LA PENTOLA DI PAPIN

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「LA PENTOLA DI PAPIN」。 76 年結成。作品は一枚。グループ名は十七世紀にフランスのパパン氏によって初めて発明された圧力鍋のことらしい。(VAN DER GRAAF GENERATOR なみによく分からない命名センスですね)

 Zero 7
 
Ferry Bettini keyboards, vocals
Angelo Lenatti guitar
Dory Dorigatti bass
Bruno Stangoni drums

  77 年発表のアルバム「Zero 7」。 内容は、オルガンとファズ・ギターが特徴的なイタリアン・ポップス調の歌ものシンフォニック・ロック。 イタリアン・ロックらしい情熱的なヴォーカルを頼りないながらも力の入った英国プログレ流のアンサンブルで守り立てるスタイルである。 ポップス調といったが、あくまでイタリアンなので、オペラもしくはクラシックにそのまま歌詞をつけてしまったような、いわば「ロマンティシズムの土砂降り」のような調子も多い。 つまり、甘く軽快なタッチとともに、暑苦しい男臭さも十分に込められている。 しかしながら、どちらかといえば、メロディアスというよりもリズミカルで元気のあるイメージが先立つ。 この印象を与える理由はドラムス。 かなりリズムが危なっかしいが、音数と手数はなかなかのものであり、演奏の躍動感を担っている。 平凡すぎるベースのプレイを補って余りあるこのドラムスがしつこく刻むおかげで、演奏全体が妙に浮き足立ってスリリングになり、結果、「一歩間違えるとひっくり返る」というプログレ特有の状態になっている。 また、ヴォーカル・パートに匹敵するほどにインストゥルメンタル・パートが大きいのもプログレ然とする理由である。 前半は長大なイントロダクションで悠然とした演奏で迫り、2 曲目で攻撃的な表情に変転し、3 曲目で再びロマンティシズムを振りかざし、ドラマティックに迫る。 薄めでチープではあるが LATTE E MIELE を思わせる大仰さである。 しかしアルバム後半に向かうに連れ、やや奇を衒ったような前半を償うかのように、より明快な演奏へと移ってゆく。 最終曲、CARAVAN のようなグルーヴのある演奏がとてもいい感じだ。
   キーボードは、パーカッシヴに決めるハモンド・オルガンのほかにも、ゆったりと広がる暖かいメロトロン風ストリングスやピアノなどを使っており、クラシカルな演出でヴォーカル/ハーモニーとともに演奏を引っ張る役割を果たしている。 クラシカルな演出は主として、ストリングス、ピアノ、ジャジーな演出は、ハモンド・オルガン、シンセサイザーが担当する。 ギターはバッキングが主だが、前面に出るときにはファズをギンギンに効かせてけたたましい泣きのリードを取り、その時代錯誤的な音とプレイが大いに目立つ。 ベースも技量を度外視して果敢にキーボードやギターとからんでおり、ドラムスに安定感があればかなりテクニカルな印象の演奏になったと思うし、72、73 年あたりの諸作品に匹敵したと思う。 サウンド面はレコード盤がゆがんでいるような位相系エフェクトやファズなど 77 年にしては古めかしいが、懸命に背伸びしているような感じに好感がもてる。 ZOMBIES や、古くて恐縮だが、昭和 40 年代初期のグループ・サウンズを思い出してもらうと一番イメージが湧くと思う。 歌をなぞって聴くといいと思います。
   アルバムは、擬似ライヴ形式になっている。 1 曲目の冒頭は着席する聴衆のざわめきであり、最終曲が終わると拍手とともに観客が立ち去るざわめきが聴こえる。 ジャケットは再発 CD のもの。(この CD では、アルバム・タイトルはグループ名と同じになっている) LP は超レアだそうです。GRACIOUS 辺りが好きな人にはお薦め。

  「Introduzione」(9:43)
  「Stacco I」(4:06)
  「Cieli Aperti」(4:02)
  「Una Vecchia Storia」(5:57)
  「45/I」(2:34)
  「45/II」(5:50)
  「Conclusioni」(4:07)
  

(DP 39010 / VM 034)


  close