イギリスのロック・グループ「AFFINITY」。 VERTIGO からの、わずか一枚の作品で知られるグループ。 リンダ・ホイルの売り込み用のグループのようだ。 アルバム発表後にグループは解散し、ホイルはソロ・アルバムを発表。 近年モ・フォスターを中心に音源発掘が進む。
Linda Hoyle | vocals |
Lynton Naiff | organ |
Mike Jopp | guitars |
Mo Foster | bass |
Grant Serpell | drums |
70 年発表のアルバム「Affinity」。
内容は、ハスキー・ヴォイスに独特の翳りをまとうリンダ・ホイルの歌唱を、ジャジーなハモンド・オルガンが守り立てるブリティッシュ・ジャズロック。
ビッグ・バンド調のジャズロックとブルーズ・ロックがブレンドされたサウンドには不気味なスケール感がある。
そして、フォーク風味やサイケデリックな彩りはいかにもこの時代特有のものであり、その何ともいえぬクールで憂鬱な「時代」の空気が、散漫になる寸前といってもいいほどバラエティに富む楽曲をまとめている。
メランコリックで切ないメロディとソウルフルでヘヴィな演奏が、摩擦なく、しっくりとおさまっているのだ。
そして、ブラスが入ればブラス・ロックになるし、ストリングスが入ればソフト・ロックになるような、カテゴリ分けを空しくさせるところがある。
各論に入ろう。
ヴォーカルはやや表情に乏しくメランコリックな雰囲気に頼り切りだが、いざハードに迫るところではドスの効いた声質が活きている。
また 2 曲目や 7 曲目の長大なインストゥルメンタル・パートにおいては、ネイフの奔放なオルガン・プレイを楽しむことができる。
このオルガンのタイムリーなプレイは、どの曲でもワサビになって味を引き締めている。
全体の印象からは、ジャズロックという言葉を冠にはしにくいサウンドだが、唯一確実にジャジーなテイストをもつのがこのネイフのプレイだ。
ヘヴィなアートロックの洗練を試みたような力の入ったプロデュースにもかかわらず、オリジナル曲の少なさやスタンダードで勝負できるほどはヴォーカリストの声に魅力が無いこと、さらにはやや一貫性を欠くアレンジなどのおかげで、作品としてさまざまな問題を抱えている。
しかし、全体に漂う切なく憂鬱なムードが、みごとにトータルなまとめをしているのだ。
繰り返し聴くうちに、この時代の空気に麻痺させられたようになる。
理屈ではない。
時代特有の空気の香りを楽しみたいという方にはお薦めだ。
ジャケットはもちろんキーフ。
「I Am And So Are You」(3:31)アラン・ハルの作品。
ブラス・アレンジは、LED ZEPPELIN のジョン・ポール・ジョーンズ。
中低音を効かせたハスキー・ヴォイスとビッグ・バンドがハマったブルージーなナンバー。
ハードなメイン・パートに比べ、サビが意外にも切ない。
エンディングはファズ・ギターのソロ。
「Night Flight」(7:15)オリジナル作品。
冷ややかな幻想に満ちたヴォーカル・パートと、中間部の R&B テイストあふれるエネルギッシュな演奏が、コントラストする佳作。
フォーキーな歌が、次第にテンションを高めてゆくオープニングの流れがみごと。
歯切れよいリズムで疾駆するオルガンが、最高にカッコいい。
黒っぽいビート感にもかかわらず、テーマには哀愁がある。
さすが英国。
再びエンディングは、ブルージーなギターである。
「I Wonder If I Care As Much」(3:20)エヴァリー・ブラザースの作品。
ストリングス・アレンジは、ジョン・ポール・ジョーンズ。
深い霧におおわれたようなドラムスのエコーの中、ギターが寂しげに鳴るイントロは、LED ZEPPELIN そっくり。
打ち寄せる波のようなストリングスが、シンフォニックな盛り上がりをつくる。
このストリングスも ZEPPELIN 風だ。
コーラスは、ゴスペル風というより神秘的。
「Mr.Joy」(5:02)アネット・ピーコックの作品。
ジャジーなオルガン、ヴァイブ、エレピと、抑えたセクシーなヴォーカルによるグルーヴィなソフト・ロック。
ヴァイブもおそらくネイフ。
元曲にも歌詞はあるのだろうか。
おしゃれな感じは、ピチカート・ファイヴにも迫る。
終盤のリフとともに力を増してゆく曲調が、非常に肉感的。
「Three Sisters」(4:57)オリジナル作品。
ブラス・アレンジは、クリス・ヒュー。
ギター・ソロあり。
ヘヴィなオルガン、ギターのリフがドライヴするストレートなナンバー。
ブラスもパワフルに曲を押し上げる。
全体に力のこもった好演だ。
ギター・ソロも小気味いい。
「Cocoanut Grove」(2:35)THE LOVIN' SPOONFUL のジョン・セバスチャンの作品。
ドラムレスのキュートなアコースティック・ナンバーであり、カヴァーの定番。
ホイルのヴォーカルが、スタンダード風のノスタルジックな表情を見せる。
ここでもジャジーなオルガンが光る。
「All Along The Watch Tower」(11:36)ジミ・ヘンドリックスのカヴァーで有名なボブ・ディランの名作。
高音から低音まで多彩な表情を操るヴォーカル、そしてシャープなリズムで突っ走るオルガンによるドライヴ感あふれる大作。
うねるリズムの上で、奔放にアドリヴを決め捲くるオルガンが圧巻だ。
ソロからすっとテーマへと戻る呼吸もいい。
中盤やや沈み込み、再びエキサイトしてゆく流れは、お約束とはいえバッチリ決まっている。
「Eli's Coming」(3:26)SSW ローラ・ニーロの作品。
ボーナス・トラック。
シングルより。
THREE DOG NIGHT も取り上げた名作。
「United States Of Mind」(2:44)アラン・ハルの作品。
ボーナス・トラック。
シングルより。
(REP 4349-WP)