アメリカのアヴァンギャルド・ロック・ユニット「DR.NERVE」。 84 年ニューヨークにて結成。 一部の作曲では音楽記述用言語 HMSL を使用。 作品は八枚。2020 年新作「LOUD」発表。 おそらくフランク・ザッパの大ファン。
"Armed Observation" | |
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Nick Didkovsky | guitars |
Sam Bennet | percussion on 15 |
Anne Brudevoid | violin on 16 |
Dave Douglas | trunpet on 1-4,7,14-16 |
Kyle Sims | bass on 3,6,7,14,16 |
Yves Duboin | soprano sax on 1-7,9-11,14-16 |
Mike Leslie | bass on 1,2,4,15 |
Michael Lytle | bass clarinet on 1-4,6,7,14-16 |
James Mussen | drums on 1-4,6,7,14-16 |
Marc Wagnon | vib on 1-4,7,14,16, percussion on 15, piano on 6 |
"Out To Bomb Fresh Kings" | |||
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Nick Didkovsky | guitars | ||
Doug Brown | bass on 20 | Anne Brudevoid | violin on 22,23,24,25 |
Lucian Burg | sax on 20 | Don Davis | tenor sax on 17,18,21,27 |
Yves Duboin | soprano sax on 17,18,21,23-27 | Mike Leslie | bass on 17,18,21,27 |
Michael Lytle | bass clarinet on 17,18,21,27 | James Mussen | drums on 17-19,21,27 |
Marc Wagnon | vibraphone on 17,18,21,27 | Bill Lippencott | sax on 20 |
Brian Farmer | drums on 22-25 | Joachim Litty | sax on 23-25 |
Steve MacLean | bass on 23-25 | Chuck Verstraeten | trombone on 23-25 |
92 年発表の「Armed Observation / Out To Bomb Fresh Kings」。
84 年の自主制作によるデビュー・アルバムと 87 年発表の第二作のカップリング CD。
16 曲目までが第二作、17 曲目以降が第一作という構成。
第一作の内容は、管楽器(サックス、トロンボーン、クラリネット)、ベース、ドラムスが元気な変拍子ジャズロック。
RIO、チェンバー・ロック調のぎくしゃくしたテーマのユニゾンを軸に、パンキッシュなビートとともにのたくりながらもイケイケで突っ走るスタイルである。
フロントはパンチのある管楽器のユニゾンで、そこにギターとヴァイブ、ヴァイオリンらがからんでくる。
ギターはへヴィ・ディストーションで弦をひねくり回し、毒気のあるパワー・コードを放つ、いわば機嫌のいい KING CRIMSON。
現代音楽風のポリフォニックなアンサンブルもあるが、ベースラインの弾け方やチープで小気味いいドラミングなど、どちらかといえばシリアスというよりは素っ頓狂なまでの躍動感が魅力的である。
スピードがあり、音も厚い。
攻撃的でパンキッシュ、少しファンクなインスト・ロックとして、かなりカッコいいと思う。
17、18、21、23、24、27 曲目あたりが、お気に入り。特に 27 曲目「Dr Nerve」は、シュアーなロック・ビートの上でベース、ギター、サックスがとぐろを巻くグルーヴィな佳作。
なお、20 曲目「Spy Boy」は SPY BOY なるグループの演奏であり、22-25 曲目 は CROW の演奏。いずれも ディドコフスキーが過去参加したグループである。同一アルバムに収録されていることから明らかなように、作風に大きな変化はない。
第二作では、ロック的なストレートな疾走を抑えて、複雑度と奇天烈さ、凶悪さが増大する。
