ICONOCLASTA

  メキシコのプログレッシヴ・ロック・グループ「ICONOCLASTA」。 80 年結成。作品はライヴ盤を含めて十三枚。 スタイルはツイン・ギターとキーボードによるパッショネートで若干ジャジーなシンフォニック・ロック。 最新作は 2013 年の「Movilidad」。 近年のロシア産のバカテク・ヘヴィ・シンフォニック・ロックの先駆者の位置にあるグループ。

 Resurrección
 
Alma Castillo vocals
Greta Silva vocals, bass
Victor Baldovinos drums, assorted percussion
Ricardo Ortegon guitars
Ricardo Moreno electric & acoustic guitars, synthesizer, backing vocals

  2009 年発表の第十二作「Resurrección」。 フランスでのライヴ盤に続く久々のスタジオ・アルバム。 二人の女性ヴォーカルをフィーチュアしたジャズ/フュージョンやラテン・ポップ、フォーク風味と攻撃的なロックを組み合わせたユニークなシンフォニック・ロック。 文脈外れに近い歪んだヘヴィなギターと大暴れのドラミングに驚かされる場面もあるが、アコースティックな表現とともにずいぶんとソフトなニュアンスが出せるようになっている。 動きのあるダイナミックな展開になったときにも、クラシカルなタッチがうまく活かされており、全体としてシンフォニック・ロックとしての魅力も向上した。 アコースティックでフォーキーな歌ものによるアクセントもいい。 そして、最終的には、キーボードではなくギター中心でこれだけクラシカルでヘヴィな EL&P 風のロックができることに改めて感動する。 リカルド・モレノ氏の音楽的な志向の変遷を追いかけるのは、忠実なリスナーにとって一つの楽しみになるだろう。 いわゆる「辺境もの」の魅力もたっぷりあり。 ヴォーカルはスペイン語。

  「Sin Escape」(3:02)
  「Posesión En Cuerpo Y Alma」(4:51)
  「Huapanguero」(5:05)
  「Hijo」(4:35)
  「Deidad Solar」(5:51)「Canario」を思い出す愛らしく、奇天烈なクラシカル・ロックの力作。
  「Huautla - Homenaje A María Sabina」(11:19)
  「La Resurrección De Maquiavelo」(5:41)
  「El Perro De Pavlov」(5:10)
  「La Búsqueda De La Verdad En Sí Mismo」(8:32)
  「La Ética Del Verdugo」(6:20)
  
(CDLN-41)

 Iconoclasta
 
Ricardo Moreno electric & acoustic & classical & 12 string guitars
Nohemi D'Rubin bass
Ricardo Ortegon electric guitar
Rosa Flora Moreno acoustic & electric piano, string emsenble, synthesizer
Victor Baldovinos drums, timbals

  83 年発表のデビュー・アルバム「Iconoclasta」。 内容は、ギター、シンセサイザーを中心としたスピーディな演奏が特徴のシンフォニック・ロック。 クラシカルなアンサンブルを無理やり電化し、エレキギターやヘヴィなリズム・セクションなどロック的な要素を無造作に放り込んだ怪作である。 演奏をリードするのは、アコースティック、エレクトリックを交えるツインギターとオルガン、シンセサイザーなどのキーボード。 クラシックのモチーフもふんだんに現れ、シンフォニック・ロックのファンにはうれしい内容になっている。 演奏そのもののバランスは YESGENESIS に比べてかなり危ういが、ポリフォニックを意識した作曲と 4 ビート・ジャズが突如現れるような過激なアレンジによって、プログレとしての位置はキープしている。 また、とってつけたようなフュージョン・タッチも 70 年代にはなかった音でもある。 おもしろいのは、ワイルドなサウンドと荒っぽく突き進む演奏にもかかわらず、EL&P のようなハードロックとプログレの接点にあったグループとも異なっていることだ。 ワイルドなのに目を惹くようなプレイはさほどなく、あくまでアンサンブル志向である。 むしろ初期の GENESIS に感性/アプローチは近いかもしれない。 一部の 70 年代初期イタリアン・ロックにも通じる気がするのは、アンサンブル志向ならば演奏は丹念で丁寧なはず、という固定観念を突き崩すところが共通するからである。 また、目指している方向は違うものの、パフォーマンスの感触が強引な演奏で破綻しかかった瞬間の YES とも共通する。
  時代錯誤的なファズ風の音色とせわしない弾き倒しで迫るギターが、無理やりジャジーなスウィング感を出そうと躍起になったり、ベースが強引にオブリガートで食い込んだりと、あっけにとられる場面も多い。 しかしながら、唖然としてるうちに、ストリングス・シンセサイザーとアコースティック・ギターによるフュージョン・タッチの柔らかな広がりの中へと惹き込まれ、気がつけば、それなりにメロディアスで涼感すらある演奏に聴き入ってしまう。 攻撃的な演奏が主なだけに、「引き」のアコースティックな演奏が映えるのも、予期せぬ効果なのかもしれない。 終曲の雄大かつオペラティックな展開には、思わずねじ伏せられてしまいそうだ。
  ギタリストは、おそらくクラシックの素養があるプレイヤーであり、ロックの方がむしろ不慣れなのだろう。 実直かつ技巧的ながらも、切れや俊敏さもしくはグルーヴ感といったポップスには普通のカッコよさの演出が、苦手なようだ。
  平板で立体感に欠ける録音は確かに気になるが、全編を蓋うエネルギッシュなプレイは、その難点を吹き飛ばす勢いをもっている。 そして場面展開には、プレイの荒々しさとは裏腹な、クラシカルで知的な構築性や前衛的なアプローチに対する計算も感じさせる。 全編インストゥルメンタル。 作曲とアレンジはギターのモレノが担当。 各曲も鑑賞の予定。

