TANTOR

  アルゼンチンのプログレッシヴ・ロック・グループ「TANTOR」。 77 年 AQUELARREINVISIBLE の元メンバーらが結成。83 年解散。 作品は二枚。遅れてきたジャズロックの佳作。

 Tantor
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Hector Starc guitars
Rodolfo Garcia drums, percussion
Carlos "Machi" Rufino bass, vocals
guest:
Lito Vitale keyboards on 3,4,5,6,7
Leo Sujatovich keyboards

  79 年発表のアルバム「Tantor」。 内容は、メイン・ストリーム・フュージョンばりのテクニックと豊かな叙情性を兼ね備えたジャズロック。 ギターに代表される荒さと南米風のメロディアスなまろやかさ、爽やかさがいい感じでバランスしたロマンティックな作風である。 いわゆるフュージョンの中にアーバンな華やぎとメランコリー、田園風の健やかさと癒しを一つにして封じ込められるのも南米ものならではだろう。 スペイシーなストリングスと夢見るようなエレクトリック・ピアノの響きを貫いて、タイトなアンサンブルが若さを誇示して飛翔するような演奏であり、なおかつベテランだけあって安定感も抜群。 果敢に攻め立てる調子にも目が廻りそうな急旋回にも余裕がある。 曲想は多彩であり、RETURN TO FOREVER そのもののようなスパニッシュ・テイストのテクニカル・フュージョンから、フラメンコ・タッチの情熱的なギターによるラテン・ロック調、ストリングス・シンセサイザーが小雨のように降るしきる CAMEL を思わせる淡いファンタジーの世界もある。 特に、インストゥルメンタル・パートの忙しなくもシャープなリズム・セクション、強引に道を切り開いてゆくようなキーボードやギターのワイルドなソロにまずは耳を奪われるだろう。 ゲスト・キーボーディストであるリト・ヴィターレのカラフルでまろやかな音色と火を噴くようなプレイも聴きもの。 甘めのバラードにも素朴な歌心がにじみ、涼風のような心地よさがあるところが魅力である。 7 曲中 2 曲はスピネッタとの共作。

  「Guerreras Club」(4:30)
  「Niedernwohren」(5:41)
  「Llama Siempre」(3:18)歌もの。スピネッタとの共作。
  「Oreja Y Vuelta Al Ruedo」(6:37)RTF そのものな痛快作。ヴィターレの爆発的なプレイに慄然。
  「Halitos」(7:02)
  「El Sol De La Pobreza」(4:43)ラテン調の歌もの。スピネッタとの共作。
  「Carrera De Chanchos」(7:48)アドリヴに大きなスペースをとったテクニカル・チューン。キーボードと比べるとギターがやや力量不足。
  
(PHILIPS 6347383 / MRD-2003)

 Magico Y Natural
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Hector Starc guitars
Marcelo Torres bass, vocals
Rodolfo Garcia drums
Babu Cervino keyboards

  82 年発表のアルバム「Magico Y Natural」。 内容は、アリーナ志向も垣間見えるポップなフュージョン・ロック。 テクニカル・フュージョンやハードロックの枝葉を落としてアクセスしやすいポップ・ミュージックへと変容させた時代の流れにのった作風である。 デジタル・シンセサイザーをはじめ、さすがに 80 年代の音になっている。 ピアノのプレイもジャジーな AOR 調であり、ベーシストはジャコ・パストリウスとマーカス・ミラーしか知らない日本のフュージョン・バンドのベーシストのようなプレイをする。 同時代性という意味では欧米の音楽シーンとなんら差異はない。 イージー・ゴーイングなグルーヴもそのままである。 今回は南米という魅力あふれるローカリズムのフィルターをあまり通さなかったのかもしれない。 これで売れないと悲しいが、売れなかったそうです。

  「Nildo El Torpe」(5:19)ここで止めてはいけません。
  「Siento El Eco De Tu Voz」(4:43)歌ものになると格段にいい。
  「Toda La Noche Día」(4:00)RTF をさらにシャレオツにしたようなフュージョン。 ギターのプレイはいい感じだ。ホイッスルが懐かしい。
  「Después Te Explico」(5:23)シンプルなドラム・ビートが印象的なロケンロー。終盤のノスタルジックな展開が面白い。
  「Tobi」(3:30)2in1 CD では割愛されている。 自然なラテン・フレイヴァーの小粋なジャズロック。 ドラムスのプレイが極端にシンプル。
  「Mágico Y Natural」(5:52)ラテン・テイストを押し込んだ北米流ハードポップ。針飛びあり。後半のひねりでグレード・アップ。
  「Albaricoque」(6:30)前作の味をキープしたラテン・ジャズロック。
  「No Me Cambies Nunca」(1:53)キーボード多重録音のみによるナイトミュージック風の終曲。意図が分からずびっくり。
  
(RAVIOL RR5002 / MRD-2003)


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