EPIDERMIS

  ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「EPIDERMIS」。 作品は 77 年と 90 年代の再編後の一枚の計二枚。 GENTLE GIANT 影響下の込み入った演奏が特徴。2020 年、75 年録音の音源が発掘された。

 Genius Of Original Force
   
Reiner Neeb drums, glockenspiel, recorder, vocals
Wolfgang Wunsche bass, vocals
Rolf Lonz guitar, recorder, vocals
Michael Kurz keyboards, vocals

  77 年発表のアルバム「Genius Of Original Force」。 内容は、多彩な器楽を動員した技巧的なアンサンブルと三声の込み入ったハーモニーが特徴的なシンフォニック・ロック。 GENTLE GIANT の影響らしく、タイトル曲を中心にほぼ全曲で複雑なマドリガル(多声の追いかけコーラス)を採用している。 GG や初期 YES を思わせる、小刻みな音型のフレージングやリズムを強調した鋭角的な演奏である。 いわゆるロックといったときに連想されやすいブルーズ・ロック系のハードロックとは完全に種類を異にする音であり、どちらかといえば、サイケデリック・ロックからルーズさを取り除いてミニマリズムのフィルタを通したような感じだ。 そういう演奏が素っ頓狂なメイン・テーマを巡って比較的ゆるゆると、しかし幅広く大きく変化してゆく。 運動性はあるのだが、感情移入しにくい抽象的なイメージが主であり、結果としては曲調は暗め。 コーラス以外にもアコースティックな音や三拍子系のアンサンブルなどクラシカルな演出はある。 演奏の展開をリードしているのはギターのフレージングだろう。 キーボードはクラヴィネット、チェンバロ系の音でギターとともに展開を支え、他の鍵盤でよろずサポート役として機能している。 そして、肝心のメッセージを刻み付ける役割を立体的なヴォーカル・ハーモニーが担っている。 全体に、地味でこじんまりした印象はぬぐえないが、丁寧なつくりではある。 GG の影響は、リコーダー・アンサンブルにも顕著だ。 ヴォーカルは英語。 ジャケットは左がオリジナル LP、右が再発 CD のもの。 CD 最終曲は、90 年代に同じメンバーで録音された作品。作風が大きくは変わらないことに驚いた。

  「The Non-Existent Surroundings Of God」(10:40)長いクレシェンドによるフェードインが呼覚ますのは、ベースやクラヴィネットらによる硬く粒立った音色のアンサンブルと教会風のコーラスである。ハーモニーは、デレク・シャルマンとケリー・ミネアのコンビによく似ている。 意外なほどクラシカル。終盤のインストは、本家ほどテクニカルではないが、アブストラクトなフレーズを組み合わせた力演である。

  「A Riddle To Myself」(6:35)どことなく 60 年代ヒット曲のような感傷を引きずるテーマによるメロディアスなバラードが得意の小刻みで込み入ったアンサンブルへと変化。それでも最初のポップス的な味わいを忘れない。

  「Genius Of Original Force」(11:35)GG への憧憬をストレートに表しつつ大胆な展開を見せる力作。 無調風のメロディのセンスは、WEB/SAMURAI にも通じる。クラヴィネット大活躍。

  「Prime Origin」(5:35)ドイツ語では「Der Urknall」と表記されているので、「ビッグバン」のことだと思う。基本的にインストゥルメンタルだが、第一曲のテーマを再現し、短いメッセージを繰り返す。

  「Feelings」(4:52)ボーナス・トラック。90 年代の録音。 ピアノ伴奏によるバラード。ハーモニーやメロディ・センスは大きくは変わらない。


(KERSTON GER 65063 / WWMS 010)


  close