THE PARLOUR BAND

  イギリスのロック・グループ「THE PARLOUR BAND」。英仏境界のチャンネル諸島、ジャージー島出身のグループ。72 年 DERAM から唯一作を発表後、A BAND CALLED O へと改名。

 Is A Friend?
 
Peter Filleul lead vocals, keyboards, rhythm acoustic
Jon Pix Pickford vocals, lead vocals on 6, wah wah Gibson
Craig Anders vocals, electric & acoustic & slide guitar
Mark Ashley Anders vocals, bass
Jerry Robins percussion

  72 年発表のアルバム「Is A Friend ?」。 内容は、ハモンド・オルガン、エレクトリック・ピアノ、アコースティック・ギター、甘やかなコーラスによる若々しくも繊細なフォーク・ロック。 微熱あるメランコリーを優しく冷ます秋風のような音の質感は英国的としかいいようがない。 ただし、音のトータルな雰囲気にフォーク・タッチの淡く抑えた色合いがあるのに対して、メロディそのものや精妙なアレンジを施されたアンサンブルには、ジャズや R&B の素養と練られた逞しさが感じられる。 熟成されたベテランの音といってよく、メンバーはそれなりのキャリアを経ているようだ。 場面毎に分厚くヘヴィな音やシンプルでアコースティックな音を巧みに使い分けているし、ヴォーカルやコーラスに現れるポップなつかみも絶妙だ。 キャッチーなメロディの良さから 60 年代のビートロックをそのまま精妙化したようなイメージも出てくる。 この「アコースティック・ロック」というべきサウンドを支えているのは、美音で抑えの効いたエレクトリック・ギターとキーボードのプレイである。 ヘヴィになり過ぎずに歌メロとくっきり対比するテーマをタイムリーに示したり小粋なソロを決めるなど抜群のセンスではないだろうか。 フォーク風ながらも決しておとなしいばかりではなく、要所できっちりラウドな音も出ていて、渋みとパンチのバランスが取れている。 興味深いのは 70 年代中盤に流行る米国西海岸風の音が早や散見できること。 思い切って、アコースティックなサウンドによるルーラルな牧歌調プログレ、といってもさほど外してはいないだろう。
  すべての曲が、ハードロック・グループによるアコースティックなバラードのような、あるいはエレクトリックな AOR 系のグループによるシンプルな弾き語りのような、いわばアルバムのすき間に収められるような曲調なのだ、といえばいいかもしれない。 微妙な位置を占める音ということだ。 それでも、変化に富むソフトにしてしなやかな音はフォーク・ロック、ハードロック両方のファンを唸らせるでき映えだろう。 6 曲目は、ヘヴィな音とリリカルなメロディ、メロディアスな演奏がブレンドしたノスタルジックな名品。(ストリングスのような音も聴こえる) 後の AOR 路線を想像させる歌メロがすばらしい。 そして、最終曲は BARCLAY JAMES HARVEST にウィットでメリハリをつけたようなファンタジックな傑作。 プロデュースはニック・タウバー。

  「Forgotten Dreams」(2:41)
  「Pretty Haired Girl」(2:52)
  「Springs' Sweet Comfort」(5:09)
  「Early Morning Eyes」(3:52)
  「Follow Me」(4:56)

  「Evening」(4:58)転調が印象的な美しいクラシカルなバラード。ギターのオブリガートがすばらしい。傑作。
  「Don't Be Sad」(3:21)英国ロックらしいメロディと和声の小品、コーラス。エレクトリック・ピアノが伴奏。
  「Little Goldie」(3:20)アメリカンなタッチと英国風味がブレンドしたジャジーで洒脱な小品。CARPENTERSMOODY BLUES の中間くらい。優美さ、暖かさ、そして幻想味。
  「To Happiness」(3:04)
  「Home」(7:37)
  「a) Once More Loneliness
  「b) Fortress
  「c) Home

  「Runaround」(4:26)ボーナス・トラック。わりとハードロックっぽいギター・リフとパストラルなハーモニーの取り合わせの妙。そこへブラス・セクションも加えてやや過剰気味の演出ながらも、キレのある演奏で救われている。
  
(SDL 10 / ECLEC2192)


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