イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「IL TRONO DEI RICORDI」。 作品は 93 年の EP を含め二枚。
Alessandro Lamuraglia | keyboards |
Erik Landley | bass, sax |
Stefano Cupertino | electronics and effects |
Paolo Lamuraglia | guitars |
Alberto "The Wizard" Mugnaini | vocals |
guest: | |
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Fabrizio Morganti | drums |
Fransesco Bocciardi | bouzouki on 1 |
94 年発表のアルバム「Il Trono Dei Ricordi」。
内容は、GENESIS、EL&P 影響下のシンフォニックなネオ・プログレッシヴ・ロック。
演奏は抜群にうまいし安定感もある。時々シンセサイザーの音がチープになるかなと思うくらいで、サウンド面にも文句はない。
クラシカルな重厚さ、厳粛さをイメージさせ、胸躍るような高揚感を抱かせる演出もいい。
キーボードを中心にしたアンサンブルにも組み合わせの妙があり、旋律を中心にしてカッコいいプレイが自然と聴こえてくる作りになっている。
ギターがへヴィなリフを刻むとチャーチ・オルガンが待ってましたとばかりに重厚に唸りを上げ、ムーグがラッパのように高らかに響く、こういうクラシカルな展開がバッチリ決まっている。
同時に、融通無碍にジャズに傾いたり、進むばかりでなく少し澱んでみたり、といったアヴァンギャルドな表現法も交えている。
まさに、クラシカルなシンフォニック・プログレとして文句のつけようがないクオリティである。
泣きのメロディック・マイナー調や BLACK SABBATH 風のリフから HM/HR っぽさが出てくるところもあるが、落ちつきあるリズムでオルガン(キース・エマーソン流)やムーグ、ピアノの本格的なプレイが切り込むために、決してシンフォニック・ロックの国から旅立ってしまうことはない。
ギターはむやみな速弾きソロや邪悪なリフで悪目立ちすることはなく、太い音色で説得力あるリフを決めたり、オブリガートで印象的に食い込んでくる。
ヴォーカルはハードロック的なシャウトよりも、R&B がベースにあるような弾力的で伸びやかな表現を得意としている。
EL&P の勇壮さとルーズさ、GENESIS の優美かつ精緻なクラシカル・テイストといった演出を語法として取り入れつつ、独自のクラシック志向、ジャズ志向、HM/HR 志向も磨いて長大な楽曲にまとめ上げた力作である。
歌詞は、ウィリアム・ブレイクの詩から採られている。
ヴォーカルは英語。ややクセがあるので、慣れられるかどうか。
プロデュースは、ケン・ゴールデンとマルコ・メルツィ。
「The King Of Memories」(19:59)重厚でドラマティックな大作。PINK FLOYD も少しあり。終盤のアコースティックな音を使った童謡風の演出が印象的。大波とともに小刻みな変化も繰り返され、最後まで引きずりまわされる。
「A Memorable Fancy」(4:14)オープニングから、テーマは完全に「A Tower Struck Down」。
「On The Rising Sun」(13:34)
「Visions Of The Daughters Of Albion」(18:03)
(TL 2003)