ドイツのハードロック・グループ「TWENTY SIXTY SIX AND THEN」。 71 年結成。 作品は 72 年の一枚のみ。 同年解散。
Geff Harrison | lead vocals, lyrics |
Gagey Mrozeck | guitars |
Veit Marvos | keyboards |
Dieter Baucer | bass |
Steve Robinson | keyboards |
Konstantin Bommarius | drums |
guest: | |
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Wolfgang Schöonbrot | flute |
Curt Cress | drums |
2000 年発表のアルバム「Reflections!」。
72 年発表の LP 「Reflections On The Future」のオルタネイト・テイクと、未発表トラックから成る編集盤。
オリジナル LP 収録曲は、別テイクのロング・ヴァージョンとして、すべて収録されているそうだ。
内容は、オルガン中心のツイン・キーボードを活かしたハードロック。
ジャーマン・ハードロック系らしく(もっともヴォーカリストが英国人なようで、ちょっと聴いただけではドイツものとは分からない)、「泣き」のごり押しが基本である。
しかしながら、パワフルなヴォーカルやけたたましくも泣きのギター、激しい打撃技などがいかにもハードロックらしい一方で、クラシカルかつジャジーなオルガンとともにピアノやヴァイブの音が、一気に「プログレ側」へ引き寄せている。
この時代のオルガンものには欠かせぬ R&B 調のグルーヴもあり、ランニング・ベースとピアノ、フルートによる熱いジャズ・コンボすらあるのだ。
これらが、ハードロック特有の一本調子へのアクセントとしてうまく機能し、ヘヴィで濃厚な音にもかかわらず、起伏あるドラマを感じさせている。
リズムや曲調の大きな変化には、プログレといって間違いないセンスがある。
VERTIGO のオルガン・ロックを、ぐっとハードロック寄りに近づけたようなイメージです。
ヴォーカルは英語。
不思議な魅力を湛えるジャケットもいい。
ゲストには流離いの名ドラマー、クルト・クレスの名前もある。
「At My Home」(7:57)初っ端からツイン・ハモンドが唸りを上げる、ハードかつクラシカルな傑作。
クラシカルなリフ、荒々しいオルガンで突進する猛牛のような演奏だ。
しかししながら、リズム含めメイン・ヴォーカル・パートは R&B /ディープ・ソウル系であり、そのせいで全体の雰囲気がヘヴィながらも、西海岸サイケ風味をちょっと効かせたアメリカナイズされたものに感じられる。
フルートのアクセントもそれ風だ。
もちろん音色を使い分けたハモンドのインタープレイは圧巻。
ハードロック・ファンはもちろん、重たいのさえ気にならなければ、THREE DOG NIGHT 辺りのソウルなポップス・ファン、クラブ系リスナーにも推薦可能。
傑作です。
「Autumn」(9:06)謎めいたイントロからヘヴィなリフで進むクラシカルなハードロックを経て、神秘的なサウンドへと変化してゆくプログレらしい不可逆変転ナンバー。
イントロではオルガンとともにメロトロンも静かにたゆとい、そのけだるい雰囲気がみごと。
元祖ブラスト・ビートで疾走するロシアン・ダンス風の演奏を経て、ヘヴィなリフへと到達するオープニングは、プログレらしいカッコよさ満載。
メイン・ヴォーカルは、R&B というよりはすでに DEEP PURPLE を思わせる本格的なハードロック調。
ラウドにして重い。
オルガンとギターの凶暴なデュオやソロ、そしてなかなかテクニカルなリズムの変化なども聴きもの。
特に、リスナーを脈絡から振り落とさんばかりの、曲調の変化がすごい。
チェンバロ、フルートを思わせるオルガン、ヴァイブと弾き語りによる幻想的なブリッジもあり。
全体としては、哀愁あるドラマを感じさせる。
「Butterking」(7:17)ヘヴィなリフと深いエコーを活かしたアコースティック・ギター弾き語りやメロトロンが交錯する、かなりアシッド・サイケ調の怪シンフォニック・チューン。
メイン・ヴォーカルは、なんというか民謡風。
ポルカかコサック・ダンスのようなリズムによるキーボードのけたたましい演奏と、フォーク風のコール・レスポンスを繰り返すヴォーカルがこんがらがる。
決めの「Butterking!」は元祖オーケストラ・ヒット?
EDGAR BROUGHTON BAND のような危うさとイタリアン・ロック風の大胆さあり。
クラシカルなモチーフを、珍妙なリズムでいじくりまわしている。
以下三曲は、オリジナル・アルバムでは短縮版になっていると思われる。
「Reflections On The Future」(15:48)
シャープなギター、オルガンが暴れるハードロック・インストゥルメンタルと、叙情的なオルガン伴奏によるポップなバラード調のヴォーカル・パートから成る大作。
ギターのリードするオープニングが、カッコいい。
受けてたつオルガンは、PROCOL HARUM や RARD BIRD を思わせる哀愁のプレイ。
泣きのメイン・ヴォーカルも、このオルガンとヴァイブのオブリガートが白々と支えてゆく。
サビのロッカバラード調が、なんともノスタルジック。
ソロはまずチェンバロ、そしてヴァイブのブリッジからギターヘ。
重いリフとともにギターが唸りを上げるヘヴィ・メタル調から、オルガン・リードのクラシカルなメイン・パートへ戻る手際が、鮮やかだ。
メインの後のソロはオルガン。
まずランニング・ベースとともにジャズ・オルガン、そしてペンタトニックでのハードでスピーディなプレイ、再びジャズへと戻りその後は電気処理を駆使した混沌へ。
電子音のバックで唸るメロトロン。
最後は、チャーチ・オルガンをバックに空しさいっぱいの歌。
そして激しい演奏の中でギターがむせびなく。
「The Way That I Feel Today」(11:11)
フルート、オルガン、ギターが絶叫するオープニングから、一気にピアノのリードするジャズ・コンボへと変身。
唖然である。
続いてクラシック風のピアノ伴奏でヴォーカル。
やはり PROCOL HARUM である。
フルートとピアノのかけあいオブリガートが凝っている。
珍しくサビでは、ビートポップ風のコーラスもあり。
英国調のメランコリーのある、しみじみしたヴォーカルだ。
間奏は、小気味いいブギーにフルートとギターがややジャズ風の味つけ。
続いてシャフル・ビートで、オルガンとギターがせめぎあい、フルートがアクセントする。
リズミカルで活気ある演奏が気持ちいい。
再びクラシカルなピアノから哀愁のヴォーカルへ。
クラシカルなポップスの名品。
「Spring」(13:02)オルガン、チェンバロのツイン・キーボードが活躍するハード・プログレ・インストゥルメンタル。
ジャズ風のドラムスと、クラシカルなテーマのコンビネーションがおもしろい。
即興風のプレイが、アップ・テンポでたたみかけるように続く。
ヘヴィな RARE BIRD。
オルガン好きの方は、二日酔いするくらい堪能できます。
以下の二曲はおそらくシングル曲。
「I Wanna Stay」(3:59)
「Time Can't Take It Away」(4:40)
(UAS 29314 / SB 025)