フィンランドのピアニスト・作曲家「Esa Helasvuo」。45 年生まれ。 リーダー作は四枚。
Esa Helasvuo | piano, choir on 7 |
Edward Vesala | drums, percussion |
strings section |
77 年発表のアルバム「Q」。
内容は、ピアノ、ドラムス、弦楽セクションという一風変わった編成による室内楽風ジャズ。
歌心のあるピアノの調べを大胆なドラミングと俊敏にして豊かな音色の弦楽奏が彩ってゆく芸風である。
クラシックやロックをジャズに接近させたポピュラー音楽の地平を広げる試みの一つであり、優しげで暖かな包容力とジャンルを無視する際どいスリルが共存したユニークな音世界である。
M.J.Q の名作のような映画音楽をイメージした高尚なジャズの作風とも異なる、よりラフで素朴なクラシックへのアプローチは極めてロック的であり、もっといえばプログレ的なのだ。
ピアノの提示するテーマは、イージー・リスニングやラウンジ・ミュージックのようなメロディアスなキャッチーさをアピールしながらも、その基点にラベルやドビュッシーといった近現代音楽を強く感じさせる。
ドライヴ感あるオスティナートにはブルーズ・ロック的なへヴィさやハードロックのスリルもあるが、同時にベートーベンのような重厚さもある。
また、打楽器に主張があり、リズム・パターンも大胆極まる。
クラシックのテーマがストレートに翻案されて織り込まれているところもある。
ピアノとドラムスとのデュオでは両者の絶妙の呼吸のやり取りが次第にロマンティックな情景描写へと昇華してゆき息を呑む。
ピアノがようやくモダン/フリー・ジャズらしさを演じ始めるのは 3 曲目からだが、そこでも弦楽セクションとの化学反応がインプロヴィゼーションに構築性を与え、さらにコンパクトなテーマを一振りすることで、華やかなポップスとしてのダンスを見せている。
4 曲目のようなモダン・ジャズにもリズムなどに鋭敏な感性が光る。
7 曲目は弦楽奏をパートナーにした大胆で奔放なダンスのように楽しい作品。
9 曲目はフリージャズとストラヴィンスキーの合体技か?
フュージョンとは異なる突破口からフリージャズを脱出してコンテンポラリー・ジャズのスタイルを示す意欲的なアルバムだと思う。
何より、ワクワクするような楽しさのある作品です。
「Pertin Hiihtoreissu」(5:54)
「Ornitologit」(3:35)
「Num (Name Of A Bird)」(5:21)
「Petting」(3:31)
「1'47"」(1:47)
「Boa Noiti Meu Amor」(5:07)
「Rag Espoo」(4:11)
「Nolla」(2:25)
「Sun And Mun」(5:33)
「Auringon Laskun Aikaan 」(3:53)
(LRLP 201 / LRCD 201)