イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「Emerson Lake & Powell」。85 年結成。作品は一枚。ASIA 参加中のカール・パーマーに代わり、元 WHITE SNAKE のコジー・パウエルを迎えた、実質的な再編 EL&P。
Keith Emerson | keyboards |
Greg Lake | bass, guitar, lead vocals |
Cozy Powell | drums, percussion |
86 年発表のアルバム「Emerson Lake & Powell」。
「Works」、「Love Beach」のサウンドを意外なまでにほぼそのまま引き継ぎ、さらにややハードなタッチを強調した佳作である。
逆にいうと、79 年の時点でエマーソンはしっかり 80 年代のシンセサイザー・サウンドをつかんでいたようである。
「Love Beach」への酷評は早すぎたサウンドへの過剰反応だったのかもしれない(もちろん、メンバーのやる気のなさが露呈していなかったわけではないが)。
バラード系の作品でも、やや力みがちなレイクのヴォーカルをクールな 80 年代タッチで抑えていい感じに仕上げている。
「作品第二番」や「Love Beach」の曲も、この音で再演すると大分イメージアップするかもしれない。
そして、80 年代典型ハードポップ系の作風にもかかわらず、軽薄にならないのは、ヴォーカルとリズムの風格のおかげである。
ただし、キース・エマーソンが、ソウルフルなジャズ・オルガン・インプロヴィゼーションをガマンして、Hall & Oates のようなフレーズを放っているところを想像すると、微笑ましいと同時に、爆発的な演奏力をもつ鬼才だけに少し気の毒な気もする。
相当ストレスが溜まったのではないだろうか。
また、ドラミングも 80 年代らしいシンプルなプレイだが、さすがは名手、音数に関係なく力強く安定したビートを送り込んでいる。
最終曲はホルストの「惑星」から「火星」を取り上げたインストゥルメンタル大作。
86 年でこういう試みを行ってしまう勇気に感動しました。
(POLYDOR P33P 20045)