François Breant

  フランスのキーボーディスト「François Breant」。 1947 年生まれ。 CRUCIFERIUSNEMO を経て 70 年代後半に「フランスの Virgin」EGG レーベルよりソロ作品を発表す。 現在はアフリカン・ミュージックのプロデューサーらしい。

 Sons Optiques
 No Image
Didier Lockwood electric violinJean-Louis Chautemps tenor sax
Pascal Arroyo bassGuy Delacroix bass
Eric Letourneux alto saxMarc Perru guitars
Emmanuel Lacordaire percussion, drumsAlbert Malcoeur cymbal, pedal timpani
François Breant Steinway piano, ARP Odissey, chorus

  79 年発表の第一作「Sons Optiques」。 内容は、重量感あるアコースティック・ピアノの響きと、エレクトリック・キーボードの軽やかなさえずりと豊かな旋律が絶妙に交差し、そこにエレクトリック・ヴァイオリンがつややかに彩りをつける、きわめてユニークなインストゥルメンタル・ミュージック。 たとえば、マイク・オールドフィールドからケルト、英国風味を取り除いて、フォーレやラヴェルのタッチを加味した感じだろうか。 ピアノもいい音だが、アナログ・シンセサイザー特有の豊かなサウンドの魅力は満載されている。 ピアノが中心にある音楽によくあることだが、本作品でも、打楽器がリズム・キープの役割よりも多彩な音でアクセントをつける役割を果たしている。 しいていうならば、近代クラシック影響下のニューエイジ・ミュージックだが、スリルやストーリー性、たたみかける性急さ、ポジティヴな力強さ、自由闊達さといったイメージを抱かせる作風であり、「プログレ」という表現が一番似合う。 シンセサイザーのみを駆使した作品もあるが、音響面の冒険とともに、クラシカルなアンサンブルとしてもきちんと成立させるところが特徴的である。 したがって、電子音楽、シンセサイザー・ファンのみならずシンフォニック・ロックのファンにもお薦めできる。 また、参加メンバーから想定されるような、いわゆる ZEUHL 的な音は、一部ではあるが主ではない。 一方、オリエンタルな表情を見せるところもある。
   旧 LP A 面は、架空の映画のサウンド・トラックらしい。 スリリングでカッコいい序章から、ライル・メイズ風の牧歌的なシンセサイザーと重厚なピアノ、しなやかなヴァイオリンが交差する雄大なニューエイジ調へ、さらにクラシカルで神秘的な緩徐楽章から、エネルギッシュに躍動するクライマックス(効果音によるテクノなヒネリがカッコいい!)を経て、東洋風味のある謎めいた終章へと流れ込む、ドラマティックな作品である。 劇的にして軽やかなダンスのイメージもあるところがみごとだ。 ほぼドラムレスでベースやピアノがリズムを支えている。 アルバム・タイトルが「光の音」の意なので、映像を撮影したが出来が悪いので破棄して(ジャケットから想像すると、である)音だけ残したのが本作なのかもしれない。
   B 面ではサックスも現れるが、フランス人らしい洒落っ気こそあるものの不思議とジャズっぽさはあまり強まらない。 やはりピアノとシンセサイザーが主役であり、アンサンブルもいいが、とりわけシンセサイザーの音色がすばらしい。 存在感というか、なぜか郷愁のある摩訶不思議なサウンドである。 ヴァイオリンも繊細な音で切り込んでくる。
  プロデュースはフランソワ・ブレアンとアンドレ・ハーウッド。 打楽器奏者としてアルベル・マルクールが参加。 ニューエイジ・ミュージックの隆盛も見極めた好作品。

  「Les Journaux Annoncent Le Guerre (Generique)」(3:37)重量感あるピアノとシンセサイザーによるシリアスで衝撃的なジャズロック。 メイン・テーマ周辺の邪悪さは EL&PMAGMA の合体調だが、弾力あるアンサンブルはジャズロック、フュージョン的。 ベースはきわめて MAGMA っぽい。

  「Vacances A Concorneau (Flash Back)」(3:04)ワールド・ミュージック・テイストもあるニューエイジ風フュージョン。 エレクトリック・ヴァイオリンが炸裂。

  「De Retour A Paris」(4:09)近代クラシック風のピアノ伴奏でシンセサイザーが伸びやかに歌う室内楽風の作品。

  「Scènes De Foule Et De Pursuite Pendant Le Carnaval」(3:52)各種キーボードが奇天烈なサウンドで小刻みなパッセージをど迫力でたたみかける技巧的な作品。ノイズや具象音楽のようなアプローチもあり。忙しなさが特徴。

  「Dilemme De Jeanne Au Restaurant Chinois」(4:01)東洋風のエキゾチズムあふれる静かな作品。 さまざまな音が湧いては消える、いかにも特定のシーンの B.G.M らしい作品だ。


