ブラジルのプログレッシヴ・ロック・グループ「TERRENO BALDIO」。 74 年結成。79 年解散。作品は二枚。93 年再結成。グループ名は「不毛な土地」の意。
Ronaldo Lazzarini | keyboards |
Mozart de Mello | guitars |
Joao Kurk "Fusa" | vocals, percussion |
Joaquim Correa | drums |
Joao Ascencao | bass |
76 年発表の第一作「Terreno Baldio」。
内容は、テクニカルなアンサンブルにブラジリアン・フォークらしいたおやかさをブレンドした上品なシンフォニック・ロック。
シャープなリズム・セクションとジャジーかつライト・ファンキーなプレイは、70 年代中後半の欧米メイン・ストリームと同等のクオリティである。
しかしながら、「バンド」という表現がふさわしくなくなるほどに、ダイナミクスや音色について室内楽のアンサンブルに近いデリケートなニュアンスが貫かれている。
さわやかで繊細な音を使いながらも、緻密なアンサンブルの生む心地よい緊張感がある。
それが特徴だ。
「ブラジルの GENTLE GIANT」と呼ばれる理由は、込み入ったパターンの執拗な反復からの大胆な変化、ポリリズミックなアンサンブル、フレーズを分割して各パートで「数珠繋がり」に演奏するなど、技巧的な演奏手法が似ているため、また、リード・ヴォーカリストの声質と歌唱法がケリー・ミネアに酷似しているため、だと思われる。
ただし、歌のメロディ・ラインはクラシカルではなく、陰も陽もあくまでラテン・フォーク調である。(現代音楽的な無調気味にもなるが、それでも基本はブラジリアン・テイストである)
また、楽器の種類こそ本家ほど多くないが、複雑なアレンジの中で各パートが役割を十分すぎるほどに演じている。
たとえば、ベースは、いわゆるロック・ベースを超えて、アンサンブルの一パートとしてギターやキーボードと同等の位置でポリフォニーを構成している。
堅実なバッキングに徹するギターが引っ込んで聴こえてしまうほどだ。
キーボードはオルガン、ストリングス・シンセサイザー、ピアノなど多彩な音色でアンサンブルを支える。
爆発的なソロではなく、バッキングや間奏部に印象的なフレーズをきちんとあてはめてゆくところは、本家のケリー・ミネアに近い。
最終曲はクラシカルなアンサンブルにアジテーション風のヴォーカルを盛り込んだ野心作。
全体に「テクニカルだが思い切り地味」なのは意図的なのか。
「Pássaro Azul」(4:02)
「Loucuras De Amor」(4:02)
「Despertas」(5:07)ファンキーなキメが腰にくる印象的な作品。
「Água Que Corre」(4:50)8 分の 5 拍子による反復がアブストラクトなアンサンブルを呼覚ます。悪夢的な展開は本家そのもの。
「A Volta」(3:41)ギターのオブリガートが GG に激似。
「Quando As Coisas Ganham Vida」(2:03)「数珠つながり」フレーズのイントロは、GG に激似。5 拍子や 7 拍子にくるくると変化する。
「Este É O Lugar」(7:09)本家の「Power And Glory」辺りにありそうなエネルギッシュにしてねじれた作品。
「Grite」(5:03)角張ったバロック風のアンサンブルとレガートでセンチメンタルなヴォーカルが対比をなす。
(RSLN 098)