イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「JODY GRIND」。66 年結成。70 年解散。TRANSATLANTIC レーベルから二枚の作品を発表。英国ロックを代表する鍵盤奏者の一人、ティム・ヒンクレイの最初のグループ。
Tim Hinkley | organ, piano, electric piano, vibraphone, vocals |
Pete Gavin | drums, percussion |
Bernie Holland | guitar, bass, vocals |
70 年発表の第二作「Far Canal」。
前作以降、リーダー格のヒンクレイ以外の全メンバーが交代。
内容は、ヒンクレイのハモンド・オルガンとセンス抜群ギターをフィーチュアした、ラウドにしてしなやかなインストゥルメンタル主体のハードロック。
R&B スピリットあふれる作風であり、ブルーズロックとともに 60 年代英国ロックのエッセンスをかなりいい形でまとめあげた作品といえるだろう。
ハードロックを離れてクラシックやジャズに大きく振れても何の違和感もないところは、そのエッセンスをベースにさらなる前衛的方向を目指したせいだろう。
そして、そういった音楽的な冒険精神と技巧のバランスが取れているところが強みである。
トリオを構成するのは、爆発的音数のドラムス、安定感あるキーボード、卓越したハードロック・ギタリスト。
演奏は、徹底してワイルドなサウンドにもかかわらずインテリジェンスを感じさせるものであり、サイケなジャムを、ルーズではなく高密度の演奏力でもって全力でぶちかましている。
「シャープなサイケ」というのはじつは矛盾含みの表現スタイルだが、演奏にその矛盾を乗り越える圧倒的な迫力があり、技巧を惜しみなくぶち込んだ個性的なハードロックといえる次元に到達している。
そして、そのカッコいいハードロックを基調に、クラシカルな表現やジャジーな味わいも無造作に放り込んでいる。
本作から参加のバーニー・ホランドというギタリスト、名前からして一流ジャズ・ミュージシャンなのではと思わせるが、実際そのプレイもかなりの腕前である。
ペンタトニック・スケールを縦横無尽に走り抜け、バッキングでも凶暴なコードワークで演奏を燃え上がらせる。
すばらしいのはそのリズム感覚であり、ジャストなビート感で演奏を引き締めている。
ヴォーカルもかなりのセンをいっている。
雄々しくもセクシーな表現は、LED ZEPPELIN に迫る。
とにもかくにも、抜群の演奏能力をさりげなくもスタイリッシュに解き放った好作品である。
プロデュースは、ヒュー・マーフィ。
「We've Had It」(5:04)バッハも飛び出すアコースティック・ギター・アンサンブルを序章にしたクラシカルで幻想的な作品。この作品だけは露なハードロック・タッチがなく、独自の位置を保っている。
「Bath Sister」(3:27)ブルージーなハードロック。ヘヴィなヴァースと対照的にギターとオルガンのユニゾンによる間奏はしなやかだ。
ギターはリフもオブリガートもカッコいい。
「Jump Bed Jed」(7:12)クランチなリズム・ギターのコード・ストロークがドライヴするスタイリッシュなギター・ハードロック。
リード・ギターもテクニカルかつしなやかに迫る。リズム・チェンジや無造作なようで呼吸のいいオルガンとギターのやり取りなど、タフで締まった演奏力を遺憾なく発揮する。
「O Paradiso」(7:29)パワー全開のハードロック・インストゥルメンタル。ドラムスをフィーチュア。
「Plastic Shit」(7:19)ジェフ・ベックばりのヴァーサタイルなギターと爆発的なヴォーカルによるキレのいいハードロック。ライヴ録音のようだ。
「Vegetable Oblivion」(2:07)オーヴァーダビングされたツイン・ギターがクラシカルに、華麗にユニゾンする WISHBONE ASH のように高雅なハードロック。インストゥルメンタル。
「Red Worms & Lice」(7:21)ハードロック・インストゥルメンタル。得意のサイケなジャムがパワフルなハードロックに生まれ変わる。
オルガンもギターも情熱の赴くままに音を迸らせる。ギターはここでもツイン。
「Ballad For Bridget」(3:40)ピアノ、エレクトリック・ピアノなどキーボードをフィーチュアしたジャズ・インストゥルメンタル。4 ビートとジャズギター。
「Rock'n' Roll Man」(4:31)ボーナス・トラック。シングル盤。
(TRA 221 / AK 065)