KULTIVATOR

  スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・グループ「KULTIVATOR」。 79 年結成。トラッドやインダストリアル系のミュージシャンらが集まったグループらしい。作品は一枚のみ。

 Barndomens Stigar
 no image
Stefan Carlsson bass, bass pedal
Johan Hedrén piano, organ, synthesizer
Jonas Linge guitar, vocals
Ingemo Rylander vocals, recorder, piano
Johan Svärd drums, cymbal, triangle

  81 年発表のアルバム「Barndomens Stigar」。 内容は、タフな演奏力を活かした、緻密にして豪快なカンタベリー風ジャズロック。 透き通るような女声スキャット(たまにコケットな巻き舌、また、クレジットによれば少年スキャットもある)やドリーミーなエレクトリック・ピアノ、ファズ・ギターは、完全にカンタベリーの音である。 ファズ・オルガンが鳴り出すと、ディヴ・スチュアートの EGG のイメージも見えてくる。 勢いがついたときの演奏は、SOFT MACHINEHATFIELD AND THE NORTH に近いが、マッチョな力強さではそれを上回る。 ソロも悪くないが、アンサンブルのヒネリと活きの良さに魅力があり、それは取りも直さずカンタベリーという音の感触の良さである。 一方、リコーダーがさえずってアコースティック・ギターがアルペジオを刻むと、すっかり上品な室内楽になる。
  ほんのりユーモラスでまろやかな音に付きまとうクールな表情は、カンタベリー・ジャズのアンニュイさとアヴァンギャルドなチェンバー・ミュージックの深刻さの両方から分け与えられているようだ。 また、豪快さは、主としてダイナミックで音の多いドラムスのプレイからきていると思う。 ヤケクソ気味にも聞こえるが、1 曲目のようなバスドラ含め叩きっ放しというスタイルがいい。 うわものはややチャイルディッシュでユーモラスでも、この頑ななリズムがあると演奏が締まって、力強さとともにスピード感が生まれる。 逆にいうと、挑みかかるような調子で沸騰して突っ走っても、アンサンブルは憎めない表情も保っている。 フレットレス・ベースがナチュラルな音で演奏全体に緩やかなうねりを起こしているのも、尖った音が多いだけに効果的だ。
   HATFIELD AND THE NORTH の洒落っ気、シニシズムやユーモアを受け継ぎながらも、素朴さ、ユーモア、逞しさ、それらと同時に存在する闇など、北欧のグループらしい特徴を付け加えている。 このスタイルでサディスティックな毒気が入れば完全に SAMLA だし、呪術的な混声コーラスが始まれば、MAGMA だが、いずれの側にも長くは留まらず、間違いなく主軸である HATFIELDS 路線を中心にして前後左右にコマメに振れ続けている。 つらつらと思い浮かべると、HENRY COW ほどのフリージャズ、即興音楽の志向も感じられず、PICCHIO DAL POZZO のようなアカデミックな現代音楽的処理もない、おそらく他に最も近いのは、ABUS DANGEREUX の第一作やフレッド・フリスと交友していた北米のレコメン系グループ(MUFFINS など)である。 まあ何であろうと、単発で終わったのが惜しい内容であるのは間違いない。 APM からの CD には、「Häxdans」と「Tunnelbanan Medley」の 2 曲のボーナス・トラックが付く。うち 1 曲は 92 年録音の新作。 ヴォーカルは、おそらく、スウェーデン語。 お勧めは 6 曲目。

  「Höga Hästar」(3:32)
  「Vemod」(2:35)
  「Småfolket」(5:15)
  「Kära Jord」(7:07)
  「Barndomens Stigar」(5:13)
  「Grottekvarnen」(7:05)
  「Vårföl」(2:52)
  「Novarest」(6:14)

  「Häxdans」(6:35)
  「Tunnelbanan Medley」(3:13)
  
(BAR 8101 / APM 9201)


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