管楽器の変態的ユニゾンにギターの金切り声がからみつき、脈絡をぶった切った、いわば暴走するナンセンスによって「奈落に向かって螺旋を描いて一直線」といったイメージの演奏になっている。
リズムとギターのフレーズは不自然を通り越した地平を走り、にわかには何の楽器か判別できないクシャクシャな音が次々と現れる。
折れ曲がった断続的なテーマ演奏ははっきりいってあまり体によくない気がする。
一方、底意地の悪い音が乱れ飛ぶ中、ワグノンのヴィブラフォンやダグラスのトランペットのソロが凛と浮かび上がるシーンもある。
知的で高度に作り込まれた音楽なのかもしれないが、どことなく悪意をもった企みのある音であり、その果てにナンセンスなユーモアも感じられる。
簡単にいうと、バカなのか利口なのかが判然としない、そういう音である。
これをライヴで再現するのは相当難しいだろう。
エレクトリックなアヴァンギャルド・ポピュラー・ミュージックの典型、つまり HENRY COW の作風であり、ハードロックやジャズのパワフルな部分をうまく取り込んだ現代音楽といえるだろう。
(CUREIFORM RUNE 38X)
Greg Anderson | bass |
Leo Ciesa | drums |
Nick Didkovsky | guitar, vocals |
Yves Duboin | soprano sax |
Rob Henke | trumpet |
Michael Lytle | bass clarinet |
Marc Wagnon | MIDI vibraphone |
90 年発表の三作目「Did Spring Die ?」。
音源は、89 年ニッティング・ファクトリーでのライヴ録音と HSML で記述した作品より。
内容は、複雑に折れ曲がるリズムを多用し、サックス、ギターが狂熱的なプレイを繰り広げるアヴァンギャルド・ロック。
血を吐くように絶叫する管楽器と、金属的で痙攣するようなギター、そして刺し通すようなヴァイブの音が、変態的なリズムの上でからまりあう。
ライヴでのスピード感や強烈なノリには、メタルやパンクにも通じる激しさあり。
コンピュータ生成による作曲ものから怪奇な即興まで、あらゆるところに爆発的なエネルギーが満ち満ちている。
ちなみに、コンピュター生成による作品は、珍妙にして複雑怪奇なアンサンブルが特徴である。
HENRY COW から Recommended Record 系へとつながるアヴァンギャルド・インプロヴァイズド・ロックに、さらに HR/HM からパンクの要素までを叩き込んだ音楽である。
奇天烈で狂的な音にあふれてます。
「Computer Generated Piece No.1」(2:14)
「Out To Bomb Fresh Kings」(2:09)
「Mister Stiff Fries A Dozen」(3:06)
「Spy Boy」(3:00)
「Trash」(6:24)
「Sister Cancer Brother Dollar」(2:53)
「I Am Not Dumb Now」(4:13)
「Computer Generated Piece No.8」(2:06)
「Unna」(3:28)
「Spy Pie」(6:14)
「Computer Generated Piece No.2」(5:13)
(CUREIFORM 55002)
Greg Anderson | bass |
Leo Ciesa | drums |
Nick Didkovsky | guitar, vocals, claps |
Dave Douglas | trumpet, baritone thing, effects |
Yves Duboin | soprano sax |
Rob Henke | trumpet, vocals |
Michael Lytle | bass & contrabass clarinet, vocals |
Marc Wagnon | vibes, piano samples, claps |
91 年発表の四作目「Beta 14 ok」。
内容は、エネルギッシュでアグレッシヴなアヴァンギャルド・ロック。
やたらと込み入った変則リズム/パターンによるアンサンブル、パワフルな管楽器ソロ、絶叫アジテーションを一まとめにして叩きつける挑戦的な作風である。
管楽器ユニゾンのキレや打楽器の敏捷さ、ギターの鋭いフレージングなどきわめてテクニカルだが、激し過ぎる抑揚と音を飛び散らせるように目まぐるしい展開のために技巧の鑑賞どころではなくなり、ひたすらその爆発力に圧倒されてしまう。
また、HMSL 含め「作曲」行為そのものを洗い直すというきわめてアカデミックで実験的なスタンスにもかかわらず、出てくる音楽にパンキッシュでスットコドッコイなところが多いのも興味深い。
