アメリカのギタリスト「David Torn」。 87 年 ECM からデビュー。 テリエ・リピダルやロバート・フリップに影響された空間的なギター・プレイが特徴。 オフィシャル・サイトが素敵です。2015 年新作「Only Sky」発表。
David Torn | guitars, live sampling, manipulation |
Tim Berne | alto sax |
Craig Taborn | Fender Rhodes, Hammond B3, Mellotron, Bent Circuit |
Tom Rainey | drums |
guest: | |
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Matt Chamberlain | drums |
2005 年発表のアルバム「Prezens」。
内容は、音響系にして硬派のフリージャズ的ジャズロック。
得意の謎めいた深く薄暗い音響空間にて、ひしゃげたように歪んだトーンのギターでノイジーなアドリヴやシーケンスをアドホックに提示しているが、それが予定調和を一瞬として許さないようにアンサンブルを統率しているかに思える。
断片的なノイズが立体的、有機的に組み合わさるが、基本的には感触はどこまでも無機質であり、それでいて挑戦的な姿勢も感じられる。
スイッチの入った機械のように唐突にエンジンのかかるドラムスもおもしろい。
いったん打撃が始まると、ジャズでもロックでもない高い強度と正確さで全体のインダストリアルなトーンを補完している。
最終曲はほとんどベースレスのドラムンベース。
そのインダストリアルな音に内省的でペーソスある響きが交差するところがいい。
キーボーディストは、ローズ、ハモンド・オルガンに加えてメロトロンというプログレを意識していないわけがない布陣で、過激にギターを刺激し、ギターの余白を丹念に埋めている。
毎度申し訳ないが、個人的には初期の KING CRIMSON が現代に甦った印象です。
編成も似ているし。
プロデュースはデヴィッド・トーン。
(ECM 1877)
David Torn | guitars |
Mark Isham | trumpet, piccolo trumpet, flugelhorn, synthesizer on 1 |
Tony Levin | Chapman stick, synthesizer-bass |
Bill Bruford | Simmons drums, synthesizer-drums, percussion |
87 年発表のアルバム「Cloud About Mercury」。
エキゾチックなプロローグとエピローグを持つ本作の内容は、ホーンをリード楽器にヘヴィなギターが絡んでゆくアンビエントかつエスニックなジャズロックである。
ギターは、ロバート・フリップが肩の力を抜いてジャズロックを演ずるようなスタイル。
ロングトーンとベンディングを主とするフレージングと込み入ったコード・ワークによるサウンド・スケープ、アタックよりもサスティンとポルタメントを駆使した演奏であり、ビル・フリゼールにも通じる現代的なギター・パフォーマンスのスタイルだ。
カントリー・ミュージック的なアクセントを入れるところもよく似ている。
ホーンもまた、電化後のマイルス・ディヴィスの影響がうかがえる空間的な演奏である。
また、リズム・セクションがドラムス含めエレクトリックなサウンドを強調しているので、メカニカルでインダストリアルなイメージもある。
楽曲は、東洋的な音階を用いたネオ・サイケデリック調のジャズロックが主。
透明感あるアコースティックな ECM らしい音作りに、ロバート・フリップ風の神経質なギターとエレクトリック・ドラムスのビートを加えるところがおもしろい。
アンビエントかつミニマルな展開の中で、マーク・アイシャムの管楽器が抜群の存在感を放つ。
衝撃的な音と薄墨を流したように希薄で平坦な音、ワイルドさとインテリジェンスが独特のテクスチャを成している。
「Suyafhu Skin.../Snapping The Hollow Reed」(8:17)
「The Mercury Grid」(6:32)
「3 Minutes Of Pure Entertainment」(7:05)
「Previous Man」(7:51)
「The Network Of Sparks」
「a. The Delicate Code」(4:50)
「b.Egg Learns To Walk / ...Suyafhu Seal」(10:25)
(ECM 1322 831-108-2)
David Torn | guitars, loop & processing, Hammond-B3, harmonica, fake koto, tiny piano, voice |
Mick Karn | fletless bass, bass clarinet, voice |
Tery Bozzio | drums, percussion, bodhran, dumbek, voice, piano |
94 年発表のアルバム「Polytown」。
内容は、乾いた陰鬱な世界を独特の漕ぎ手の小船でわたってゆくようなフリー・ミュージック、あるいはアヴァンギャルド・ジャズロック、あるいは「傲慢なるアンビエント・ミュージック」。
個性的な音質を活かし、音響処理を駆使した冒険的、実験的な作品である。
ほのかなエスニック風味もあり。
独特なベースのトーンと間取り、そして狂乱するアドリヴを超えて音響世界を支配するスイッチと化してゆくギター・プレイ。
暗い秩序を称揚するのか、徹底的に抗っているのか分からないが、打楽器のプレイは尖りきっている。
ドラムスの録音は非常に明晰であり、すべてのタム、パーカッション類の音がよく聴こえる。
音を綴ってシーンに秩序を持ち込むのはフレットレス・ベース。
ベース以外はほぼドローン的、断片的、衝撃的な音またはノイズである。
トーンは後半の楽曲ではハモンド・オルガンも弾いている。
「Honey Sweating」(5:45)
「Palms For Lester」(6:43)
「Open Letter To The Heart Of Diaphora」(4:38)
「Bandaged By Dreams」(6:53)
「Warrior Horsemen Of The Spirit Thundering Over Hills Of Doubt To A Place Of Hope」(5:01)
「Snail Hair Dune」(9:31)
「This Is The Abduction Scene」(3:09)
「Red Sleep」(4:27)
「Res Majuko」(3:42)
「City Of The Dead」(3:30)
(TSQ-CD-9007)