DZYAN

  ドイツのジャズロック・グループ「DZYAN」。 71 年結成。 72 年、第一作発表後に一度解散。エディ・マロンとペーター・ガイガーが加入、トリオとして再結成。 作品は三枚。 解散後、ガイガーはエバーハルト・ウェーバーやフォルガー・クリーゲルとも共演。

 Time Machine
 
Eddy Marron 6-12 string guitars, acoustic guitar, zaz, vocals
Reinhard Karwatky bass, double bass, super string
Peter Giger drums, percussion

  73 年発表の第二作「Time Machine」。 グループ再結成後の作品である。 内容は、ギター・トリオによる、エキゾチズムを強調したスペイシーなジャズロック。 即興を交えたジャズロックであり、一言では説明しがたいユニークな音と演奏である。 ジョン・マクラフリンとジミ・ヘンドリックスが合体したような超絶ギターとそれによく反応する精緻なリズム・セクションによるアンサンブルは、音こそ垢抜けないが、きわめてテクニカルだ。 また、ダブル・ベースとのデュオにおけるエキゾチックなアコースティック・ギター速弾きは、間違いなくジョン・マクラフリン直系である。 1 曲目の異国風のアコースティック・サウンドは、早過ぎたワールド・ミュージック・グループといった趣。 そして、2 曲目のハードな即興曲から最終曲への道のりは、サイケデリックな幻惑感をたたえつつも、アグレッシヴで硬派なジャズロックを目指したものとなっている。 重量とスピードを兼ね備えたうえに暴力的なプレイが次々と繰り広げられるところは、まさしく MAHAVISHNU ORCHESTRA と共通する。 ギターの手癖までもが、マクラフリンに似ているようだ。 また、ギター・パートはオーヴァーダビングされており、バッキング付きのソロを聴くことができる。 ギタリストのみならず、ベーシストも技巧的なフレーズを放ち、超ド級の手数とパワーに加えて多彩なパーカッションも叩きこなすドラマーも文句無しのテクニシャンである。
  一般にややサイケ・テイストのあるジャーマン・ジャズロック中でも、特に個性的なハイパー・エスニック・ジャズロック。 スペイシーな雰囲気は、主としてオープニング曲に集約されており、ギター・デュオの 3 曲目を除く二曲は、極めてハードなジャズロック/フュージョンである。

  「Kabisrain」(7:56)西アジア風のギター、「zaz」、パーカッションによるエキゾチックな即興風ナンバー。 ダブル・ベースのボウイングや熱狂的なアコースティック・ギター・プレイが、冷ややかな空気の密度を次第に上げてゆく。

  「Magika」(8:43)ヘヴィなギター・リフがドライヴする強烈なジャズロック。 ギターとドラムスがシンクロしたハードなプレイから、再び即興風のアンサンブルへと移ってゆく。 初期の WEATHER REPORT にギターを加えたような質感の音である。

  「Light Shining Out The Darkness」(3:14)アコースティック・ギターをフィーチュアした小品。 スパニッシュなギター・プレイが鮮烈。 オーヴァーダブされたエレキギターと美しいデュオを聴かせる。

  「Time Machine」(18:00)シャープなリフと超絶アドリヴで繰り広げられるハードなジャズロック大作。 緊迫した演奏が、だれることなく最後まで続く。

(bellaphon 288-09-108)

 Electric Silence
 
Eddy Marron guitars, sitar, zaz, tambura, mellotron, voice
Reinhard Karwatky bass, double bass, super string, mellotron, synthesizer
Peter Giger drums, percussion

  75 年発表の第三作「Electric Silence」 内容は、パーカッションなどに民族楽器を多用したサイケデリックなジャズロック・インストゥルメンタル。 ただし、民族音楽的な面は一つの要素であり、電化マイルス直系のジャズファンクや超絶パワーのフリージャズ、音響機材オタクといった素養も見え隠れする。 素地はユルユルのダウナー系なのに、なぜかハイテクとバカテクを身に付けてしまった、といった感じもある。 AMON DUUL を思わせる切れ味いい即興もあるにはあるが、どちらかというと、同じ即興でも茫洋とした中に音がうっすらと漂って、えもいわれぬ心地よさを生んでゆくところに味わいがあると思う。 「電子の沈黙」というタイトルは、本作の雰囲気をかなりよく伝えている。 アンビエントでスペイシー、なおかつ野蛮で呪術的。 つまり、きわめてドイツ・ロック的な音なのだ。 ヤスパー・ヴァンホッフなど、この時代にはジャズ・ミュージシャンの方からエキゾティズムを前面に出したサイケデリックなスタイルを打ち出している作品が多い。
   ギターは、またもジョン・マクラフリンを思わせるハードコアなプレイ。荒々しく気まぐれなのに、最終的には熱血で感動屋である。 そして、ドラムスは爆発力ある傑物。抑え目のプレイにまで不気味な爆発力を感じさせる。 ベーシストも高音グリッサンドや強烈なヴィヴラート(MAGMA 風)でしっかり目立ち、トリオの音数制約をカバーしている。 全体にスペイシーで茫洋としたところが多いが、血沸き肉踊るスリルもあり、KING CRIMSONMAHAVISHNU ORCHESTRA に太く一脈通じる佳作といえる。 シタール、タブラがけたたましく綾なすかと思えば、意外や、メロトロン・コーラスがぶわっと湧き上がる場面もある。