深刻さや生真面目さというものは、最先端を走るときの姿勢ではないのかもしれない。
ブラジルの Arrigo Barnabe の作風をパンクな方向へ偏らせた感じもある。
「NerveWare」と名づけられた 3 曲は、HMSL による作品。
また、ヴァイブのソロである「Fast Fouruer Fugue」は HMSL のアプローチを進展させ、演奏と同時に作曲するというよく分からない方法で作られているそうだ。
プロデュースは、ディドコフスキ。
(CUREIFORM RUNE 26)
Nick Didkovsky | guitar | Greg Anderson | bass |
Leo Ciesa | drums | Dave Douglas | trumpet |
Rob Henke | trumpet | Yves Duboin | soprano sax |
Michael Lytle | bass & contarabass clarinet | Marc Wagnon | vibraphone, samples |
95 年の五作目「Skin」。
内容は HM/HR 色を露骨に増強したアヴァンギャルド・ロック。
前作までの素っ頓狂でパワフル、パンキッシュなジャズロック路線から、ハードロックの方向に大きく舵を切り直している。
この禍々しき変化の源は、超弩級ディストーション・ギターである。
音数の多いリズム・セクションとフリー・ジャズ寄りの管楽器セクションによるたくましくも尖ったアンサンブルに、さらにこのギターの鉄槌が振り下ろされて爆発的なエネルギーを発している感じだ。
狂おしさは 100 倍、デンジャラスな血の臭いも 100倍 である。
また、ワグノンのヴァイブが音色的に非常にいいアクセントとして機能している。
レコメン HM の傑作。
プロデュースはディドコフスキ。
「Plague」(2:59)
HM ギターがたたみかけるリフと強烈なドラムスにブラスが鋭く飛び込む。
あたかも突き刺すような演奏である。
絶叫を絞り出すサックスとサスペンスフルなブラス・アンサンブル、ヴィブラフォン。
ブラスとギターがユニゾンで叫び続けて終わる。
「Every Screaming Ear」(0:18)
気違いじみた絶叫のみ。
狂信者のアジテーション。
「The shameful Strain」(4:53)
ブラスと生々しいベースのイントロから、バス・クラリネットやトランペット、ヴィブラフォンなどさまざまな音が散りばめられたあげく、ディストーション・ギターが轟音をぶちかます。
激しいリズム。
間抜けなブラスとギターのかけあい。
ギターのフィードバックとともに、ブラスやら何やらさまざまな楽器のロングトーンがからみあう。
断続的なドラムス・ビート。
ギターはさらにヘヴィ・メタリックに轟く。
ブラス・アンサンブルのクリアーなフレーズ。
突如音が消えてベースの連打が響く。
再びギターが轟き、ブラス・アンサンブルが走る。
最後は力強いブラスのユニゾンによるリフレイン、ギターの轟音がリフを刻み、コードを叩きつけて終わり。
「Preaching to the Converted」(5:19)
トランペットとギターのスタッカートの連続音から始まる。
ギターがおどろおどろしいメタル・リフを弾く上をトランペットが駆け抜け、サックスが吠える。
ギター・リフとトランペットのかけあい。
ギター・ソロは鮮やかだが完全にヘヴィ・メタル。
再びペットのワンノート連続。
完全に二層の音楽になっている。
下-ギター、ベース、ドラムス、上-ブラス。
最後はギターのソロが吠えまくるところへ、最初のワンノート連続が入って終わり。
9 拍子を交えたヘヴィ・メタル・ギター・インストゥルメンタル。
「Phones Where Your Tongue Is」(0:05)
何語かわからない言葉でしゃべる男の声だけ。
ラジオを通したようなイコライジング。
「Nerveware No.8」(2:37)
コンピュータで生成した作品のライヴ演奏。
ブラス、ヴァイブ、ギター、ベースが、短いフレーズを即興的に奏でて反応しあう。
会話性は高く、誰かの短いプレイに対して他の楽器が批判したり追従したりしながら進んでゆく。
リズム反復も一応あるが間が多い。
アンサンブルの面白さを追求したようであり、他の曲のほどアグレッシヴでノイジーではない。
原曲は「Did Spring Die?」に収録。
「Little Jonny Stinkypants」(6:50)
6 曲目に似た即興性の高い曲。
テーマは不在であり、すべての楽器が自由に音を出している。
バス・クラリネットとヴィブラフォンの音が鮮やかだ。
