スロヴェニアのプログレッシヴ・ロック・グループ「IZVIR」。71 年結成。78 年解散。作品は一枚。
Marko Bitenc | vocals, percussion |
Andrej Konjajev | keyboards |
Franc Opeka | guitar |
Davorin Petrič | guitar |
Andrej Petković | drums |
Marjan Lebar | bass |
guest: | |
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Mitja Bavcon | flute, guitar on 1 |
Slavko Lebar | guitar on 6 |
77 年発表のアルバム「Izvir」。
内容は熱いヴォーカルをフィーチュアしたジャジーでファンタジックなプログレッシヴ・ロック。
オーソドックスなクロスオーヴァー、フュージョン風のテクニカルなプレイを組み上げたアンサンブルながらも、ラウドなロックンロールを基本にした上でドリーミーで叙情的なタッチもキープする作風である。
もちろん、プログレ的なドラマ性、緊張感とスリル、精緻な音の構築に伴うきりきりと神経質に尖った調子もあり。
そういう意味では YES 的だが、全体的な濃さが違う。YES が水彩画ならこちらは油絵である。
ヴォーカルの調子やギターのソロなどかなり普通のロックンロール、ハードロックな面が強い一方、攻撃的で小刻みなリズムやスペイシーで扇情的な鍵盤楽器のおかげで、独特な熱っぽさが出ていて、また、スローな牧歌調、叙景的なところではナイーヴなセンスが目一杯発揮されている。
DOORS を越えてラテン・ジャズっぽさすらあるオルガン・ソロは完全に 69 年くらいのノリである。
(一方 Hohner のクラヴィネットが多用されるところは完全に「同時代」)
そう、ハードロックにエキゾチズムを持ち込むという意味で、ラテン・ロックのような「地元、土着」のニュアンスもある。
(イギリスの固有のエキゾチズム、ローカリズムをロックに持ち込んだのが、ブルーズ・ロックであり、ハードロックである、といってもいいだろう、余談)
ハードな音と叙情性ということで、CAMEL を思い出しても正解だろう。
独特の力強くもバタバタした、手数のわりには専門ではなさそうなドラミング(「蒼き風」のヤン・ハマー的な)もジャズロック的な文脈では個性となる。
この辺りの音に特有な、若干欧米よりも遅れているポップス・シーンと従来からのモダン・ジャズの素養の高さがブレンドした、テクニカルでプログレッシヴにしてどこか古めかしいという味わいが本作品でも感じられる。
最大の聴きものは、1 曲目の大作と 6 曲目。
ヴォーカルはスロヴァニア語らしきローカル言語(ニュアンスは MODRY EFEKT のヴォーカルに似る)なので、エキゾチズムに弱い辺境ファンには欠かせないと思う。
元同じ国だった INDEXI にも通じる。
プロデュースはラデン・ヴコヴィック。
2014 年の再発 CD にはボーナス・トラック二曲付き。
「Šel Je / Popotnik Skozi / Atomski Vek」(12:08)サイケデリックな浮遊感とスウィートネスがテクニカルなプレイと拮抗する夢想的ジャズロック、
ブルージーだが 70 年代後半風の倦怠感、ニヒリズムも漂うジャズロック(クラヴィネットあり)、
悲壮感にドイツ・ロマン派風の愛らしさと情熱を交ぜ込んだハードなジャズロックと展開する。
「Oblak」(5:07)70 年代の新宿か横浜の街に生きるクールな若者の横顔のように、醒めながらも熱いジャズロック。オルガンがカッコいい。
「Medtem」(2:49)CD ボーナス・トラック。シングルより。リズミカルなギターが冴えるローカルでファンクなジャズロック。サビの田舎臭さ、そこへオーヴァーラップするストリングス・シンセサイザーの大仰さなど怪しげではあるが、いいノリである。
「Izvir」(5:40)クラヴィネットのリズムで沸騰するメカニカルでハードなジャズロック。
後期 SOFT MACHINE や GENTLE GIANT のニュアンスも。
「Šareni pas」(2:52)ノイジーなキーボードとギターのバッキングが強烈なブギー。
エレクトリック・ピアノが大暴れ。ギターのオブリガートもすごい。
「Čovjekov strah」(8:04)ロマンティックなシンフォニック・チューン。傑作。
「Vibrolux」(3:08)ギター中心の重めのグルーヴにストリングスが絡むカッコいいインストゥルメンタル。
ドラムスのスタイルが曲調によく合っている。ドラム・ソロあり。
「Pesem Upanja」(2:54)CD ボーナス・トラック。民族舞踏曲風のクラシカルなインストゥルメンタル。
(LD 0377 / ATLANTIDE 10)