ポーランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「INDUKTI」。 作品は二枚。最新作は 2009 年発表の「Idmen」。 へヴィでスタイリッシュな北欧風のプログレッシヴ・ロック。
Ewa Jablonska | violin |
Piotr Kocimski | guitar |
Maciej Jaskiewicz | guitar |
Macik Adamczyk | bass |
Wawrzyniec Dramowicz | drums |
guest: | |
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Marius Duda | vocals (RIVERSIDE) |
Anna Faber | harp |
2004 年発表のアルバム「S.U.S.A.R.」。
内容は、ギターをフィーチュアした超硬質なへヴィ・ロック。
重機が高速回転しているような超重ギター・リフとヴァイオリンのユニゾンにディストーションで歪み切ったベースが噛みつき、爆撃のように地表を波打たせるドラミングとともに驀進する。
KING CRIMSON から RADIOHEAD までの英国ギター・ロック王道とシアトル・グランジ系、コンテンポラリーな HR/HM スタイルを融合して、きわめてクラシカルな表現や東欧/中央アジア風のエキゾチズムも大いに盛り込み、芸術的にまとめた作品である。
全編ギターが唸りを上げて突き進む破壊力抜群の演奏にもかかわらず、HR/HM とは異なる、と直感的に思えるのは、ギターの凶暴な咆哮の奥底に「Larks」KING CRIMSON の姿や英国ロック風のスタイリッシュなものが透けて見えるからである。
そして、KING CRIMSON のアプローチを推し進める方向に、本家のようなエキセントリックな抽象性/無機性とは異なるものがある。
それは、か弱くも荒ぶり猛る魂の咆哮、重度のメランコリー、カンダタの蜘蛛の糸のように精神に差し伸べられたつかの間の平安といったエモーショナル過ぎるほどにエモーショナルなファクターである。
要は、初期の ANEKDOTEN に近い、真摯で懸命な姿勢が感じられるのだ。
猛り狂う、ヒリヒリと痛むような表現と薄暗く深い叙情性とくれば、これはもうプログレといわざるを得ない。
ヴァイオリンのほかにも優美なハープやアコースティック・ギターも加わっており、緩やかにたゆとう調べと妙なる和音が轟くギター・サウンドとの鮮やかなるコントラストを構成している。
CRIMSON 風のメタルといってしまうと元も子もないが、英国モダン・ロック(個人的には RIDE を思い出した、古すぎか?)のメランコリックでシリアスなテイストと、デジタルにシェイプアップされたクリアーでスリムな感じが新鮮だ。
ヴォーカルは英語。
「freder」(7:30)大いなるインパクトをもつ序曲。なんというか「ぶっちぎり」です。インストゥルメンタル。
「cold inside... I」(4:06)何気ない変拍子バラード。エモーショナルなヴォーカルに痺れる。
「no.11812」(8:00)魔女の誘惑のようなハープに導かれるスリリングかつ幻想的なインストゥルメンタル。和声の展開は KING CRIMSON を意識している。
「shade」(4:29)パーカッションを活かした謎めいた、エキゾティックな作品。
「uluru」(6:34)1 曲目と共通する、パワーコード驀進チューン。ヴァイオリンも参戦。インストゥルメンタル。掌を返すようなハープ、ヴァイオリンに息を呑む。硬軟の幅の分、1 曲目よりも広がりがある。
「no.11811」(7:25)変拍子でポリリズミックなアンサンブルをアラビアンなヴァイオリンの絶叫が取り巻く、重金属デジタル・ロック。インストゥルメンタル。
80'CRIMSON の強力な変奏である。
「and weak II」(9:37)重層的なアルペジオとヴァイオリンの調べ。4 分半辺りの高揚は、「Red」の世界の再来である。
「mantra」マルチメディア・ボーナス・トラック。
(LE1042)