CLEAR BLUE SKY

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「CLEAR BLUE SKY」。 パトリック・キャンベル・ライオンズによって見出されたギター・トリオ。 70 年 VERTIGO からアルバム・デビューし、73 年解散。 90 年代に入り再編、未発作や新作を発表。

 Clear Blue Sky
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John Simms guitar
Ken White drums
Mark Sheather bass

  70 年発表のアルバム「Clear Blue Sky」。 内容は、歪んだ音のリフを小気味よく放ち、奔放なソロで暴れまわるギター・ハードロック。 弱冠十代のメンバーによる作品であり、背伸びがそのまま音になった自由な空気にあふれている。 主役のギタリストはペンタトニック・スケールによるアドリヴを豪快に弾き飛ばすが、いわゆるブルーズ・フィーリングはほとんどない。 むしろ、ケバさと息せき切るような性急さが特徴であり、それがアルバムを通した特徴にもなっている。 DEEP PURPLE と同じく、将来の HR/HM につながってゆくハードロックのスタイルである。 ヴォーカルは声質になまめかしさと華があり表現にパンチもある。 また、リズム・セクションは荒っぽいながらも爆発的な手数で迫り、要所では変拍子をバシッと決める。 このリズム・セクションが手堅くビートを保つので、手癖の強いギター・アドリヴが若干揺らいでも演奏の屋台骨は乱れない。 また、トリオの音数制約から逃れるための工夫もさまざまにある。 奇妙な電子音風のエフェクトやピアノ、フルート、アコースティック・ギターをうまく使って、音色のヴァリエーションをつけたり、一つの曲のなかでもテンポを変えて立体感を出している。 したがって、凶暴でラウドなサウンドにもかかわらず知性が感じられる。 ラフな録音も、ライヴでワイルドなグループの特質を生かすための方策に違いない。
   ギターに寄りかかり過ぎずもう少しハモンド・オルガンの音が入っていれば、またはアクセントでメロトロン・ストリングスが入っていれば、稀代の名作になったようにも思う。 作曲はギタリストのジョン・シムス。 ジャケットはロジャー・ディーン。 なお、キーボードやフルート、ヴォーカルはクレジットがない。 プロデュースは、パトリック・キャンベル・ライオンズ。

  1 曲目「Journey To The Inside Of The Sun」は三部構成の組曲。 ピアノやギターのオーヴァー・ダビングも用いた大作。

  a.Sweet Leaf(9:30)ヘヴィなサイケギター弾きっぱなしのインストゥルメンタル。 シャフル・ビートでぐんぐん突き進む。 ややチープなホルストの「木星」を思わせる 3 拍子のパートを取り入れて、雰囲気に変化をつけている。 途中からピアノの踊るようなコード弾きも加わる。

  b.The Rocket Ride(5:57) 2 拍子と 3 拍子が交錯する突っかかるようなテーマがプログレ的なヘヴィ・チューン。 線の細いハイトーン・ヴォーカルとワイルドなギターのコード・リフがコントラストする。 野太く変化したドラムスに支えられるギター・ソロはオーヴァー・ダビング。 終盤ややバラード調になりヴォーカルとギターのストロークが幽玄な広がりを生む。 しかしやはり荒々しいギターが印象に残る。

  c.I'm Comin' Home(3:05)シンプルなリフがドライヴするグルーヴィな作品。 ポルタメントするキーボードのような奇妙な電子音のギミックあり。 中盤のクランチなギター・ソロもカッコいい。 ブルージーなテーマにも関わらず演奏はリズミカルで軽妙。

  2 曲目「You Mystify」(7:45) ドラッギーで官能的、アヴァンギャルドなヘヴィ・ロック。 重くふつふつと煮え立つテーマと引きずるようにスローな 8 分の 6 拍子のサビが不気味に対比する。 曲中でテンポ、調子が大きく変化する。 終盤の素面に戻るような過程に独特の嫌な感じがある。 味わいは BLACK SABBATH か。

  3 曲目「Tool Of My Fade」(4:50)うっすらオルガンがたなびくアートロック調の作品。 ギターはあいかわらず激しく吼えるが、メランコリックなメロディもあり郷愁を誘う。 アコースティック・ギターのストロークもあり。

  4 曲目「My Heaven」(5:00) シタール風の空ろなギター・リフ、叩きつけるようなアコースティック・ギター、けたたましいドラムロールが渦を巻くサイケ・フォークロック。 終盤ギター・ソロが炸裂する。

  5 曲目「Buirdcatcher」(4:10)フルートを用いたブルージーなハードロック。 うつろなギターと強烈なトーキング・フルートによるアドリヴ。 終盤は、手拍子入りの虚脱したような演奏となる。
  
(VERTIGO 6360 013/ REPERTOIRE 4110-WP)


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