フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「EVIDENCE」。92 年結成。99 年解散。作品は一枚。 ヴォーカリストは DEMIAN CLAV で活動中。
S. Dephts | bass, vocals |
LSK | vocals, guitar, keyboards |
G. Viederland | vocals, programming, piano, electric piano |
St Nadji Warwick | keyboards, programming, guitar |
Denis Charro | harpsichord |
Patrick Merieau | violin |
Baptiste Breton | keyboards, programming |
96 年発表のアルバム「Heart's Grave」。
モダン・ゴシック調からバロック音楽、現代音楽、内省的なフォーク調までにわたる幅広い音楽性を陰鬱な色合いで統一したロック・オペラ。
主役はヴォーカリストである。
多彩な声色や宗教的な厳かさ、狂気を秘めた切迫感など、VdGG(またはピーター・ハミルのソロ作品)や PINK FLOYD(特にロジャー・ウォーターズ)の影響を受けたと思われる、暗く苦悩に沈み、突如高揚し爆発する躁鬱、神経症的な調子が特徴。
暗く沈んだヴォーカルに低音の弦楽器(チェロやコントラバス)の音がよく合う。
キーボードもハーモニウムやオルガンの厳かな響きもほの暗い聖堂の伽藍をイメージさせるものだし、打ち込みらしき打楽器は雷鳴のように轟くティンパニである。
本家そのもののようにアコースティック・ギターの弾き語りにヴァイオリンが寄り添うような繊細な表現が多いが、へヴィなオルガンやギターを伴ったバンドとしてのノリもある。
爆音や雷鳴、嵐のような効果音も多用される。
一方、弾き語り風の作品には、ひと時精神の闇に注いだ日差しのように暖かみや救済の響きがある。
色調は統一しながらも、ロックをコアとした音楽的なバラエティの広さもキープして物語を編んでいるところがすばらしい。
基本的な作風は、ピーター・ハミルやデヴィッド・ボウイらがすでに 70 年代に打ち出していた路線だが、インダストリアルで無機的なタッチが交わるところが現代的である。
(ウォーターズ風に聴こえる最大の理由は、70 年代最終盤にインダストリアルなサウンドを盛り込み 80 年代を先導した「The Wall」のためだと思う)
そして、曲ごとの表情の変化がきちんとドラマを構成していて、最終曲に流れ込んだときに自然な感動が湧きあがるようになっている。
目立たない作品だが、愛聴できる逸品です。
フランスのグループにしては珍しくリード・ヴォーカルは英語。
本作品は、ピーター・ハミルに捧げられている。
「Act I: «I Have Waited Worlds to See ...» 」(6:28)
「Act II: «This Sound Remaining Free ...» 」(4:13)
「Act III: «A Pagan Celebration» «Is This My Voice?»」(4:30)
「Act IV: «One More Introduction ...»」(5:03)
「Act V: «Here Is Forever ...»」(2:41)
「Act VI: «Slowly He Returns to Me ...»」(2:29)
「Act VII: «I Look Around and Ask Myself»」(6:11)
「Act VIII: «I'll Say with You ...» «This Is the Only Name ...»」(7:36)
「Act IX: «Who's Been Converted to Whom?»」(6:47)
「Act X: «Resurrect This Trembling Voice ...»」(4:12)
「Act XI: «I'll Still Be Standing ...»」(4:14)
「Act XII: «Clutching at All These Frightful Plinths ...»」(8:49)
(APM 9616 AT)