アメリカのジャズ・ミュージシャン「Cuong Vu」。PAT METHENY GROUP 参加で名を上げた。マイルス・デイヴィスのエレクトリック・ジャズを継承する気鋭のミュージシャン。
Cuong Vu | trumpet |
John Hollenback | drums |
Stomu Takeishi | bass |
guest: | |
---|---|
Lourent Brondel | guitar & lap-steel on 3 |
2001 年発表のアルバム「Come Play With Me」。
内容は、電気処理された効果音やベースの特殊奏法によるノイズ風の音らとトランペットによるヒューマニティあふれる旋律が一つになったスペイシーでアンビエントなコンテンポラリー・ジャズロック。
叙情的なシーンは ECM 風といえば通りがよさそうだが、音が集中して高まったときの危険な焦げ臭さが少し違う。
その焦げ臭さには、往年のハードロックやヘヴィ・プログレと共通するものが間違いなくある。
また、即興主体のプレイにエフェクトを効かせた音響からイメージを喚起させるタイプのようでいて、じつは作曲に基づく音楽的思弁性も高そうだ。
決して多くはない音を緻密に配置して薄暗く美しい景色を描くと思えば、煮えたぎるカオスを叩き切るレーザーのようなプレイも放つ。
リズム・セクションの高まりとともに一気に膨張するアンサンブルも巧みな計画に則ったもののようだ。
深い音響に根ざすパフォーマンスのスタイルには、SIGUR ROS 辺りへの意識もあるのだろうか。
焼けつく混沌の地平に響き渡る高潔なるトランペットの調べに、KING CRIMSON がフリージャズの文脈で最も叙情性を高めた時代に思いが及ぶ。
プログレ・ファンには絶対お薦め。大作ばかりです。電化マイルスと異なり、ファンク的な要素はほとんどない。
ハーモニクスを多用する日系らしきベーシストはパーシー・ジョーンズのファンか?
「Dremas, Come Play With Me」(14:02)
「Vina's Lullaby」(12:40)
「Amniotic」(11:20)
「Safekeepings」(8:07)「Starless」からポスト・ロックへとつながる美しき傑作。
「Again And Again And Again」(8:37)フリージャズと同じ方法でロックを壊すとこうなる?
(KFW 298)
2006 年発表のアルバム「It's Mostly Residual」。
内容は、ヘヴンリーなサウンドに豊か過ぎる感性と知性が自由に発揮されるフリージャズ系コンテンポラリー・ジャズ。
なんといってもフリゼールのギターの存在がいい。
前作で示されたとおり、トリオのままでもノイズやエレクトロニックな効果音をセンスよく使った演出が冴えているが、その画龍に点睛を打つのがこのギターである。
特に、ヘヴィで凶暴な文脈でのソリッドでメタリックな音は腰の据わったドラミングとともインパクト十分である。
そして、厳粛にして慈しみにあふれる場面でもトランペットを従えて豊かな音を紡いでいる。
衝動に突き動かされるままの、幾重にも重なり合った絶叫のようなギターとトランペットのやり取りは、どうしたってマイルス・デイヴィスとジョン・マクラフリンなわけである。
アブストラクトな変拍子のモアレやうっすらと悲しげな音にオプティミズムの響きが交じるなど、PMG での経験も活かされている。
CRIMSON の「Starless」が好きな人にはお薦め。
「It's Mostly Residual」(8:54)希望や祝福に満ちた傑作。感動的。
「Expressions Of A Neurotic Impulse」(7:09)爆裂エレクトリック・フリー。
「Patchwork」(12:51)サイケな不安定さが魅力のフリー系ジャズロック。
フリゼールの緩さが周囲に影響したか。妙にスリリングでカッコいい。
「Brittle. Lake Twigs」(7:35)凶暴極まるメタリックなコンテンポラリー・ジャズ。マイルス入ってます。
「Chitter Chatter」(9:13)
「Blur」(11:24)慈愛に満ちた作品。アメリカの音らしい乾いた感じがいい。フリゼールのソロ作と通じる作風である。
クレジットに Vina と Valdes 一家に捧ぐとある。この Vina は前作の曲名にあった人物と同じか。
(AU9010)