REALE ACCADEMIA DI MUSICA

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「REALE ACCADEMIA DI MUSICA」。 72 年結成。 74 年解散。 作品は、共作含め二枚(2013 年未発表の三作目が発掘された)。ヴォーカル、キーボード主体のクラシカルかつ哀愁あるシンフォニック・ロック。 リーダー格のフェデリコ・トロイアーニは 70 年代後半にはソロで活動。

 Reale Accademia Di Musica
 
Federico Troiani acoustic & electric piano, organ, mellotron, vocals
Nicola Agrimi acoustic & electric guitars
Pierfranco Pavone bass
Roberto Senzasono drums, percussion
Henryk Topel Cabanes lead vocals
guest:
Pericle Sponzilli guitar
Maurizio Vandelli acoustic guitar on 2, mellotron on 5
Natale Massara orchestra direction on 1, 2

  72 年発表の第一作「Reale Accademia Di Musica」。 内容は、無常感も漂うものさびしげな歌を、ピアノを主にキーボードがシンフォニックに彩る叙情派ロック。 特に印象的なのは、本格クラシックからレイド・バックしたブギー風のプレイまで披露するアコースティック・ピアノの明快な響きである。 あらゆる場面でたなびくような余韻を残すピアノのおかげで、哀愁だけでなく、牧歌的な穏やかさと品のよさも生まれている。 低音と高音のツイン・ヴォーカルも珍しい。 作品は、ピアノやアコースティック・ギターに支えられたうつろなヴォーカルが乾いた空気を揺らがせるフォーク風のものから、オルガンを中心に激情をこれでもかと高ぶらせるヘヴィ・ロックまで振幅が大きい。 特に、大作において、一曲の中で大きく表情を変化させる。 もっとも、イタリアン・ロックとしてはそれほど破天荒な方ではなく、自然な流れに沿った叙情的な演奏といっていい。 したがって、一番の特徴は、メランコリックで淡々とした歌メロと熱気と華のあるキーボード・ワークのコンビネーションといえるだろう。 そして、構成の緻密さよりも、暴れるところは暴れ歌い込むところは歌い込むという、悠然たる自由奔放さが優先している。 荒っぽくともトゲトゲしくならずどこかマイルドな味わいがあり、アヴァンギャルドでも狂的な揺るぎなさよりも若々しい勢いが先に感じられるのは、やはり歌やメロディにイタリアならではの熱く小粋なポップ・センスが満ちているせいなのだろう。 最終曲は、オルガン、メロトロン、コーラスによるハードでドラマチックな佳作。 プロデュースはマウリツィオ・ヴァンデリ。 RICORDI レーベル。

  「Favola(伝説)」(3:46) アコースティック・ギターのアルペジオとともにテーマをリードするのは、ピアノの弦を直接奏でる音だろうか。 バンジョーのような音も聴こえる。 いずれにしろ、田園の朝のような演奏である。 歌も消え入りそうな優しげなフォーク調。 ホルンなど管絃やオルガン、メロトロンも、遠い思い出のように美しくはかない。 タイトルとピッタリの曲調である。 ドラムレス。

  「Il Mattino(朝)」(9:19) ピアノが穏やかに伴奏するメランコリックな弾き語りに、パワフルなインストゥルメンタルをからめた作品。 内省的な歌に、ファンタジックなピアノのオブリガートがほのかな希望の灯りを点す。 控えめなストリングスも歌を静かに押し上げる。 間奏はアジア風のエキゾティックな旋律を響かせる幻想的なピアノ演奏。 ざわめく低音と、躍動し過熱する旋律。 ヘヴィな打撃音とともに一気に高潮し、ピアノとオルガンがけたたましく走り出す。 リストとジャズが交じったようなピアノのリードで突っ走り、ギターが追いかける。 最後は再び憂鬱な歌へと帰ってゆき、厳かな弦楽が締める。 後半のインストゥルメンタルの盛り上がりがカッコいい。 クラシックとジャズを交差させる即興風のピアノが圧巻だ。 BANCO を思わせるところもある。

  「Ognuno Sa(各人)」(5:19) 再びアコースティック・ギター、ピアノ伴奏によるスワンプ風の作品。 弾き語り調のヴォーカルとホンキートンクなピアノ。 くっきりとしたタッチによる荒々しくも優しげなピアノの間奏や、ピアノの合い間にアクセントで入るオルガンは、THE BAND 的。 泣き出しそうに切ない気持ちがよく表現された、すてきなポップ・ソングだ。

  「Padre(父)」(8:41) クラシカルなオルガン、ギターらがヘヴィにたたきつけるトゥッティと情熱的な歌で迫るバラード。 ぐっとエモーショナルなヴォーカルの伴奏からじわじわと湧き上がり、重厚な演出をする教会風のオルガンが感動的。 ギターも冒頭のインパクトやネオ・クラシカル調のテーマ、終盤のソロに鮮烈な見せ場をもつ。 イタリアの PROCOL HARUM といった趣である。

  「Lavoro In Citta'(街での仕事)」(5:56) モダン・クラシック的ピアノ・ソロに続きバリトン・ヴォイスが無表情に迫りミステリアスな緊迫感を高める序盤。 一転サビではゆったりした 4 拍子へ変化。 メロトロンが高鳴り、もう一方のソフト・ヴォイスがメロディアスに歌い上げ、ロマンティックな幻想を振りまく。 オルガンとギターもブリティッシュ・ロック調のメランコリーと幻想美をもつ。 終盤はテンポ・アップし、ピアノとギターによるジャジーなデュオが続く。 オムニバス風に雰囲気が変化する作品だ。 都会の仕事は疲れる、野良仕事が懐かしい、なんて歌なのでしょうか。

  「Vertigine(めまい)」(7:11)怪しげなリズムがたたみかけオルガンが轟くヘヴィ・チューン。 オペラ風のヴォーカルも加わった重苦しくハードな曲調は、BLACK SABBATHURIAH HEEP か、はたまた VAN DER GRAAF GENERATOR か。 ギターが入ったる途端にハードロック化、そしてピアノはエコーを効かせ和音を叩きつける。 ベースのリフがリードする、オルガン、パーカッションによるクラシカルかつヘヴィな演奏が続く。 派手なプレイはないが、リフ中心のハードな調子がなんともカッコいい。 ジャジーなドラムスも目立っており、全員のプレイをきっちりフィーチュアした内容になっている。
  
(K22P 281 / SMRL 6105 / BMG RICORDI 74321980752)


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