途中からスピーディなリズムが明確になり、ギター中心にヴァイブ、管楽器らが次第に加わり、アンサンブルが形作られてくる。
ギターのフレーズは、メロディとはいい難い。
大きく捻じ曲がってゆくロングトーンと奔放な音の跳躍というべきだろう。
ギターは多重録音されており、二本が微妙に絡む。
エネルギッシュなリズムで再び全員即興になり、パーカッションおよび息も絶え絶えなサックス・ソロの後、バス・クラリネットが一鳴りして終わり。
脈絡を断たれながらも、執念深く後味悪いドライヴ感があるアヴァンギャルド・ロック。
気持ち悪さでは一番。
「Don't Call Too Late My Husband's a Baker」(3:23)
ぐしゃぐしゃなギター・リフといつも通り元気なブラスがアップテンポでからみあうオープニング。
リズムは完全に不明。
サックスとヴァイブのスピーディなデュオからヴァイブのソロへ。
ここは 8 分の 5 拍子だ。
再びサックスが少し入り、トランペットが鳴って両者が絡み合う。
そしてギター登場。
三者は熱っぽく刺激しあい、8 ビートで激しく突き進む。
ストレートにしてジャジーなエネルギーを感じさせる演奏だ。
トランペットのプレイは、フラフラとした音の羅列。
「Beta 14 ok」(1:42)
ベースの複雑怪奇なフレーズにトランペットが絡むイントロ。
ギターによる凄まじいコード・カッティングが入り、ブラスのロングトーンのユニゾンへと進むも、再びカッティングが迫る。
せわしない展開だ。
最後もベースとトランペットがもつれてプッツリ終わる。
エッジがあり安易なノリを許さない無機的な演奏だ。
仄かなユーモアもあり。
「In His Feet Were Burned Because of Many Waters」(3:22)
プロローグとエピローグはフリー即興。
しかし中間は、比較的 8 ビートが明確であり、ギターの演奏でもメロディが聴き取れる。
ヴィブラフォンとのかけあいもある。
この作品も原曲は「Did Sprinting Die?」に収録されたコンピュータ生成の曲。
「Phones Where Your Guitar Is」(0:13)
ライブのようなギターのノイズのみ。
「I Kick My Hand」(3:32)
ギターのコマギレ・フレーズにドラムスがノって走り出す。
ギター、ドラムスともに爆発的に弾きまくる。
ブラスなしのタイトなギター・トリオ。
「Dead Silence」(5:23)
ギターによる分厚い電気雲サウンドにドラムスが加わりヘヴィなリズムを叩き出す。
ギター・リフも完全に HM である。
ブラスがパーッと鮮やかに飛び込む。
対照的にヴィブラフォンがおちついたビートを刻む。
再び HM ギターとブラスの応酬。
ソプラノ・サックスが絞り出すような音を立てる。
「Ironwood」(2:51)
音を若干電気処理したドラムス・ソロ。
固い音のスネア連打とブレイクを多くはさんだ演奏。
HMSL プログラミングによる作品。
「Take Your Ears as the Bones of Their Queen」(5:06)
これをメロディアスといっていいのだろうか。
ブラス、ギターとヴィブラフォンによる震えるようなアンサンブル。
トランペット、クラリネットのメロディをギターとヴィブラフォンで支える。
いつ爆発するか身構えてしまうが、意外にも淡々と進む演奏。
ヴィブラフォンのソロにギター、ブラスがそっと反応してくる。
ドラムス・ロールをきっかけにリズムが出現し、ブラスが一斉にブロウを始める。
HMSL プログラミングによる作品。
「Our Soldiers Are Soft Pianos」(5:06)
美しく幻惑的なギターとキーボードの調べ。
HMSL プログラミングによる作品。
原曲は、ガルシア・ロルカによる戯曲のための作品。
HM ギターと怒涛の如く突進するブラス群をフィーチュアした、変拍子アヴァンギャルド・ロック。
メタリックなギターと妙に人間臭いタッチのブラスが鮮烈なコントラストを成し、インタープレイはまさに一触即発。
リズム・セクションも、すさまじい重量感で迫る。
このインパクトだけでも、ジャズロックにメタル・ギターを突っ込むという試みは成功しているといっていいだろう。
ヴァイブの音が涼やかで際立っている。
ビート感覚、ノイズ、そして断片的なフレーズから構成される不思議の音楽。
通常のメロディ、ハーモニー、曲の脈絡はぶっ飛んでいる。
それでも、激しく突進する変拍子アンサンブルにノリがあるから凄い。
シャープなリズムとアグレッシヴな演奏に圧倒されつつも、入り組んだアンサンブルを読み取って楽しむ作品だろう。
