イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「NUOVA IDEA」。 69 年ジェノヴァにて結成。 73 年解散。 アルバムは三枚。 メンバーの一部は NEW TROLLS に合流。
Marco Zoccheddu | guitar, vocals |
Giorgio Usai | keyboards, vocals |
Enrico Casagni | bass, flute, vocals |
Claudio Ghiglino | guitar, vocals |
Paolo Siani | drums, vocals |
71 年発表の第一作「In The Beginning」。
内容は、60 年代の名残を紛々ととどめるサイケデリックでアヴァンギャルドなロックである。
A 面全部を占める超大作とシングル向けの小品を収めた B 面から構成される。
大作は、アグレッシヴに暴れまわった挙句に虚脱感に陥り、新たなヴィジョンを見出したのか、それともそれは錯覚だったのかが判然としなくなる、そういう状況をよく描けていると思う。
一方、B 面は 70 年代ロックの優れたエッセンスを抽出した好作品が並ぶ。
ラウドなエレクトリック・サウンドと素朴で濃厚なメロディの組み合わせは、イタリアン・ロックならでは魅力である。
全体にブリティッシュ・ロックの影響は色濃いが、官能をゆすぶる情熱を豊かな声量に託したヴォーカルと全員コーラスを中心に地中海らしい独特の乾いた光を放つ作品である。
「Come, come come....(Vieni, vieni, vieni....)」(20:02)
ファズ・ギター、オルガン、コーラスが暴れ周り巨大な波のようにうねり続ける超大作。
過激で濃密で野蛮でたまにインテリジェント、そして内面は純朴そのもの。
ギターがリードするハードロックにクラシカルなアレンジ、ジャジーなプレイを加えて膨らませ、パンク寸前になっている破天荒なオムニバス作である。
ドラムス・ソロ、ベース・ランニング・ソロもあり。
NICE ばりの熱く気高いハモンド・オルガン、イタリア版 LED ZEPPELIN というべきアコースティックな哀愁もあり。
ヴォーカルはイタリア語。
「Realta」(04:08)コーラスが渦巻く賛美歌風のバラードとフルートを使った JETHRO TULL 風のアグレッシヴなハードロックを連結。後半はハモンド・オルガンとギターのジャズっぽいバトル。
「La Mia Scelta」(03:39)ヘヴィなギター・リフとコーラスをフィーチュアしたキャッチーなハードロック。ピアノも参加。
「Non Dire Niente...(Ho Gia Capito)」(04:19)ドリーミーな弾き語りフォーク・ロック。
柔らかなハーモニーにオルガンたなびきアコースティック・ギターが竪琴のように響く、この牧歌調こそが典型的なイタリアン・ロックである。
「Dolce Amore」(03:58)得意のハーモニーを駆使した、いかにもイタリアン・ロックらしいハイテンションのオペラ調ハードロック。
男性的な力強さと女性的な繊細さが交差し官能的な表現になっている。オルガン、ギターもひたすら熱い。
(Ariston AR/LP 12061 / VM 02)
Giorgio Usai | organ, mellotron, moog, sistro, cembalo, acoustic & electric piano, vocals |
Antonello Gabelli | guitar, phase-synthesizer |
Claudio Ghiglino | guitar, acoustic 12 string, vocals, chorus |
Enrico Casagni | bass, vocals |
Paolo Siani | drums, timpani, campane, tumba, bonghi, gong, vocals |
72 年発表の第二作「Mr. E JONES」。
ミスター・E・ジョーンズの一日を描いたトータル・アルバムである。
内容は、ギターがけたたましいハードロックを軸に、シンセサイザーなどの電子音処理、変則拍子、オルガンによるクラシカルなアレンジ、ジャズ風の巨大なインタープレイなどが目まぐるしく展開する、情報量過多の英国スタイルのプログレッシヴ・ロック。
トータル・アルバムとしてのドラマティックな流れのために、静動、硬軟、強弱、押し引きを対比し組み合わせる巧みな構成があると思う。
演奏面では、時代を代表するスタイルというべき奔放で融通無碍なギターのアドリヴとクラシカルかつジャジーなオルガンのアドリヴがスペースを大きく取っている。
そして、バラードにおける底なしの優しさと彼岸的和みのアコースティック・サウンドはイタリアン・ロックならではもの。
傷心の弾き語りにどっとかぶさるストリングスなど、現実逃避のスケールが違う。
また、GENTLE GIANT 風の無調でギクシャクとしたトゥッテイでも、熱いヴォーカリストがこってりと濃厚なメロディをなぞることでイメージがずいぶん変わる。
抽象的で知性に訴える美からルネッサンス風の血潮脈打つ人間くさい魅力へと変化するのだ。
これはイタリアン・ロックならではの強みだろう。
同時期の NEW TROLLS の影響を受けていそうな音であることもいっておこう。
ドラムスの音が比較的きれいに録れているのも珍しいことだ。
ギタリストの一人がメンバー交代。
ヴォーカルはイタリア語。
プロデュースは、ジャンフランコ・リベルベリ(LE ORME のプロデューサー/メンバーのジャンピエロ・リベルベリの兄弟)とグループ。
「Svegliati Edgar」(3:28)
「Mr. E. Jones」(3:49)
「Viaggio Nel Mondo Dei Sogni」(5:25)
「Un'Ora Del Tuo Tempo」(5:30)
「Fumo Di Una Sigaretta」(2:20)
「Illusioni Da Poco」(9:08)
「Premio Di Una Vita」(7:13)
「Un Altro Giorno」(3:09)安らかな眠りを導くような終曲。ピアノ伴奏でメロトロンとうっすらとしたハーモニーがたゆとう。
「Finale」(0:25)LP では曲名記載なし。けたたましいオープニングの一瞬のリプライズなので CD で加えた編集の可能性あり。
(Ariston AR/LP 12075 / SONY MUSIC 88875000932)