イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「IL ROVESCIO DELLA MEDAGLIA」。70 年結成。初期三作が有名。 リズム・チェンジの多いハードなサウンド。グループ名は「コインの裏側」の意。
Enzo Vita | guitars |
Pino Ballarini | vocals, flute |
Stefano Urso | bass |
Gino Campoli | drums |
71 年発表のアルバム「La Bibbia」。
内容は、EXPERIENCE や CREAM、 JEFF BECK GROUP らのへヴィなサウンドとクラシックの影響を強く受けたニューロックあるいはハードロック。
ファズ・ギターと爆発的手数のドラミングによって、終始けたたましくうねりのあるサウンドで迫ってくる。
シンプルなリフで突進するのに加え、ギター、ベースともに随所にパガニーニばりのクラシカルなフレーズを使用し、急激なリズム・チェンジをしかけてくる。
そして、へヴィなサウンドを活かしつつ、陰と陽を切り分けた雰囲気作りが巧みであり、サイケデリック・ロック的なフリーフォームの空間(序曲と終曲)やフォーク風の内省的な表現も大胆かつ効果的にはめ込んでいる。
エレクトリックなノイズを駆使する表現など、プログレッシヴな感性がバンドの隅々にいき渡っていると思う。
余談。
LED ZEPPLELIN への意識も強そうだが、ZEPPELIN の特徴である英国トラッド調はここではイタリアン・ロックらしい田園フォーク、田舎のお祭り調に置き換えられ、オペラティックなクラシックへの志向が強いため、大胆な音楽的アイデアという共通項はあるにせよ、編成とレスポールのサウンドほどには似ていない。
演奏をリードする一人はジミ・ヘンドリクスとジェフ・ベックからの流れを汲んでいるであろうギタリストのプレイ。
酸味の効いたリフで自信たっぷりにグイグイと押し捲り、かなり無茶なアドリヴをぶっ放す。
ヴォーカリストは標準以上の声質、声量の持ち主。
OSANNA のリノ・ヴァイレッティには一歩譲るものの、ワイルドなシャウトと美声を活かした伸びやかかつ妖しい歌唱がともに決まる。
特に、呪術的な、妖しい節回しはいい感じだ。
フルートは効果音的な使い方をしている。
ベーシストは、オーソドックスながらもギター顔負けの音量とフレーズで飛び出してくる。(次作ではファズを駆使して前面に出てくる。本作のプレイはその予兆だ)
ドラマーは手数と突進力がすさまじいが、ティンパニ(ジャケット写真ではヴォーカリストがマレットを持っているが)を用いたり、ジャジーなプレイをはさむなど多彩な表現も試みている。
演奏は、4 曲目に代表されるように万事性急であり、勢い任せに疾走したかと思えば急旋回を見せる。
個人プレイよりもバンド全体の勢いや重さを活かしてハードに迫り、変拍子も使ったぶっ飛んだ表現をぶつけつつ、イタリアン・ロックらしいフォーキーな素朴さでまとめるスタイルである。
ヴォーカルはイタリア語。
「Il Nulla」(4:54)何がなんだか分かりませんが、ミステリアスな演出の序曲としてはいい。
「La Creazione」(5:17)ジャキジャキしたギターが暴れ、ヴォカリーズはロマンと空しさで胸がはち切れそう。やたらとベースが目立つ。
「L'ammonimento」(5:19)フルートがイタリアン・ロックらしい田園風味で彩る。
「Sodoma E Gomorra」(4:51)
「Il Giudizio」(10:15)
「Il Diluvio」(2:14)
(RCA PSL 10521 / ND 74112)
Stefano Urso | bass |
Gino Campoli | drums |
Enzo Vita | guitars |
Pino Ballarini | vocals, flute |
72 年発表のアルバム「Io Come Io」。
内容は、歪みきったベースとギターが無機的なリフでのたくり、ヴォーカルが絶叫を突き上げるきわめてラフなハードロック・ジャム。
