エストニアのプログレッシヴ・ロック・グループ「PHLOX」。 99 年結成。作品は四枚。東欧らしいテクニカルで重量感あるジャズロックをよくする。
Pearu Helenurm | keyboards | Kalle Klein | sax |
Kristo Roots | guitars | Raivo Prooso | bass |
Madis Zilmer | drums | Allan Prooso | percussion |
Raimo Teder | flute | Liis Jürgens | harp |
Vambola Krigul | vibraphone | Maarja Nuut | violin |
2010 年発表のアルバム「Talu」。
内容は強固でアグレッシヴなアンサンブルが特徴的な 70 年代スタイルのジャズロック。
エレクトリック・ピアノやサックスなどはマイルス・デイヴィス、RETURN TO FOREVER 系の典型的な音だが、ベースやギターの粘りつくファズ・トーンと変拍子ミニマリズム志向を考えれば「カンタベリー」といった方が直接的で適切だろう。
パワフルでフィルが収まらないほど前のめりなドラミングも特徴。
このドラムスが遠慮会釈なしに変拍子を叩き出し、ポリリズミックなアンサンブルを息つくヒマもない勢いでドライヴしている。
緊迫したサスペンス・タッチに性急な荒っぽさがあるのもこのドラミングのせいだ。
サックスやフルート、ギターのプレイはいわゆるジャズのソロというよりも、緊密なアンサンブルによるスリリングな展開やメロディアスでチアフルなテーマのリード役といった方が適切である。
それぞれにソロで飛び出したいのだが他のパートが許さないのかもしれない。
田舎者の強欲というか足の引っ張り合いなのかもしれない。
ヴィヴラフォン、ヴァイオリンもそれぞれにモダン・ジャズ、クラシカルな牧歌調から現代音楽的無機抽象性までもを演出している。
おもしろいのはリラックスしたノリのいい演奏でも WEATHER REPORT 的な「ファンキー」さが感じられないこと。
楽しんではいるが羽目を外せず常に重々しい、技巧的だが誠実過ぎて不器用、そんな感じだ。
また、ファズ、ローズ・ピアノといった記名性の高い、いわゆるカンタベリー風の音にとどまらず、東北ヨーロッパ風らしきエキゾチズムも交えて没個性化を避けているところもある。
個人的にはサックスのプレイに KING CRIMSON 的(メル・コリンズ、イアン・マクドナルド的というべきか)なものを感じている。
そう考えると、ロングトーンのレガートなギターも耳を突いてきて、そうかこの凶暴さ、緊迫感は KING CRIMSON 風でもあるのかと気づくことになる。
電化マイルスの系譜を忠実にたどり傍流の芸風までも拾い集めた作品ともいえないだろうか。
こちらがボウっとしててもメリハリつけて圧をかけてくるタイプの音なので耳に入ってきやすいと思います。
全編インストゥルメンタル。
「Võib-olla Drežiiniga」(4:33)
「Hullelu」(4:44)
「Monokkel」(7:45)
「Ooode」(6:00)
「Loomaaed」(7:39)
「In The Wood」(6:13)
「Siil」(6:52)
「Istu. Viis」(4:51)
「Augustin'」(5:37)
「Binokkel」(1:16)
(MKDKCD0029)