である。 カンタベリーらしい、角張った変拍子トゥッティによる強圧的、執拗な反復や管楽器のアブストラクトかつクリアーなフレージングは、やや肩に力は入っているが、なかなかに冴えていると思う。 MAGMA をから RIO にまでリスナーの妄想を発展させるところもある。 しかし、たしかに、変拍子を強調したリフを支えとしてソプラノ・サックスのリードでジャズらしいキレをもってしなやかに走る(特に二曲目以降)が、エフェクトされたギターやベース、オルガンらによるフリーフォームに近い演奏の毒気やダウナーな気だるさの方が本性に思える。 隙間のある緩い感じがつきまとう演奏なのだ。 これは、一曲目の印象が強いからだろう。 狂気を発するヴォーカルが加わればなおさらだ。 SOFT MACHINE が初期のユーモアやアンニュイさを失わず、また堅苦しい知性も獲得せずに演奏力だけ高まったといってもいいかもしれない。 つまり、カンタベリーから若干 VERTIGO、NEON、DERAM といったレーベルのジャズロック作品に寄った作風なのだ。(個人的には EAST OF EDEN が思い浮かんだ) レスリーを効かせたスペイシーなオルガンがざわめく作品やインドな音色がゆらゆらと立ち上る作品では、より一層その思いが強くなる。 言葉を変えれば、プログレらしさはたっぷりある、ということだ。 さらには、北欧圏のロックに通じるおおらかさも感じられる。 この点は英国ロックにはない特性だろう。 このおおらかさやもっさりした感じがなくなるとフランク・ザッパに近づくようにも思う。
   ちょっと変わっているがサックスを中心にメロディアスで聴きやすいので、いわゆるジャズロックのファンにはお薦め。 独特のズッコケた感じとペーソスが特徴だ。 ヴォーカルは、1 曲目が英語、それ以外はフランス語。
   MUSEA の再発 CD には、80 年のディディエ・チボーの作品「Moving」からの楽曲がボーナス・トラックとして付く。(第一作の CD に含まれていた作品と合わせて、「Moving」の全曲が揃っている)

  「The World Of Genius Hans」(14:00)妄想力抜群のサイケデリックな力作。
  「Funny Doll」(4:25)
  「Astromonster」(6:15)
  「Moving Theme」(3:46)
  「Cauchemar」(3:46)
  「We Were Lovin' Her」(3:28)
  「Un Jour...」(1:25)
  
(CBS 64146 / FGBG 4101.AR)


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