イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「I GIGANTI」。 60 年代に活躍したポップ・グループ。 71 年にプロジェクトとして再編し、マフィアをテーマにした高度な作品を一枚残す。
Enrico Maria Papes | drums |
Sergio Di Martino | bass, guitar |
Francesco Marsella | organ, piano, Mellotron, vocals |
Giacomo Di Martino | guitar |
guest: | |
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Ellade Bandini | drums |
Ares Tavorazzi | bass, guitar (AREA) |
Vince Tempera | organ, piano |
Marcello Dellacasa | guitar (LATTE E MIELE) |
71 年発表のアルバム「Terra In Bocca - poesia di un delitto」。
拘留されたマフィアの元構成員へのインタビューに基づく、「犯罪」を描くトータル・アルバム。
おそらくはタブーを打ち破る、画期的な内容なのだろう。
(あるいは、マリオ・プーゾの著名な作品の影響があるのかもしれない。個人的には、チャールズ・ブロンソンの「バラキ」を思い出す内容だ)
IL VOLO のヴィンチェ・テンペラらが中心となっており、I GIGANTI の作品というよりは、一種のプロジェクト作品である。
各曲には曲調/速度を現す音楽用語の入ったタイトルがついており、全体を音楽劇のようにまとめあげているようだ。
サウンドは、フォーク・タッチの伸びやかなヴォーカル・ハーモニーを中心に、エレキギターとキーボードで重厚かつ荒々しいアレンジを施した、典型的イタリアン・プログレッシヴ・ロックである。
そして、ここでも演奏の肝となり音楽をイメージを形つくっているのは、キーボード。
プログレ・ファン垂涎のメロトロンを筆頭に、モダン・クラシック風のアヴァンギャルドなピアノやオルガンなど、歌の伴奏からオブリガート、間奏、ソロまで、あらゆるところにキーボードが用いられている。
また、突如電子音とともに曲が引き千切られたり、テンポや曲調が過激に急旋回するのも、この時代ならでは。
もっとも、キーボードを中心に前衛的な効果を狙ったパート以外、特にヴォーカル・パートは、むしろオーソドックスといってもいいくらいフォーク・ロックやブルーズ・ロック調である。
メロディも、ポップスといっていい聴きやすさだ。
おまけに、主題のせいではないだろうが、ワイルドな調子になったときのヴォーカルが、どことなくチンピラ風である。
このポップとアヴァンギャルドのさじ加減も、イタリアン・ロックの面白さといえるだろう。
ストーリーは、モデルとなった男や少年、女性のモノローグも交えつつ、複数のヴォーカルによる哀愁あるテーマを軸に展開してゆく。
そして、マイナーなメロディに込められた哀しみが、転調とともに輝くように柔和な面持ちを見せたり、たゆとうとうな歌がテンポ・アップとともにフェスティヴな力強さをあらわすなど、目まぐるしささえある曲調の変化が、じつにおもしろい。
全体に、アコースティックで土臭いカンツォーネと幻想的なインストゥルメンタルがバランスよく配され、情熱と哀感に満ちた音をつくっている。
また、ドタバタしたリズム・セクションやひずんだギターといった、イタリアン・ロックに共通する独特の攻撃性/垢抜けなさ(もっともこの野暮ったさ込みで愛してしまうのが真のファンかもしれないのだが)を、透明感のある甘目のヴォーカル・ハーモニーと幽玄なるメロトロンの響きが払拭し、格段と詩的な深みをもたらしている。
やはり朗々と歌い上げるヴォーカルの魅力は強い、と改めて感じた。
メロトロンは、フルート、コーラス、ストリングスとさまざまな音で、全編駆使されている。
KING の日本盤と AKARMA からの紙ジャケット盤がオリジナル・テイクを用いており、イタリアからの再発盤は別テイクを用いている。
作曲はヴィンチェ・テンペラ。
「Largo Iniziale」(3:28)アヴァンギャルドなピアノからヘヴィなギターのテーマ、サスペンスフルな全体演奏などさまざまな変転を経て、シンフォニックな調子へとまとまるインストゥルメンタル。
聴き手を惹きつける格好の序章である。
クレジットにはないが、初期のシンセサイザーが用いられている模様。
「Molto Largo」(2:13)
「God Father」を思い出させるシチリア民謡風の歌もの。
ここでも演奏の決め手は、後半続くクラシカルなピアノ、シンセサイザー、メロトロン。
歌メロは、有名な旋律なのかもしれない。
「Avanti」(3:42)
パストラルなヴォーカル・ハーモニー、謎めいた低音ヴォーカル、熱狂的なシャウトそして再びスウィートなハーモニーへと、ミュージカル風の流れを見せる作品。
メロトロン、トーンをコントロールしたオルガンが、随所に用いられている。
ヴァイブもあり。
終盤のギター・ソロの野暮ったさに苦笑。
「Avanti Tutto-Bruto Momento-Plim Plim」(4:33)
複数のヴォーカルとハードロック調のギターが交錯するオープニングから、めまぐるしく曲調が変化する。
テンポの緩急が効果的。
映画音楽調のメイン・ハーモニーを支えるのは、メロトロン・ストリングス。
中間部のユーモラスなコーラスを支えるのは、メロトロン・フルート。
終盤ストリングスが荒々しく高鳴りモノローグがオーヴァーラップすると、かなりヤバげな感じになる。
「Plim Plim Al Parossismo-Delicato Andante」(3:13)
ピアノ伴奏によるスロー・バラード。
メロディは 2 曲目のもの。
甘いギター弾き語りへと変化するも、再びピアノが加わり、なかなか複雑な和声の響きを交えつつジャジーな演奏へと進んでゆく。
終盤、突如電子音とともに曲が引きちぎられる。
ヴォーカルこそ何気ないが、かなり凝った音作りである。
「Rumori-Fine Incombente」(6:12)オルガン、ピアノ、ギターをフィーチュアしたメロディアスなヘヴィ・シンフォニック作品。
ビート・グループとして英国のサウンドを消化し、ラテン的感性を活かしきった、イタリアン・ロックらしい作品である。
メロディ・ライン、伸びやかな歌唱と甘めのハーモニーこそイタリア風だが、多彩な器楽による重厚さとポップにして大胆なアレンジには、やはり初期の英国ロックの影響があることが改めて分かる。
終盤のメロトロン・フルート、ピアノ伴奏の歌がいい。
NEW TROLLS らとも遜色ない名曲。
「Fine Lontana-Allegro Per Niente」(6:04)
巻き舌の荒々しいヴォーカルをフィーチュアしたワイルドなナンバー。
メロトロン、オルガンに加えて、エネルギッシュなアコースティック・ギターのプレイもあり。
哀感あふれるピアノによる間奏をテープ操作で断ち切る大技、ピアノ、メロトロン・フルートによるインプロ合戦など、過激に迫る。終盤は、ピアノのリードで熱っぽい全体演奏。
最後に三度 2 曲目のテーマが現れる。
「Tanto Va La Gatta Al Largo-Su E Giu」(7:44)
荒々しいヴォーカルを中心にストレートに盛り上がってゆくオペラ・ロック。
メロトロン・ストリングス、ピアノが付き従う挽歌風の序章が、次第に高まりを見せる。
「Alba Di Note-Rimbalzello Triste」(1:27)
「Rimbalzello Compiacente-Ossessivo Ma Non Troppo-Fine」(3:25)
「Sogno Di Un Vegetale」(2:50)ボーナス・トラック。
(AK 1023)