  「Back To Where We Come From」(8:57)打楽器をフィーチュアした即興風の大作。スチールドラム風の音が印象的。 SOFT MACHINE に近いセンスを感じる。後半のくびきを解かれたように暴れるギター・アドリヴもいい。

  「A Day In My Life」(4:03)シタールやタブラがざわめく、典型的に「インドな」作品。

  「The Road Not Taken」(4:54)ギター中心のスペイシーで緩やかな即興。遠く聴こえる呪術めいたヴォイス・エコーが印象的。ダブルベースのボウイング、ギターのトリルなど初期 KING CRIMSON を連想させる世界。終盤沸騰。

  「Khali」(4:55)シタールとメロトロン・コーラスによるワールド系アンビエント・ミュージック。 もう少しエッジの利きを抑えるとニューエイジになったはず。

  「For Earthly Thinking」(9:38)多彩なアフリカン・パーカッションが支える即興風の作品。 パーカッションに反応するベース、弦楽器の和音のストロークも激しい。 EMBRYO を思い出した。後半はドラムス・ソロ。

  「Electric Silence」(4:30)一般的なフュージョンに近接する比較的キャッチーな作品。 ギトギトとサイケな音がいい。

(bellaphon 288-09-120)

 Vita Nova
 
Eddy Marron guitars, sitar, bass, vocals
Sylvester Levay keyboards
Christian Hoffmn drums, percussion

  71 年発表の作品「Vita Nova」。 ギタリスト、エディ・マロンが DZYAN 加入前に結成していたスタジオ・ユニットによる作品である。 内容は、近現代クラシック調のオルガン、手数の多いパーカッション、爆発力あるギターによる、サイケでアシッド、強引きわまるキーボード・プログレッシヴ・ロック。 ハンガリー系のキーボーディストによる豪腕プレイを軸としたワイルドな演奏は THE NICE や初期 EL&P 直系であり、これ見よがしに攻め立てる変拍子オスティナートや余韻たっぷりのチャーチ・オルガンなど、キース・エマーソンに血の熱くなる方にお薦めできる。 (鋭角的変拍子によるクラシカルなタッチには、英国の EGG と、荒々しさはマリアン・ヴァルガの COLLEGIUM MUSICUM と共通する部分もある) パーカッションも過激な音を用いており、そのグループ名通り、全体に実験的ロックの名に恥じぬ強烈な内容である。 ビートっぽいところや野蛮さなどは THE NICE に匹敵し、サイケがかった酸味と凶暴なルーズさでは上回り、そこへクラシカル・タッチを強引に押し込む力技でも負けていない。 ひょっとすると英国でクラシックをパクった音が流行っているならこっちも負けないぞ、という意気込みがあったのかもしれない。 また、ビート、R&B 調の演奏でも、ヴォーカルさえガマンできれば、カッコいいオルガンを堪能できる。 他のオルガン・ロック・グループと異なるのは、凄腕ギタリストがリーダーシップを取っているためそのギター・プレイも大きくフィーチュアされているところ。 フォルガー・クリーゲルかクリス・スペディングばりのジャジーなフルアコ風のエレクトリックからアコースティック、サイケなシタールまでケッコウ遠慮なくギターが目立っている。 そして、ギターとキーボードがバランスよく演奏に加わると、FOCUSTRACE のようにクラシカルで叙情的な世界が現れてくる。 何にせよ、このとっ散らかった、なおかつ密度が高く本格的な音楽性を感じさせる内容は、エディ・マロンの「優れた若気の至り」といっていいだろう。
   インストゥルメンタルの比率が高く、時間が短いわりには濃密な内容の作品が多い。 歌ものの歌詞はラテン語だそうです。
   ボーナス・トラック一曲目は RARE BIRDPROCOL HARUM を思わせる泣きのバラードが熱狂的な演奏へと発展するこの時代らしい熱い作品。 エンディングのチャーチ・オルガンはほとんど「運命の三人の女神」。 二曲目は音こそサイケでハードだが、モダン・ジャズやジョン・バリーっぽいところもふんぷんとする怪作。オルガンはやはりカッコいいです。

(Life Records / GOD 014)


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