ETERNIDAD

  アルゼンチンのプログレッシヴ・ロック・グループ「ETERNIDAD」。 70 年代のグループ。 作品は 77 年の一枚のみ。

 Apertura
 
Daniel Mendez acoustic & electric guitar, harmonica, vocals
Roberto Mendez acoustic & electric guitar, lute, vocals
Claudio Pedra piano, Fender Rhodes, Hammond organ, synthesizer
Robi Massarotto bass, vocals
Luis Yanes drums, percussion

  77 年発表のアルバム「Apertura」。 内容は、たおやかでアコースティックな歌ものをカラフルな音色のキーボードとせわしなくもチャーミングなギターで彩った、パストラルなプログレッシヴ・フォークロック。 テクニカルなキーボードとギターのコンビネーションによる性急なインスト・パートと、アコースティック・ギターとピアノ、ヴォーカル・ハーモニーによるフォーク・タッチのアンサンブルが同時に存在する、興味深い音だ。 おそらく、英国プログレッシヴ・ロックの影響をアルゼンチンのフォーク・ソングに馴染ませた音なのだろう。 端的にいって、初期の YES と共通するイメージがある。 細かいパッセージが交錯する技巧的な演奏に、アコースティック・ギターの生む柔らかく瑞々しい涼風が吹き抜け、爽やかな聴き心地がある。 プログレ特有の複雑な楽曲構成は見られず、あくまで、素朴なメロディのよさとトリッキーながらもていねいなアンサンブルを組み合わせた作品が主である。 ギタリストが二人いるので、それぞれエレキギターとアコースティック・ギターを分担していると思われる。
  最大の特徴は、ラテン風のメロディ・ラインと伸び伸びとしたコーラスによるたおやかで優美な歌と尖り気味の器楽との愛らしいコントラストだろう。 アルゼンチン・ロック特有の優美さがあり、それが英国ロックのファンタジー性にデリケートな官能美を加えている。 歌の表現は、イタリアほどは熱くなく、ブラジルよりは細やかだ。
  バンドネオンの他にも、フルートやヴァイオリンなどがクレジットなしで使われている。 後半へゆくにしたがい、アコースティックな歌ものが主役となってポップス、ソフト・ロック色が現れるが、前半のストリングス・シンセサイザーとナチュラル・トーンでピッキング主体のギター・プレイによるアンサンブルは、正しく 70 年代中盤のプログレッシヴ・ロックの音といえるだろう。 とにかく若々しく爽やかだ。 録音がややチープだが、そういうことも許せる内容です。 ブラジルの BACAMARTERECORDANDO O VALE DAS MACAS に近い音ながら、演奏に、よりチャート・ポップス的な安定感があります。

  「Suite: Pensamiento Y Vida」(7:45)素朴なフォーク・ロックと YES 風の技巧的なアンサンブルがブレンドした佳曲である。 ゆったりとメロディアスなテーマを中心にしながらも、ナチュラル・トーンの速弾きギター、たたみかけるキーボードなど意外なまでに機敏な曲展開を見せる。

  「Javier Dejo De Ser Nino」(3:45)フォーキーにまとめたラヴ・ロック調の作品。 リズミカルなアコースティック・ギターのストロークとさりげなくもカラフルなキーボード・オブリガート。ハーモニーも美しい。

  「Cueno De Una Nina」(6:58)オルガン、ギターが活躍する、緩急曲調が融通無碍に変化する作品。 テーマ・パートのトリッキーなアンサンブル、フォーキーで快調なメイン・ヴォーカル・パート、そして間奏部の大胆な展開。 弾き語りフォークにオルガンとエレキギターで厚みをつけている。ピアノも奔放だ。

  「Mas Cerca Del Horizonte Eterno」(4:23)初期 GENESIS の幻想風味のある作品。コラール風のコーラス、弦楽奏あり。

  「Empezando Por Uno Mismo」(2:59)アメリカンなカレッジ・フォークロック風の小品。

  「Ciudad Mirame」(6:48)おだやかな曲調ながらもプログレ的な音を詰め込んだ佳品。 ギターのみならずベースも YES 風になっている。 ギターは、なぜかソロだけハケット風。バンドネオンがいい感じで添えられている。

  「Ahora Que Estamos Solos」(2:30)アコースティック・ギターのシャフル・アルペジオとオブリガート、ずしんと響くベースによる素朴なフォーク・ソング。 パーカッションもあり。 ハーモニーにオブリガートするギターとベースがカッコいい。

  「Pausa Para Una Ciudad Que Espia」(1:19)アコースティック・ギター、ヴァイオリン、バンドネオン、ピアノが織り成すロマンティックなインストゥルメンタル小品。 さらりとアドリヴ風の展開であり、切なく美しい。 珠玉の埋め草。

(MRD-2004)


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