  「Cuentos De Arquicia」(Stories Of Harlequin)(5:10)
  「Dorian」(Dorian)(6:17)
  「Manantial」(Spring)(4:41)
  「Memorias De Un Hechicero」(Memories Of Bewitching)(7:03)
  「Estudio VI」(Estude 6)(5:47)
  「Origen Cuspide Y Muerte」(Origin Summit And Death)(6:34)
  「Fuera De Casa」(Out Of Home)(8:30)

(Art Sublime ASCD 289-001)

 Reminiscencias
 
Ricardo Moreno electric & acoustic & classical guitars, synthesizer
Ricardo Ortegon electric guitar
Nohemi D'Rubin bass, acoustic guitar, orquestrator
Rosa Flora Moreno acoustic piano, organ, orquestrator, synthesizer
Victor Baldovinos drums, percussion

  86 年発表の第二作「Reminiscencias」。 アルバム・クレジットには 85 年とあるが、メキシコを襲った地震の影響で発表は 86 年にずれこんだそうだ。 内容は、前作でアピールしたたたみかけるような攻撃性に加えて、メロディアスでエモーショナルな表情も強調されたシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 今回は、ピアノやストリングス・シンセサイザーを用いた叙情的で、雄大な広がりをもつシーンが増えている。 オーケストラを模した豊かな音色のキーボードと、爽やかなメロディをさえずるように歌うリコーダー、フルートが目立っている。 一方、ギターはリリカルな歌よりもスピード感溢れる演奏で全体をリードしている。 また、本作ではジャズ色は抑えられ、よりクラシカルなプレイを中心にした演奏になっている。
  クラシカルな「静」とハードロック風の「動」の変化がアルバム全体にスケールの大きさを付与しており、前作を凌ぐシンフォニックな音楽になっている。 素朴な調べとともに悠然とたゆとうキーボード・アンサンブルに厳かなコラールが響き、パッショネートなギターがラテンの薫りを漂わせて疾走すると、そこには 70 年代プログレ王道にエキゾティックなスパイスを効かせた独特の世界が広がる。 痛快にして感動的な聴き心地だ。 最終曲の大作では、オペラ風のヴォーカルもフィーチュアし、スケールの大きさを見せつけ感動を呼ぶ。 おそらく全ディスコグラフィー中の最高傑作でしょう。
  CD は第一作との 2in1。 容量制限ためか、前半の曲がすべてフェード・アウトしている。

