フィンランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「HARVEST/ELONKORJUU」。69 年結成。作品は二枚。世界進出を目指してジャジーな二作目を「HARVEST」名義で発表した。
Jari Perkiömäki | alto saxophone, clarinet |
Veli-Pekka Pessi | bass |
Veikko Noutio | drums |
Jukka Syrenius | guitars |
Pekka Tyni | keyboards |
Vesa Aaltonen | percussion |
Jukka Unkila | tenor sax |
Simo Salminen | trumpet, flugelhorn |
78 年発表の第二作「Flyin' High, Runnin' Fast」。
内容は、ブルーズ・フィーリングにあふれつつも洗練されたジャズロック。
英米の 70 年代終盤の音とシンクロしたジャジーな AOR 調、またややブルーアイドソウル風のタッチも香る、余裕のある演奏に、アコースティックなローカル色も交え、ジャズに傾きすぎないようにギターが出張ってロック寄りに引き戻してまとめたスタイルである。
軽快で歯切れのいいギター・プレイ、メローなエレクトリック・ピアノ、つややかなサックス、パンチのあるブラス・セクションらが、豊かな音でしっかりと主張しつつも明朗で健康的なメロディで一つにまとまっている。
思い切りブラス・ロック寄りになることもある。
それでも演奏をリードするのは加熱しすぎて饒舌気味になってしまうのもご愛嬌なギターだろう。
エレクトリック・ピアノはそのギターの熱を抑えてしっとりと落ちつきを取り戻す役である。
フリューゲル・ホーン、サックスは、ジャズというよりも、とにかくメロディアスで官能的なプレイで音楽の艶出しに貢献している。
北欧ものらしい哀愁と乾いた アーバン R&B テイストのブレンドが冴える極上の一品といえるだろう。
都会的というと陳腐ではあるが、夕暮れの透き通った空気の中をにこやかに通りすぎる仕事帰りの女の子たちとすれ違うと今日のデートへの期待で自然に胸が高鳴ってしまう(何を言っているんだ)、そんな時間のそんな気持ちを思い出させてくれる音なのは間違いない。
実力通りの安定感ある演奏に、洒脱すぎずどこかにはにかむような素振りがあるところがいい。
78 年ごろに下北沢か石川町あたりを散歩していて聴こえてきても、まったく違和感のない音である。
ギターと呼吸よくからむムーグ・シンセサイザーのサウンド/プレイもカッコいい。
テーマを担っても大仰にならず小粋な管楽器風にプレイできるところは、アナログ・シンセサイザーが優れているだけではなく、プレイヤーのセンスの賜物だろう。
また、アコースティックな作品では、北欧調の黄昏感を、明るいユーモアとさりげないバカテクで彩ってこれまたセンスの良さを披露している。
本アルバムの一番の特徴は、パフォーマンスはテクニカルだがどこまでも暖かみがあり楽しげなところである。
典型的といっていいスタイルに依拠しながらも、マスプロっぽい胡散臭さは微塵もなく、誰もをニヤッと破顔させてしまう佳作。
ジャズロック、フュージョン・ファンにはお薦め。
全編インストゥルメンタル。
プロデュースはヴェサ・アルトネン。
鍵盤奏者は、名ギタリスト、セッポ・タイニの兄らしい。
「Let It Grow」(7:17)明朗快活なるジャズロック。開放感、というかヌケのいいテーマが魅力。
「That's Why I Love You」(5:55)メローなフュージョン。
「Peter And The Ram (Pekka Ja Passi)」(4:57)クラシカルかつトラッドなアコースティック・アンサンブル。クラリネットも参加。この作品のおかげでアルバムに幅が出ている。シンセサイザーによるアクセントもみごと。
「Flyin' High Runnin' Fast」(5:32)ブラスをフィーチュアした、ほんのりスパニッシュなゴキゲン系ジャズロック。後期の RETURN TO FOREVER か。
「Ain't It Sweet」(6:06)銀座の夜遊びから江ノ島まで車を飛ばして戻ってきた感じのビッグバンド風ジャズロック。キレキレ・ユニゾンのブラス・セクションをフィーチュア。ソフト・タッチではあるが、銀座のホールの名残か若干だけファンクなグルーヴの効きが強め。ただし、エレクトリック・ピアノのメローな響きで気品を保つ。硬軟の対比の妙をつけて延々続けられる。
「An Empty Town」(4:40)STEELY DAN も見えてきそうなアーバン・ナイト AOR 系ジャズロック。ただし NY でも LA でもない何処か。このギターはギター小僧をくすぐる。ムーグとのかけあいもベタだが Good。
(PL 40112 / ROK-046)