  「Survol Del Rio」(3:07)ピアノ伴奏、管楽器風のシンセサイザー、エレクトリック・ヴァイオリン、弦楽風シンセサイザーらによるメロディアスかつ未来っぽいイメージをかきたてる。小品ながらも傑作だと思う。 サックスはキーボードでは出せない人力タッチで聴きやすさをもたらすために動員されたか。

  「Scènes De Mobilisation(Flash Back) Et Retrouvailles Avec Bruno」(9:41)初めてドラムスの音が聴こえる。バグパイプ風のシンセサイザーが印象的。B.G.M をいくつかつなげたような内容だ。

  「Baiser Au Crepuscule Et Fin」(4:14)宇宙人が見たこともない管弦楽器を奏でているような不思議のアンサンブル。 ヴァイオリンの音にこんなに安心感があるとは。 古い映画音楽のようなタッチのエンディングが泣かせる。
  
(EGG 900 553)

 Voyeur Extra-Lucide
 No Image
François Breant keyboards, vocals on 9Felix Blanchard keyboards
Guy Khalifa keyboards, vocals on 4Emmanuel Lacordaire percussion, drums
Pascal Arroyo bassMick Martin guitars
Jean-Michel Kajdan guitars on 2Didier Lockwood violin
Stella Vander vocals on 9Klaus Blasquiz vocals on 9
Liza Deluxe vocals

  80 年発表の第二作「Voyeur Extra-Lucide」。 内容は、80 年代初頭らしく、モノ(ARP Odissey、Oberheim SEM)・ポリ(Prophet 5、YAMAHA CS 80 ら)両シンセサイザーと電子ピアノを多用し、クラシック、シンフォニックなプログレ調にフュージョン・タッチを加味したインストゥルメンタルである。 作風は、第一曲が象徴するように、リズムを強調して前作よりも明朗でストレートになった。 ジャズロック指向を推し進めたといってもいいだろう。 それでも、アルバムの内容はいわゆる流行の「フュージョン」のような単調さはなく、ラリー・カールトンと TANGERINE DREAM の合体モノからクラシカルなオーケストラ風の作品、正統ニューエイジものまで多彩である。 このバラエティならば、フュージョン寄りを揶揄されるどころか、オーセンティックな音楽性と 70 年代の終盤に次の時代の音を予見、先取りしていた慧眼を称えるべきだろう。 3 曲目では管弦楽のような音も聴かれるが、オーケストラのクレジットは見当たらないため、シンセサイザーによる THE ENID ばりのシミュレーションなのだろう。 メカニカルで重厚なシンセサイザー・サウンドには同時代のヴァンゲリスに共通するところもある。 丹念な音の積み重ねと編み込みには、クラシカルな美感にとどまらない、ユーモアや微笑ましさ、ロマンティックな暖かみといった、人の息遣いのある魅力がある。 また、全体としては、前作よりも開放感がある。 これは、ストレートにジャジーなギターの存在、シンセサイザーのフレーズがメロディアスになったこと、アコースティック・ピアノとアナログ・シンセサイザーの絡みにヒネリが少ないこと、などに起因するようだ。 なんといっても 1980 年ですからね。 特に残念なのは、「フュージョン」的な音が飛び出し過ぎると、本来のサウンドやアンサンブルのアブストラクトでダークな個性の魅力をやや損ねてしまうことである。 (ところが、チープなグルーヴを売りにした悪名高き 80 年代らしさが、リアル過ぎるシミュレーションが息苦しさをもたらしている現代においては、かえって新鮮で、いい感じに思えるから勝手なものである) 最終曲「We Ate The Zoo」は、MAGMA のベラスキ、ステラ・ヴァンデも参加した小演劇風の歌もの。 ブレヒトというか、レコメンというか。 また、ボーナス・トラックでは、パット・メセニーばりの上品なニューエイジ/フュージョン・ミュージックも提示している。
  
  「Poursuite Sur Le Peripherique Nord」(5:06)
  「8 Aout 0H15 125-eme Rue」(5:13)
  「L'Amour Au Grand Air」(5:59)
  「Cadence D'Eperonnage」(3:59)傑作。

  「Danse Rituele Talmouse」(4:19)
  「L'Eveil De L'Acrobate」(3:08)ロックウッドのヴァイオリンをフィーチュアした、キーボーディスト版マイク・オールドフィールド。佳作。
  「L'Obus Rouille Trouve Dans La Dune」(3:09)キャッチーにしてクール。このクールさは硬質なシンセサイザー・サウンドからきている。
  「Les Funerailles Du Voyeur」(4:13)重厚、神秘的なオーケストラ演奏。
  「We Ate The Zoo」(2:13)

  「KO」(3:37)CD ボーナス・トラック。
  「Fille De La Ville」(3:47)CD ボーナス・トラック。
  「Passage De La Fonderie」(1:28)CD ボーナス・トラック。
  
(EGG 900 584 / FGBG-4429.AR)


  close