スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「ABEDUL」。79 年結成。作品は一枚。 ありそうでないファンク系プログレ。
Albert Aranega | keyboards |
Narcis Baiges | vocals |
Pedro Castro | bass |
Jose L. Pérez | guitar |
Lluis Visiers | drums |
79 年発表のアルバム「Nosotros」。
内容は、タイトでダイナミック、なおかつジャズ風のアドリヴ力も備えたシンフォニック・ロック。
ファンク調といっていい弾力と音数の多さ(ディスコな四つ打ちドラムス!)が特徴のリズム・セクションに率いられてシンセサイザーとギターの双頭がしなやかに走る、痛快な演奏である。
スペイシーなサウンドのキーボードが演出する SF っぽいメタリックな華やぎにもかかわらずプログレというよりはフュージョンに聴こえるとすれば、それはエネルギッシュに躍動するリズムとスパニッシュなメロディ・ラインによるものだろう。
全体としては 70 年代終盤にふさわしく複雑なリズム変化やジャジーな技巧もこなせるシャープなロックというべきだろう。
アナログ・シンセサイザーはきらびやかに音楽全体を彩ってシンフォニックなプログレのイメージを強化している。
同時にクランチでパーカッシヴなハモンド・オルガンがノリノリのバッキングでファンク・テイストを演出している。
こういったわりと珍しいコンビネーションをこなす鍵盤奏者の嗜好がそのまま音楽全体に行き渡っているようだ。
B 面の作品では、クラシカルで叙情的な面も強調される。
英米からの影響の受け止め方が日本のグループに似ているので非常に懐かしい音ともいえる。(ヴォーカリストの歌唱スタイルが芳野藤丸を連想させる)
70 年代末、ハードロックやプログレ、フュージョン・ブームを経て、サウンド品質や演奏力を至上とする技巧的なロックへと進んだグループが英米に現れ始めた。
このグループも後発として 75 年あたりのドイツ系ハードロックや英国プログレの影響を十分に引きづりつつも、同じような方向への進化を見せ始めていると思う。
「Flash」(5:57)シンセサイザーをフィーチュアしたシンフォニックなインストゥルメンタル。
「Ultimos Momentos」(4:51)ジャジーなサザン・ロック。SHOGUN か?
「Walking」(4:00)シャウトやけたたましいギターなどスパニッシュな JEFF BECK GROUP のよう。リズム・チェンジが大胆。初期英国ハードロックのスペイン・バージョン、あるいは意図的なパロディのような作風だ。
「Sobre Fuego」(3:29)腰にくるリズムのファンク・ハードロック。ハモンド・オルガンがいい感じだ。
「The Monster And The Butterfly(El Monstruo Y La Mariposa)」(4:59)ドイツ系ハードロックにありそうなシンフォニックなバラードがハードロック、ジャズへと目まぐるしく変転する。タイトルからして物語っぽい。不可逆構成がイタリアン・ロック的。
「Impresion」(5:00)やはりドイツ風のロマンチシズムと黒人っぽさが入り交じる独特の味わい。妙な緊張感あり。
「Renacer De La Aurora (Boreal)」(3:49)軽快でスタイリッシュな作品。取って付けたエンディングが悪くない。
「84 H.D.G.」(2:42)テレマンやヘンデルのような愛らしいインストゥルメンタル。
(CPS 9608)