オーストリアのギタリスト「Alex Machacek」。72 年生まれ。新世代のアラン・ホールズワース。
Alex Machacek | guitar, programming |
Tibor Kövesdi | bass, additional keyboards |
Flip Phillip | mallets, percussion |
Harri Ganglberger | drums |
99 年発表のアルバム「Featuring Ourselves」。Mc Hacek 名義の作品。
内容は、アラン・ホールズワース流のテクニカル・ギタリストを軸としたクールでスタイリッシュなジャズロック。
ヴァイブ、マリンバなど鍵盤打楽器を大きくフィーチュアしており、昨今のアメリカのグループのようなハード&ヘヴィ路線一辺倒ではない、多面的な魅力を持つ作品である。
ギタリストは、伸びやかなサスティンと心地よいディストーション、左手主体の超絶レガート、ヴァイオリン奏法によるストレッチ・コードのバッキングなどなど、意識していないとは到底いえないホールズワース・フリークぶりである。
ベーシストも歌心のあるテクニシャンである。
また、アクセントとして入るヴォイスや鍵盤打楽器、変拍子パターンの多用など、フランク・ザッパの作風への連想も容易であり、また超絶テクニック系カンタベリーとも近接することになる。
ガレージ風の小気味いいビートを叩き出す、軽めでヌケのいいドラムスなど、パーシー・ジョーンズの TUNNELS との共通点もある。
テクニックやサウンドだけではなく、それらによって、さまざまな表情と色彩とムーブメントがある音楽を描き分けられている。
ジャズロックのアルバムにしては豊かな音楽性を示すことのできている破格の内容といえる。
全曲インストゥルメンタル。
「Gnade」(6:56)
「Liebe, Jazz Und Übermut」(8:15)
「Zapzarapp」(5:59)
「Jazzquiz - Hard Version」(0:51)
「Donna Lee - Easy Viennese Teenage Version」(2:17)
「Intro 2 7」(0:36)
「Allandig」(8:52)
「Bänderris」(8:37)
「Art-Subvention 97」(1:01)
「... In The Sky」(7:13)
(NGE 001)
Alex Machacek | guitar, guitar synth |
Jeff Sipe | drums |
Matthew Garrison | bass |
2007 年発表のアルバム「Improvision」。
内容は、レガートかつヘヴィなギターを中心としたハードなジャズロック。
ワイルドでざらついたサウンドで爆発的な演奏力を駆使する、どこかぎこちなさのあるハーシュなスタイルであり、またそれだけに、メロディアスな展開に舞い降りたときのカタルシスもひとしおである。
キーボードのない U.K. のよう、というと、復活 U.K. に参加しているのだから当然、という陳腐なオチになってしまいそうだ。
ただし、無機的で鋭利なイメージ、不気味な暴力性、思い切ったロマンチシズムは、U.K. よりも頭一つ抜き出ている。
そして、稠密なプレイが険しく荒々しく折り重なるように押し寄せる芸風は、ショーン・レーンの参加したヨナス・エルボーグ(本作のドラマー、ジェフ・サイプも参加)やパーシー・ジョーンズの TUNNELS と共通するが、こちらの方はより素直に、トラディショナルなロック・スピリットやジャズ感覚を前面に出している。
息継ぎのない管楽器のようなギター・プレイは、一度箍が外れると途方もないエネルギーで延々と脈動し続ける。
止めようにも本人にもうまく止められないようだ。(本家ホールズワースと同じヴォリューム奏法による和音のプレイも、おそらく意識的に、頻発する)
それでも、あくまで人力による音になっていて、荒々しくも鍛え上げた肉体性を誇るようなプレイなどから、現代のガレージ系、ストリート系サウンドの一種と見なすこともできそうだ。
ファンクなグルーヴを打ち出すところもあるが、そこにすらストイックで無駄をそぎ落としたような厳しさがある。
また、ギターらしい、ベースらしい弦の音がしっかりと聴こえてきて感情移入がしやすい場面も多い。(何だか分からないくらいに、もつれて歪んだ音もあるのだが)
ほぼ生音のモダン・ジャズ風のアドリヴを気まぐれに挟み込む辺りは余裕の表れか。
テクニカル・ヘヴィ・フュージョンにして KING CRIMSON 的ミニマリズムも取り込んでいるところが、いかにも「今」の作風である。
アメリカで発展したフュージョンの承継スタイルではあるが、アメリカのバンドにはない薄暗い幻想性が何よりの魅力。
個人的には、さほど技巧的なギター・プレイに興味はないのですが、この人のプレイには魅力を感じます。結局は雰囲気、色調が合っているのでしょうか。
全編インストゥルメンタル。
「There's A New Sheriff In Town」(6:26)
「Along Came A Spider」(4:27)
「Shona」(6:59)
「Gem 1」(5:21)
「Gem 2」(2:45)
「To Whom It May Concern」(2:40)
「Yoga For Cats, Part. 1」(2:21)
「Yoga For Cats, Part. 2」(4:48)
「Very Sad」(8:13)じっくりとギターを聴かせる内省的なダーク・フュージョン。
「Matt's Riff」(4:56)
「Put Me Back To Sleep」(5:59)
(ABLX 007)
Alex Machacek | guitar and everthing else |
Marco Minnemann | drums |
2010 年発表のアルバム「24 Tales」。
技巧派ドラマー、マルコ・ミンネマンとのデュオ作品。
あらかじめ録音されたドラム・パートにさまざまなミュージシャンが音を加えて完成させるミンネマンのプロジェクトの一作という位置づけのようだ。
内容は、テクニカルかつヘヴィ、詰め込みすぎのジャズロック。
クレジット上はタイトルとおり 24 曲から構成されることになっているが、ドラム・トラックは通しの一発録りなので曲間はない。
ホールズワース直伝のレガートな超速ギター・プレイと緻密にしてダイナミックな打楽器はもちろん、ギター・シンセサイザーと思われるサウンド、プレイも強烈。
演奏の重心を取るような重量感あるピアノもマカチェクの演奏のようだ。
作曲はすべてマカチェク。トロンボーンのゲスト参加アリ。
(ABLX 024)