  「La Guestacion De Nuestro Mundo」(The Birth Of The World)(3:10)
  「El Hombre Sobre La Tierra」(Man On Earth)(9:06)
  「La Era Del Los Metabolismos Tecnologicos」(The Era Of Technological Metabolism)(5:44) もし 1 曲だけお薦めするとすれば、これ。本作品は、このグループの音楽と性格をよく伝えていると思います。
  「Reminiscencias De Un Mundo Sin Futuro」(Reminiscences Of A World Without A Future)(17:58)
    1)「Presagio De Extincion」(Foreboding Of Extinction)
    2)「Premeras Conflagraciones」(Initial Conflagration)
    3)「Secuelas Holocausticas」(Holocaustic Sequences)
    4)「La Conciencia En El Ocaso」(Conscience At Sunset)
    5)「Un Grito En El Vacio」(A Scream In The Void)
    6)「El Abbadon」(The Abbadon)
    7)「Los Insectos」(The Insects)

(Art Sublime ASCD 289-001)

 Soliloquio
 
Ricardo Moreno guitars, keyboards
Ricardo Ortegon guitar
Nohemi D'Rubin bass
Rosa Flora Moreno keyboards
Victor Baldovinos drums

  87 年発表の第三作「Soliloquio」。 タイトルは「独白」の意。 91 年発表の CD では同年発表の第四作目の EP「Suite Mexicana」をカップリングしている。(曲順はこちらが先)
   第三作「Soliloquio」の内容は、女声スキャットを交えたキーボード中心のアンサンブルによるファンタジックなシンフォニック・ロック。 前作のやや落ちつきある演奏スタイルが継承されており、独特の忙しない演奏と比べると格段に聴き心地がいい。(リズム・セクションが走りすぎないのが奏功している) もっとも、モレノ氏がギターとキーボードのどちらに注力するかで曲の雰囲気が大きく振れるようだ。 たとえばギターに力を入れると、15 分を越えるアルバム表題曲の大作のように、忘我の熱気に満ちたディストーション・ギターがアンサンブルに火を放ち、幻想的な空気を携えたまま、一気に暴走が始まる。
   第四作 EP の「Suite Mexicana」はアコースティックでエキゾチックなパートも交えた陽気で祝祭的なクラシカル・ロック作品だが、ひとたび沸騰すると転倒寸前にまで傾いだ忙しない演奏へと突っ込む。 たとえていえば EL&P の「Canario」のようなアンサンブルが危ういままに延々続く感じ、といえばいいだろうか。 クラシカルでチャーミングなフレーズを紡ぐエレクトリック・ギターとばたばたしたリズム・セクションの取り合わせは、往年のイタリアン・ロックに通じる。 いろいろいったが、それでもどこか惹きつけるところがあるから凄い。
  全曲リカルド・モレノ氏の作曲。

  第四作「Suite Mexicana」より。
  「Mestizaje (26-a-1)」(7:18)
  「Revolucion en 6/8(Revolution of 6/8)」(7:46)

  第三作「Soliloquio」より。
  「Cuando La Musica Era Espiritual Y No Fisica O El Adivino Del Ultimo Periodo De Paz」(6:06)軽やかなサウンドのシンセサイザー・オーケストレーションが小気味いいクラシカル・ロックの佳作。インストゥルメンタル。
  「Solo Tu Fruto」(6:58)透明な女声ヴォカリーズ、ヴォーカルを交えたスペイシーで陰影に富むシンフォニック・チューン。 昔の日本の SF アニメを思い出す。
  「7:19」(7:37)美声の男声ヴォーカル(ノン・クレジット)とギターを大きくフィーチュアしたメロディアス・ハードロック。 ギター・ソロ、フルート(ノン・クレジット)・ソロ、やばい。
  「Soliloquio」(15:05)厳かでトラジックな歌ものシンフォニック・ロック。怒りを秘めたようなダイナミックな表現が魅力。グレグ・レイクのファンでしょうかね。中盤のサックスのような音もキーボード? このあたりからエンディングまで数分以上ほぼテンションを落とさずに駆け抜ける。

  以下 CD ボーナス・トラック。
  「Domesticando Humanos」(1:26)即興か。スペイシーな音響系キーボードとドラムス乱れ打ち。
  「Lectura Auditiva」(2:56)電子音とドラムス乱れ打ち。
  「La Explosion」(3:24)電子音とドラムス乱れ打ち。PINK FLOYD 的。
  「Tenancingo」(1:23)
  
(DR 007 + DR 004 / CD SD 05)

 La Eternidad De Lo Efimero
 
Hector Hernandez guitars
Ricardo Moreno keyboards
Bernardo Anaya bass
Hector Rosas drums, percussion

