イギリスのプログレッシヴ・ロック・プロジェクト「THE ALAN PARSONS PROJECT」。 75 年、数々の作品でエンジニアを勤めたアラン・パーソンズとエリック・ウルフソンによって結成。 翌年アルバム・デビュー。 80 年代初頭からはヒット・ポップスを次々放つ。
Eric Woolfson | vocals, keyboards | Alan Parsons | vocals, guitar, keyboards | David Paton | bass, guitar, vocals |
Joe Puerta | bass | Ian Bairnson | guitar | David Pack | guitar |
Billy Lyall | keyboards | Andrew Powell | keyboards | Christopher North | keyboards |
Terry Sylvester | vocals | Darryl Runswick | string bass | Francis Monkman | keyboards |
Stuart Tosh | drums, vocals | Burleigh Drummond | drums | John Leach | cimbalom, kantele |
Jane Powell | vocals | John Miles | vocals | Arthur Brown | vocals |
Leonard Whiting | vocals | Jack Harris | vocals | Smokey Parsons | vocals |
The English Chorale |
76 年発表のアルバム「Tales Of Mystery And Imagination Edgar Allan Poe」。
作家エドガー・アラン・ポーの作品世界を主題にしたアルバムであり、作品名をそのままタイトルにした楽曲とナレーションで構成した一種時代錯誤的なトータル・アルバムの力作である。
画期的なのは、時代の先端を行っていたであろうそのサウンド作りである。
ロマンティックにして明快なメロディ・ライン、大仰なアレンジ、それらをまとめるクリアでデジタリーな音質。
作風は、MANDALABAND からバンド的な技巧を抜き去って大仰にした、または、PINK FLOYD を思い切りディズニー寄りにしたもの、といえばいいだろう。
オーケストラの処理は、恐ろしく堂に入った正統的なものであり、THE BEATLES 時代からのオーケストラ共演作の優れた表現がほとんど取り込まれているような気がする。
ギッシリと詰まった音を分離よく明快に収録し、再生させるテクニックも、パーソンズとウルフソンのキャリアからすれば当然なのだろう。
「The Wall」PINK FLOYD 的な SE やビートを強調したアレンジなど、80 年代の音をすでに先取りしているところもある。
(そしてその通り、80 年代には英国ポップスをサウンド面で牽引する)
ブリティッシュ・ロックの革新性/偏屈さを、分かりやすく聴きやすいものとして次代に継承した功績は大きい。
重厚な主題を掲げてさまざまな音響効果を贅沢に駆使しているものの、基本的には、キャッチーなポップ・ロックとしてまとめるところもみごとである。
また、管弦楽のシミュレータとしてではないシンセサイザー独自の使い方が、非常に新しく感じられる。
以後のポップス・グループとしての活躍は、この作風にすでにはっきりと認めることができる。
(余談、80 年代に入ってからの CAMEL はこのサウンドに大きな影響を受けている)
後々数多くのアーティストが取り入れる、「打ちのめされた現代人の精神の象徴するかのように、激情に満ちブルージーとすらいえるバッキングで無機的なモノローグがつぶやかれる」という表現パターンを確立したのはこのパーソンズ、ウルフソンのコンビでしょう。
一方、プログレッシヴ・ロック特有の神秘性や、早熟で暗鬱なエネルギーは感じられず、また、よく聴けば、ポーらしい「怪奇/幻想」といった雰囲気もさほどではない。
こんなに爽やかなサウンドで、なぜに暗鬱の権化の如きポーを主題としたのかが、よく分からなくなってくる。
ナレーション以外にもリード・ヴォーカルを中心に、多くのゲストを迎えている。
オーケストラ・アレンジおよび指揮は、アンドリュー・パウエル。
プロデュースはアラン・パーソンズ。
「A Dream Within A Dream」(4:13)ナレーターは、なんと、俳優のオーソン・ウェルズ。
「The Raven」(3:57)他の作品はさておいても、この作品だけはもっとどんよりしてもいいと思います。リード・ヴォーカル担当の一人はあの「ロミオとジュリエット」のレナード・ホワイティング。
「The Tell-tale Heart」(4:38)PINK FLOYD 的なベース・パターンのサイケデリック・ロックとストリングスを組み合わせた佳作。
リード・ヴォーカルは大仰でインチキ臭い調子に適役のアーサー・ブラウン。
「The Cask Of Amontillado」(4:33)ジョン・マイルズのヴォーカルが味わい深いバラード。あまりに PINK FLOYD 的なコーラスとオーケストラが巧みに使われている。
「(The System Of) Doctor Tarr And Professor Fether」(4:20)
「The Fall OF The House Of User」オーケストラを大幅に使ったサウンド・トラックのようにドラマチックな大作。オーケストラ・パートはほとんど映画のサントラ状態。
「I. Prelude」(7:02)
「II. Arrival」(2:39)
「III. Intermezzo」(1:00)
「VI. Pavane」(4:36)
「V. Fall」(0:51)
「The One In Paradise」(4:46)PINK FLOYD の「狂気」を連想させる終曲。「Us And Them」に似過ぎというのは意地悪か。
(PolyGram 832 820-2)