キューバのプログレッシヴ・ロック・グループ「SINTESIS」。 75 年結成。 欧米のロックを取り入れてキューバ音楽の発展を促したキューバを代表する現役グループ。一部メンバーは IRAKERE とも重なる。
Miguel(Mike)Porcel | vocals, 12 string guitar |
Jose Maria Vitier | piano, keyboards |
Carlos Alfonso | vocals, guitar |
Ele Valdes | vocals, synthesizer |
Silvia Acea | vocals, organ |
Eliseo Pino | vocals, acoustic guitar on 2 |
Fernando Calveiro | guitar |
Enrique Lafuente | bass |
Frank Padilla | drums |
78 年発表のアルバム「En Busca De Una Nueva Flor」。
その内容は、ロマンに満ちた優美なメロディ・ライン、ラテンで粘っこい男性ヴォーカル、トラッドから教会音楽まで幅広い表情を見せる混声のコーラス、クラシカルなキーボードらが織り成す叙情派プログレッシヴ・ロック最右翼。
イタリアン・ポップスを思わせる熱いスウィートネスとジャジーで AOR なソフトネスと教会音楽風のコラールが一遍に現れるという、プログレならではの間口の広さがすごい。
宗教も恋情も生活もすべて一つの坩堝にたぎらせる、南の国の空気に人生の哀愁をたっぷり盛り込んだ音楽といえるだろう。
サウンドは、アルゼンチンのグループにも通じるたおやかで繊細なものだ。
演奏の中心は、ピアノ、オルガン、シンセサイザーそれぞれで色彩と重層的な旋律美を生み出す三人のキーボード奏者と、男女混声のコーラスである。
そして、器楽はヴォーカルを彩ってメロディをしみわたらせる手段という認識なのだろうか、すべての曲がミドル・テンポでじっくり聴かせるスタイル。
単純に、トラディショナルなヴォーカルをキーボードが取り巻くプログレッシヴ・ロック、という表現ではいい尽くせない、完成度の高さを誇る楽曲が並んでいるところが驚きである。
また、メロディや女性コーラスの感触には 70 年代ユーロポップス特有の甘さもある。
レナウンの CM や TV アニメーション「宇宙戦艦ヤマト」のエンド・タイトル曲を思い出してしまうところもある。
エレクトリックな音の処理に対して、アコースティックな音に対してほどは意識を注がなかったのか、ギターやベース、シンセサイザーのサウンドが、かなりチープに聴こえてしまうところはある。
だが、それも、楽曲そのものの豊かさを損なうほどではない。
慈愛に満ちたアコースティックな歌ものを基調に、ギターやシンセサイザーなど新時代の音も取り入れたシンフォニック・ロックであり、アフロ・キューバン音楽を変革しようという心意気が感じられる作品である。
イタリアのグループより洗練された音も、決して突然変異ではなく、彼らの音楽的バックグラウンドの広さを物語るのだろう。
いわゆる英国のプログレッシヴ・ロックの影響も受けているようだが、直接的なものはあまり確認できず、フォルクローレから湧き出でた、優美でしっとりとした詩的感興に酔いしれることができる。
3 曲目のクラシカルでロマンチックなキーボード・ワークとゆったりと優しいコーラスや 5 曲目のコラールがアルバム全体を象徴している。
優れたミュージシャンによるフォーク調シンフォニック・ロックの大傑作。
ボーナス・トラック 1 曲目は歌ものの魅力そのままにスケールの大きさと重厚さが加わったシンフォニックな作品、2 曲目はキューバ人作曲家レオ・ブローウェルの作品「永劫の螺旋」やギター・エチュードをモチーフにした現代音楽的なインストゥルメンタル。
「Nueve Ejemplares...No Tan Raros」(8:09)
「Ven A Encontrarnos」(3:10)
「Primera Noche」(7:30)
「Somos La Flor」(6:16)
「Poema」(5:26)
「En Busca De Una Nueva Flor」(6:55)
「Variaciones Sobre Un Zapateo」(6:20)ボーナス・トラック。
81年録音。
「Elogio De La Danza」(9:34)ボーナス・トラック。
81年録音。
(CD SD03)