  87 年発表の作品「La Eternidad De Lo Efimero」。 PRAXIS 名義の作品。 内容は忙しなく突っ走り続けるクラシカル・ロック・インストゥルメンタル。 複数のギターやギターとキーボードがカラフルなアンサンブルを成して、小太鼓調のドラムスとともに駆けずり回る。 フレーズはクラシック風ではあるが、基本は HR/HM 的なマインドが底流にあると思われる。 (これは、現代では EL&P が HR/HM といわれるのと同じ意味合いである) 終始落ちつかないのでラジオ体操をやっているような気分になるが、素朴な歌心は込められており、独特の性急でリズム音痴なペースになれれば、音を読み取っていく楽しみはある。 録音や製作の仕方によっては、もっとグレードが上がったであろう。 グループ名は、ICONOCLASTA のための「練習」という意味だろうか。

  「Al Filo Del Abismo
  「Praxis
  「No Se Quien Soy Desde Que Se Quien Eres
  
  「Equinoccio
  「La Eternidad De Lo Efimero
  
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 Adolescencia Cronica
 
Hector Hernandez guitar
Alfredo Raigosa bass
Ricardo Ortegon guitar
Victor Baldovinos drums, percussion
Ricardo Moreno keyboards

  88 年発表の第五作「Adolescencia Cronica」。 内容は、ハードな押し捲りシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 ベーシストの交代とギタリストの加入があった模様。 キーボードのプレイやメローな展開にほのかなジャズ・フュージョン色があるも、ヘヴィで粘っこいツイン・ギター(ややスティーヴ・ハケット似)が饒舌に絡み合いオルガンの速弾きが炸裂し、ドラムスが雪崩をうって転げ始めると、往年のハードロック系のシンフォニック・ロックや最近のメタル系フュージョンに近くなる。 リード・ギターの絡みは、実際プレイヤーが今何の曲のどこを演奏しているのかを見失うほどに過剰であり、リズムがヨレようが何だろうがお構いなしに続いてゆく。 調性の揺らぎもそういう表現を意図しているのか、ただ単に「合わなくなっている」のか分からない。 この辺りの大胆さ(無神経さ?)が最大の個性だと思う。 シンプルであわただしいリズムは 80 年代以降のネオ・プログレ特有の癖だが、武骨で攻め一辺倒な演奏にはプログレとハードロック、ヘヴィ・メタルをあえて未分化にしたまま音楽性を高めた EL&P のような 70 年代ロックに近いマインドを感じる。 勢い一辺倒であり、音量や音質の変化なしに無窮動でひた走る。 そこへ現代音楽的で難解な調子を突っ込んでしまって平然とすっ飛ばすからすごい。 アブストラクトでヘヴィな変拍子ロックと形容できると気づいたが、じつはそれはプログレ・メタルの定義なのだから、この演奏スタイルもそう呼んでいいはずだが、「プログレ・メタル=技巧的」という図式に当てはまらないような気がして、どうしても抵抗がある。 また、音楽に何か主張があるようだが、ずっと怒っている人の話を聴く気がしないのと同じく、これだけ休みなくハイテンションで迫られるとその主張を呑みこみ切れない。
   全曲インストゥルメンタル。 最終曲は、野性味あふれるドラム・ソロから RETURN TO FOREVER 風に思えなくもないキーボード・ソロ、スピード・メタル風のギターを経て、SOLARIS のようなフルートが舞う快作。 2000 年 MUSEA よりの再発 CD。
  
  「Six Seconds Of Silence」(0:06)
  「Vivir Con El Deseo Sin La Esperanza」(6:23)
  「Es Una Historia」(6:57)
  「Esquizoide」(5:00)
  「M´s All´ Que La Cortina Moral」(4:29)
  「El Alivio Del Clímax」(11:01)
  「Otra Vez En El Camino... Por Mientras」(9:17)
  
(FGBG 4356.AR)

 En Busca De Sentido
 
Hector Hernandez guitar
Alfredo Raigosa bass
Ricardo Ortegon guitar
Victor Baldovinos drums, percussion
Ricardo Moreno keyboards