凶暴に攻め込むばかりではなく、ソウルフルな艶っぽさや乾いた哀愁を漂わしたり、フリーフォームのパートなども設けつつ、サイケデリックな浮遊感や酩酊感を演出する。
ワイルドにして小気味のいいギターのプレイや、ピシリと決まるドラムスのプレイなどそれぞれにキレのよさを見せ、狂おしいヴォーカルとの相性もいい。
ただし、ジャム・セッションらしく展開に限界もあるようで、実際本アルバムは収録時間が 30 分に満たない。
薬漬けになっているのか、アブストラクトで先行きが見えない危うさが魅力といえば魅力である。
ジャケット写真は、再発 CD のもの。オリジナル LP には中央部にメダルがついていたようだ。
演奏者はクレジットがないため、インターネットからの情報である。
「Io」(6:36)ギターとベースでゴリゴリウネウネ突き進み、虚脱したようなヴォーカルが突拍子もなくハイトーンを張り上げる怪しさ満載のヘヴィ・チューン。
「Fenomeno」(9:04)急激な変化に富む佳作。
「Proiezione」
「Rappresentazione」
「Non Io」(6:12)ほとんど無音の 2 分を経て唐突に叩きつけられるキメ、そして再び男臭いバラードへ。
「Io Come Io」(7:03)不安感に満ちたアヴァンギャルドなハードロック。クラシカルなモチーフもあるようだが、けたたましいギターが情感を一掃している。
「Divenire」
「Logica」
(PSL 10545 / 74321-22082-2)
Stefano Urso | bass |
Gino Campoli | drums |
Daniela Boccadoro | guitars |
Enzo Vita | guitars |
Franco Di Sabbatino | keyboards |
Pino Ballarini | vocals, percussion |
73 年発表のアルバム「Contaminazione」。
内容は、バッハの平均率クラヴィーア曲や無伴奏チェロ曲などのテーマをモチーフとしたヘヴィ・ロック作品。
鍵盤奏者が加入し、オルガンとピアノでクラシカルにジャジーに悠然たる秩序を音楽にもたらし、大きな存在感を放っている。
そして、フル管弦楽とも共演し、爆発力あるギターと轟音ベースのヘヴィなロック・サウンドに唐突過ぎるチェンバロのソロや弦楽奏が飛び込んでくる。
前二作までのアブストラクトでサイケデリックなセンスも大いに生かしてぶっ飛んだところも見せるが、NEW TROLLS ばりの流麗華美なストリングスの響きと情熱的な美声ヴォーカルによるハーレクイン・ロマンス調が圧倒的である。
ヴォーカル表現はハードロックの文脈を大きく踏み出て、ラヴ・ロック調バラードや賛美歌モードに入っている。
全体的に、やや強引に管弦で感動大盛り上がりに持ち込もう感が強いが、ヤクザなバンド・サウンドとクラシカルなアレンジのマッチングは悪くない。(元々現代音楽的な素養があったような気がする)
トーキング・フルートで台無しにする辺りも大胆でいい。
作曲は、バンドからはギタリストのエンゾー・ヴィタが参加しているがバカロフ含め外部の作曲家を使っている。
プロデュースは、ルイス・エンリケ・バカロフ。
英語盤も製作された。
「Absent For This Consumed World」(0:57)
「Ora Non Ricordo Più」(1:44)
「Il Suono Del Silenzio」(5:07)
「Mi Sono Svegliato E.. Ho Chiuso Gli Occhi」(4:11)
「Lei Sei Tu: Lei」(1:59)
「La Mia Musica」(3:57)
「Johann」(1:20)
「Scotland Machine」(3:01)
「Cella 503」(3:12)
「Contaminazione 1760」(1:03)
「Alzo Un Muro Elettrico」(2:47)
「Sweet Suite」(2:13)
「La Grande Fuga」(3:32)
(DPSL 10593 / ND 74511)