EXODUS

  ポーランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「EXODUS」。 76 年結成。83 年解散。作品はシングル・コンピレーション含め三枚、と思っていたら 77 年録音の幻の一作目が発掘された模様。(ただし、「The Most Beautiful Dreams: Anthology 1977-1985」でのみ入手可)

 The Most Beautiful Day
 
Andrzej Puczynski guitar, acoustic 12 string, bass, synthesizer, vocals
Wojciech Puczynski bass, guitar
Wladyslaw Komendarek Yamaha organ, Arp & Roland synthesizer, Hohner C-3 clavinet, strings, Crumar Multiman S, backing vocals
Pawel Birula vocals, acoustic 12 string
Zbigniew Fyk drums, percussion, backing vocals

  80 年発表の第一作「The Most Beautiful Day」。 内容は、女性的なハイトーン・ヴォイスのハーモニーとシンセサイザーをフィーチュアした、リズミカルなシンフォニック・ロック。 GENESIS 的な「メロディアスにして弾むような」演奏スタイルと、YES の透明感あるやや硬質なサウンドに、70 年代終盤のエレクトリックなポップ・テイストを加えて、テクニックを少し削ったような感じである。 何気なくも変拍子だったりするが、音の感触そのものは、DRAGONFLYSTEP AHEAD のようなシンフォニック・プログレとハードポップ/産業ロックの中間という際どい位置にある。 演奏の中心は、甘めのヴォーカル・ハーモニーと、アナログ特有の不可思議な美音をもつシンセサイザー。 エレキギターは、エフェクトをギンギンに用いて勝手気ままにオブリガートをしたり、個性的なリフやコードを刻む派手めの変わり者である。 そして、初期 GENESIS 風の 12 弦ギターのアンサンブルや、開放弦とローポジションの多用/ヴァイオリン奏法/セミアコ風の乾いた音など、もろにスティーヴ・ハウ風のプレイも達者にこなしている。 ヴォーカルにしてもギターにしても、グラムというかニューロマ風のケバさがあるところが特徴だ。 キーボードはさまざまな音で主役を張り、またアンサンブルのバランス面でも全体をリードしている。
   クラシック・スタイルのロックを演奏するというポリシーをバンド結成時に掲げたそうだが、その意思も実装もオリジナルなものというよりは英国プログレの影響下のようだ。 たまに謎めいた(エキゾチックというべきか)メロディや和声も現れるが、総じて演奏は華やいでおり、東欧のイメージを払拭する。 ヴォーカルの技量はかなりのものであり、A 面のように歌い込む作品では、甘さのなかに巧みな表情が息づいている。 聴きものは、B 面いっぱいを使った、同時期の OMEGA を思わせる大作。ギターも大活躍する。 ヴォーカルは、おそらくポーランド語。 この言葉の響きのせいか、SKALDOWIE との共通性も感じる。 2002 年 CD 化。

  「Ci Wybrani - Stary Noe(The Chosen Ones)」(9:00)ギターがけたたましいグラマラスな前半に対し、変拍子のオスティナートをブリッジにして雷鳴に導かれる後半は、アコースティック・ギター伴奏のさびしげなバラード(スキャットなど TAI PHONG 風!)となって涙を誘う。 シンセサイザーも隙間風のように哀しく吹き抜ける。

  「Zloty Promen Slonca(A Golden Beam Of Sun)」(5:15)軽快なリフ、80' 風のキャッチーな歌メロで迫るポップ・ロック。 基本的に器楽が充実した勇ましい調子だが、か細く女性的なツイン・ヴォーカルのおかげで甘く柔らかなイメージもある。 STYXREO SPEEDWAGON なんて名前がスラスラと出てくる。(決して好きではないです) 前半から現れるシンセサイザーのテーマは、WINDCHASE の楽曲のものに似過ぎだが問題ないのだろうか。

  「Widok Z Gory Najwyzszej」(5:45)さりげなくもニューロマ風のメランコリックなバラード。 わななくようなシンセサイザーの演奏が初期のトニー・バンクスを思わせる。 2 曲目ともども米国メインストリームのヒット路線を着実になぞっていると思う。

  「Ten Najpiekniejszy Dzien(The Most Beautiful Day)」(19:20) クラヴィネットに象徴されるリズミカルでけたたましいパートと YES の叙情パート調が合体し、ドラマを描く力作。 序盤は若干ニューウェーヴ調もあり。 後半 13 分辺りの軽快な疾走パートが東欧ロックらしい。 ストリングス・シンセサイザー、ヴァイオリン奏法ギター、ヘヴンリーなハイトーンのハーモニーなど、YES になりきるところも。 ほのかな無常感も漂わせるハッピーエンドもいい。
  
(MUZA SX 1934)

 Supernova
 
Andrzej Puczynski guitars, acoustic guitar
Wojciech Puczynski bass
Wladyslaw Komendarek ARP Omni, ARP-Soloist, Roland SH-2000, Horner clavinet C-3
Pawel Birula vocals, 12 string acoustic guitar
Zbigniew Fyk drums, percussion

  82 年発表のアルバム「Supernova」。 内容は、シンセサイザーとヴォーカルによるメタリックな未来色と重厚な演奏からシンフォニック・ロックと銘打って間違いのない作品から、リズムが強調されたニューウェーヴ、AOR 風味が漂う作品など、やや散漫になっている。 シンセサイザー、ハイトーンの個性的なヴォーカルをフィーチュアしてはいるものの、微妙な時代における微妙な線上の作品といえるだろう。 うねるようにエモーショナルなギターの存在は、どちらかといえばオールドウェーヴ側といえそうだ。 シンフォニックな作品では、ロマンティックというよりは、気品と厳しさが特徴的である。 ただし、A-3 のような作品では、思い切り感傷的な姿をさらけ出し(独特の無常感はあるのだが)、4 曲目は、思い切りニューウェーヴ系のハードポップである。
  
(SX 2108)


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