  89 年発表の第六作「En Busca De Sentido」。 内容は、またもや一歩も引かぬ譲らぬ、勇ましきハード・シンフォニック・ロック。 明確でメロディアスなテーマを中心に据えた、前作よりはネオ・プログレ寄りのアレンジになり、アンサンブルにも整合感と安定がある。 キーボード・サウンドも、チープながらも、芯のあるものとなり、ギターとともに主役として演奏をしっかりリードしている。 ギターのヨレ、他人の演奏無視気味のインタープレイは前作ほどではない。(ただし、弾き捲くり、弾き倒しはそのまま) 2 曲目のように、フォーキーな哀愁に満ちた展開も自然と巧みにこなしている。 5 曲目ではサンプリングのコラールを活かしたニュー・エイジ風の優しげなテイストも披露。これは新機軸であり朗報である。 ここを出発点にテーマの展開から緩急や調子の変化をもっと盛り込めれば、音楽によるより自然なストーリー・テリングができたに違いない。
   全曲インストゥルメンタル。 6 曲目のタイトルやからだ中にネズミ捕りをくっつけた、いろいろと問題の多そうな人々の写真で構成されるジャケットから、政治や社会への風刺精神、メッセージが見て取れる。 2000 年 MUSEA よりの再発 CD。
  
  「Mentes Encapsuladas」(7:23)インナーに詩が載せられたメッセージ曲。
  「La Vida Es Un Juego Hasta Que Pierdes」(7:20)
  「Yonkie (dedicada A Charlie Parker)」(7:17)バロック音楽風のクラシカルな遁走曲。テーマがチャーリー・パーカーの曲なのか?
  「La Muerte Complemento De La Consagración」(7:44)
  「La Obsesión Por Buscar A Alguien」(8:19)ミドルテンポで終始穏やかな作品。やればできるじゃん。
  「La Historia Supera A Cualquier Ideología (to all victims of Beijing 07/02/1989)」(5:27)天安門事件がテーマらしい。ギターがリズムを意識できると演奏全体が締まることに気づいた。
  
(FGBG 4357.AR)

 Iconoclasta En Concierto - Teatro De La Ciudad
 
Ricardo Moreno keyboards
Hector Hernandez guitar
Ricardo Ortegon guitar
Juan Carlos Gutierre bass
Victor Baldovinos drums, percussion

  90 年発表の作品「Iconoclasta En Concierto - Teatro De La Ciudad」。 1990 年 4 月 5 日に収録されたライヴから採られたライヴ・アルバム。 内容は前二作からの作品が主。 従来の音痴で荒っぽい演奏がライヴでもほぼそのまま再現されている。 というか、本作のおかげでスタジオでも一発録りに近いことがよく分かった。 しかし、荒っぽさは文字通りのライヴな勢いのよさと紙一重ともいえるので、全部ライヴ盤と解釈すれば問題どころか優れた特徴となる。 たとえば、昔のジャズのアルバムはほぼスタジオライヴに近い一発録りが多いがそれで内容が損なわれることはない(うまいから、といえばそれまでだが)。 音数をまったく惜しまない、それどころか空間を埋め尽くそうとするサービス精神満載の演奏の姿勢は、アメリカ人や関西人に受けそうな気がする。 ドラムスはツーバスらしく連打しっ放し。 ギターはアウトな音を使いたがるあまり外に出っ放しになりがちだが、強引に進行させるパワーはある。
   全曲インストゥルメンタル。
  
  「Mentes Encapsuladas」(7:00)「En Busca De Sentido」より。
  「Vivir Con El Deseo Sin Esperanza」(5:30)「Adolescencia Cronica」より。
  「Esquizoide」(5:25)「Adolescencia Cronica」より。
  「Cristo También Tenía El Pelo Largo」(4:30)
  「La Muerte Complemento De La Consagración」(7:07)「En Busca De Sentido」より。
  「Lucrar Con Dios」(4:48)作曲力を示すユニークな現代音楽。
  「Yonkie」(7:01)「En Busca De Sentido」より。
  「La Historia Supera A Cualquier Ideología」(5:32)「En Busca De Sentido」より。
  
(KCI-042)

 La Reincarnacion De Maquiavelo
 
Ricardo Moreno guitars, keyboards
Ricardo Ortegon guitar
Nohemi D'Rubin bass, vocals
Victor Baldovinos drums