ところで、コンピュータにランダマイズさせた譜面を演奏する試みは極めてモダンな試みだけれども、結局出てくる音楽がおもしろいかどうかがキーであり、手法そのものには大して意味はない。
こんなことをいうと頭が古いといわれそうだが。
(RUNE 70)
Nick Didkovsky | guitar, screaming ear, splintered voice |
Dave Douglas | trumpet |
Rob Henke | trumpet |
Yves Duboin | soprano sax |
Michael Lytle | bass clarinet |
Marc Wagnon | electric vibraphone |
Greg Anderson | bass |
Leo Ciesa | drums |
1997 年発表の六作目「Every Screaming Ear」。
ライヴ録音。
既出の作品プラス 2 曲の新曲を含む。
バンドによる演奏は、ドイツ、アメリカ、オランダでのライヴから収録されている。
内容は、素っ頓狂な絶叫と管楽器とヴァイブをフィーチュアした爆発的な器楽で構成される超屈折へヴィ・ロック。
フリー・ジャズのエネルギーをロックにぶち込んで早送りにしたような、コワレながら全力で走る痛快な作風である。
暴発する管楽器群とワグノンの超絶ヴァイブとの応酬も見もの。
複数のラインが複雑な拍子で絡み合うがリズムのキレはいい。
一方、発狂したミキシング・デッキがデタラメに再生しているような完全即興もあり。
最高潮の瞬間を取り出した編集のせいか短い作品が多いが、それだけに例外的に長めに取られている作品のクオリティが高い。
ライヴらしい生きの良さがビンビン伝わってきます。
加えて 3 つの競演作品がある。
他に室内楽アンサンブル NewEar による演奏は「Nerveware No.8」をアレンジしたもの。
ピアノを加えた管弦アンサンブルによる解釈であり、シリアスだが整った美感のある現代音楽である。一部にディドコフスキのギターがオーヴァー・ダビングされている。
「Preaching To The Converted」、「Beta 14 OK」は邦人グループとの競演。
前者は能管らしき音が加わった圧巻のヘビメタ。むちゃくちゃカッコいいです。後者はギターの変拍子リフと能管がこんがらがる現代音楽調 CRIMSON。
「When It Blows Its Stacks」はキャプテン・ビーフハートの作品であり、MERDIAN ARTS ENSEMBLE との競演。
(CUREIFORM RUNE 88)
Greg Anderson | bass | |
Leo Ciesa | drums | |
Nick Didkovsky | guitar | |
Yves Duboin | soprano sax, flute | |
Rob Henke | trumpet | |
Michael Lytle | bass clarinet | |
Kathleen Supove | keyboards | |
SIRIUS STRING QUARTET |
2000 年発表の七作目「Ereia」。
内容は、弦楽カルテット SIRIUS STRING QUARTET との共演した三楽章から成るアヴァンギャルド・ミュージック。
今回も破壊的な演奏ではあるが、逸脱感や素っ頓狂さよりも真面目なアカデミズムが強く感じられる。
4 曲から成る第一楽章は、バルトーク以降の現代音楽を思わせる演奏。
フーガ的なポリフォニックな弦楽奏が主役。
険しく美しい。
20 分を超える長大な一曲から成る第二楽章は、バンドも加わったアヴァンギャルドな大作。
管楽器とドラムスを中心に弦楽カルテットとアドホックにわたりあう衝撃的な演奏である。
フリージャズ、現代音楽、ロックといった区分はほぼ不要であり、「即興」をキーワードにそれらすべてが重なり、反発し、関連性をもってゆく。
モチーフには一、三楽章からのものもあるそうだ。
指揮された即興によるライヴ収録とのこと。
4 曲から成る第三楽章は、凶暴なノイズとパーカッシヴなプレイが組み上げられた巨大な構築物。
弦楽奏の準備したステージを轟音と衝撃で沸騰させる。
ギターも炸裂。
各章の内容が濃密であり、三つの楽章の性格も明快。
予想を裏切らない現代音楽としては、かなりの水準の作品ではないだろうか。
個人的には、三楽章 3 曲目「The Thorn Piercing His Coat」の HM/ジャズロック的な演奏が、全体を貫く現代音楽の色調において非常に新鮮だった。
6 分以降の 7 拍子のリフで弦楽器が過激に舞い踊り、ギターが突っ走る展開は痛快そのもの。
全曲ディドコフスキの作曲。
(CUREIFORM RUNE 126)