  92 年発表の第七作「La Reincarnacion De Maquiavelo」。 内容は、アグレッシヴなギター・プレイを中心にネオプログレ、ジャズ・フュージョン・テイストを交えたシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 演奏、サウンドは前作までと比べるとやや軽めになっていて、後半では思い切ったジャズ風のアレンジを入れている。 楽曲ごとの性格付けもこれまでよりも明快である。 ベーシストの交代/復帰、ギタリストの脱退を経た新グループとしての再出発作品という位置付けらしい。 ギター・ソロは、目の醒めるように新鮮なフレージングやプレイはないものの、さまざまなスタイルを消化したメロディアスかつ情熱的なものだ。 ツイン・ギターのやり取りも安定感がある。 モレノ氏は、リード・ギターをキーボードに持ちかえると、サイド・ギターを支えにカラフルなプレイを繰り出して、呼吸のいいアンサンブルを見せてくれる。 どちらかというとこのキーボードとギターの絡みの方が、ギター同士のインタープレイよりも聴いていて落ちつく気はするので、キーボーディストに専念していただきたい。 シンセサイザーだけではなく、これまで以上にハモンド・オルガンを多く取り入れているところはプログレ・ファンの心をつかみそうだ。 (シンセサイザーもアナログ機を意識した音を多用している) ヴォーカル兼ベースの女性によるベースのプレイもみごと。 さりげなく目立つフレーズをオブリガートで入れてくる。 演奏全体としては、二つのギターが中心、リード役であり、キーボードが優れたサブとしてバッキングとオブリガートでアンサンブルを補完したり、アクセントを付けるという作りになっている。 堅実で平均点が高いパフォーマンスだが、きらっと光るプレイが見つけにくい。 それでも何度も聴く気にさせられるのは、誠実にプログレの王道を目指した作品づくりだからだろう。
   3 曲目がスペイン語の女性ヴォーカル入り。エキゾティズムの演出としてもいいと思う。ただし「洗練」との距離感が演奏と同じ。 CD はやや全体の音圧が低い。 「マキアベリの再生」というタイトルからしてやはり政治的なメッセージがありそう。
  
  「Serenata O El Sabor Estabel De La Persisitencia」(4:44)
  「Fe De Crédulos」(9:28)往年のプログレらしさのある佳品。この曲ではキーボードが主役。
  「Amante Espiritual」(3:22)女性ヴォーカルによる調子外れ気味の歌唱が妙にはまる。
  「Guerra Santa O El Glamour De Las Armas」(4:59)
  「La Reencarnación De Maquiavelo O El Valor De La Belleza」(5:13)
  「La Evolucion Humana Es La Decadencia」(4:25)ジャジーなギターをフィーチュアした異色作。
  「Quien Alcanza Su Ideal」(3:04)ゲストらしきサックスを交えたジャジーな作品。
  「Sinfonia Introspectiva」(6:11)珍しく内省的なシンフォニック・ロック。独特の忙しなさがないので聴きやすい。
  
(JRCD 010)

 De Todos Uno
 
Ricardo Moreno electric & acoustic guitars, keyboards
Nohemi D'Rubin bass, vocals
Ricardo Ortegon guitar
Victor Baldovinos drums

  94 年発表の第十作「De Todos Uno」。 内容は、あいかわらずの弾き倒しギターが先導するシンフォニック・ロック。 インストゥルメンタル中心である。 今回はアコースティック・ギターを幅広く導入しており、このギターによる荒々しくも感傷的な叙情性は新機軸だ。 前作で取り入れた軽快さを残したまま、それまでの忙しなく一本調子の曲調がさらに強調されたので、全体が傾いだまま突っ走っているような大胆な演奏になっている。 フュージョンというには爽快さや洒脱な感じはなく、ネオプログレというほどにはウェットな情感はなく、プログレメタルというには技巧の切れもない。 したがって、そのすべての要素を含みつつ、そのどれでもない音楽である。 ギターを代表に演者が他の演者の演奏をあまり聴いていないようであり、スポンテイニアスな即興というよりは八方破れに近いアンサンブルというべきである。 しかしながら、さまざまなフレーズを矢継ぎ早に繰り出してためらいなく音をぶつけてくるその潔さには一本通った筋を感じる。 アンサンブルこそばらばらだが、テクニカルなプレイを味わい、それらがもつれ、捻れてゆくのに慣れてくると、独特な語り口にも魅力が出てくる。 特にヴォーカルよりも器楽が好きな方にはお薦めできるかもしれない。 女性ヴォーカルの歌唱とドラムスの技巧にもう少し余裕があり、曲に緩急の変化があると、またもう少し無駄な繰り返しを削るとさらによかったと思う。 前作ほどではないが曲想は明快であり、ハードに迫るものからセンチメンタルな響きの歌ものまでヴァリエーションもある。

  「La Prueba De La Manzana」(2:38)ギターが叫ぶ、勢いのある序曲。
  「Invocaciõn A Lo Mejor De La Humanidad」(5:02)キーボードのテーマがいかにもネオプログレな快速チューン。
  「El Perro De Pavlov」(4:49)ハードロック風のギターとフォーキーなヴォーカル・ハーモニーが一つに合わさった怪曲。
  「A Cada Paso Puedes Cambiar Un Destino」(4:06)
  「La Etica Del Verdugo」(6:01)アコースティック・ギターも加わった哀愁の歌もの。
  「La Maternidad Del Alacran」(6:01)再びアコースティック・ギターを取り入れた、ポジティヴな響きが一貫するハード・シンフォニック・ロック。
  「No Puedo Ser Lo Que No Quiero Ser」(3:35)アコースティック・ギター・ソロによるブーレ風小舞曲。
  「La Profecia De Las Plagas」(4:19)前々作辺りの作風と完全に同じ。
  「La Busqueda La Verdad En Si Mismo」(7:49)ややジャジーな歌もの。 ここでもアコースティック・ギターがアルペジオを刻み、決めどころもある。
  「Desrendimieto」(2:31)伸びやかなエレキギターとアコースティック・ギター・アンサンブルをフィーチュアした仄かにエキゾチックな佳作。
  
(DSCD 001)

 La Granja Humana
 
Nohemi D'Rubin bass
Ricardo Ortegon guitar
Victor Baldovinos drums, percussion
Ricardo Moreno electric & acoustic guitars, keyboards
guest:
Greta Romero Silva recorder

  2000 年発表の第十一作「La Granja Humana」。 久々の復活作。 内容は、EL&P 風のクラシカルでサスペンスフルな演出が効いたプログレ・メタル系ヘヴィ・シンフォニック・ロック。 ギターのサウンド・メイキングの質が向上し、また曲想との合致も考慮されたらしく、性急なフレージングと弾き倒しスタイルが格段と耳になじみやすくなった。 もともと技巧はあったがリズム感が悪いのとサウンドが歪み系一辺倒だったせいで損をしていたが、後者はかなりの改善が図られた。 これが邪悪なイメージの提示やフュージョン・タッチのグルーヴィな展開に活かされている。 キーボードはクラシカルなテーマや和声で演奏の骨組みを構成し、ギターとともに展開をリードしている。 キーボード・ロックのお約束である現代音楽的な音階や和声による攻撃的な演奏とともに、ストリングスによる高尚なイメージのテーマやアンサンブルのクラシカルな係り結びにも貢献している。 また、各種アコースティック・ギターとリコーダーが加わった純クラシック的なアンサンブルをアクセントにしているのも特徴だ。 全体に各人のプレイに抑えが利いていてアンサンブルが明快になり、ドラマが見えやすくなっていると思う。 ドラムスがうるさすぎないのもその一因のようだ。 5 曲目のようなフラメンコ・ギター、クラシック・ギターの導入は初めてだろう。 とにかく、いまだ「うまくなってます」。 スティーヴ・ハケットのソロ作品に近いニュアンスあり。 全編インストゥルメンタル。 タイトルは「人間農場」。 まだまだ社会に対する問題意識はあるようです。 世の中がちっとも良くならないので当然といえば当然か。

  「Hoy Fue La Oveja, Mañana El Pastor」(6:01)
  「Ruleta Genética」(4:21)
  「Alquimia」(3:56)
  「La Coincidencia De Los Ciclos」(3:48)
  「El Último De Los Dodos」(9:27)
  「Del Microcosmos Al Universo」(5:54)
  「Sabiduría Viviente」(8:13)序章の哀愁あるリコーダーの調べが印象的。 アコースティックな音をふんだんに使ったイタリアン・プログレ的な好作品。
  「Requiem Para Un Milenio」(5:06)わりとモロに EL&P な作品。
  「Destruyendo El Mito De La Creación」(6:21)
  
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