L'UOVO DI COLOMBO

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「L'UOVO DI COLOMBO」。 73 年に EMI よりアルバムを一作発表。 解散後、ルジェロ・ステファニは SAMADHI へ参加し、元々 FLEA でプレイしていたエリオ・ヴォルピニは ETNA へ復帰。ヴォーカリストは、GOBLIN の前身グループ、CHERRY FIVE のアルバムに参加。

 L'uovo Di Colombo
 
Enzo Volpini electric & acoustic keyboards, acoustic guitar, chorus
Elio Volpini bass, guitar, chorus, vocals on 1
Ruggero Stefani drums, percussion, chorus
Toni Gionta lead vocals

  73 年発表のアルバム「L'uovo Di Colombo」。 内容は、ハモンド・オルガンがたたみかけ、ノイジーなアナログ・シンセサイザーが絶叫し、ピアノが地響きを立てる攻撃型キーボード・ロック。 R&B をベースとするせわしない調子を基本に、テクニカルなジャズロックからバロック風のスケルツォ、さらにはハードロックまで、キーボードが縦横無尽に活躍して激しいインストゥルメンタルを繰り広げる。 まず強く印象づけられるのはヘヴィなハモンド・オルガンの音であり、そのオルガンと低音を強調した荒々しいピアノのコンビネーションは、まさに EL&P に直結するものだ。 リズム・セクションの録音も良好であり、タイトで鋭いドラミングが強調されている。 しかしながら、いかにもイタリアン・ロックらしく、曲の中心には伸びやかなフォーク風のリード・ヴォーカルがどっかと構えている。 メロディアスで素朴なヴォーカルとクラシカルなオルガン、チェンバロらの組み合わせには、熱にうかされた夢のように儚くも濃密なパッションが満ちている。 この感触は、ブリティッシュ・ロックにはないものだ。 ヘヴィなサウンドと人間肯定的で官能的なポップスを無理なく共存させてしまうイタリアン・ロックの魔術がここにもある。
  さて、演奏を見てみよう。 その中心は、間違いなくキーボード。 金管楽器を模したような音からノイジーなギミック音まで、新風を吹き込みつつ演奏に食い込むシンセサイザー、クラシカルな重量感あふれるピアノ、戦慄的スリルに満ちたハモンド・オルガンなど、キーボード・ロックの魅力は満載である。 一方、ベーシストが兼任するギターの腕前も、かなりのものだ。 このベーシストは、オルガンと対位的な絡みを見せたりランニングを鮮やかに決めるなど、さまざまな音楽の素養があるようだ。 またドラムスは、この編成ならではの手数の多さだが、ジャズ的な軽快かつ正確なストロークをもつテクニシャンである。 イタリアン・ロックでは、こういうドラムスはなかなか得難い。 全体に、演奏技術は申し分ない。いや、イタリアン・ロックの中どころかイギリスを含めても屈指の演奏力というべきだろう。 反面、楽曲は、ややセッション風なところもあり、引き込まれるような個性の焦点となるところが見当たらない。
  とはいえ例外もある。 キーボード・プレイが氾濫する本作で、特に目立つのは 7 曲目。 アコースティック・ギターとコーラスによるフォーク・ソングを皮切りに、ピアノが迸りベースが唸りを上げるテクニカルなジャズロックへと発展、ドラム・ソロを経て、モーツァルト風のクラシック・ピアノ・ソロへと到達する。 やがて、ピアノは牧歌的な調子へ移り、あたかもオープニングのフォーク調を回顧するようだ。 自由極まりない不可逆な展開をもつが、不思議と落ちついたしっとりとした後味を残す傑作である。
  アグレッシヴで自由奔放なキーボード・ワークを中心に、クラシカルなアンサンブルやジャズ・コンボを大胆に構成し、情熱的なヴォーカルでまとめあげた佳作。 波乱のストーリーで勝負する大作/組曲こそないものの、次々繰り出されるキーボードのプレイだけでも十分に楽しめる。 いわば、地味で優しげな MUSEO ROSENBACH といったところでしょうか。 ジャケット写真から考えて、おそらくタイトルは「コロンブスの卵」。 本作は、おそらくメジャー・レーベル製作という理由から、リズム・セクションを筆頭に録音がいい。 他のイタリアン・ロックも、本作レベルの録音で聴き直してみたい、いつもそう思わせる作品です。

  「L'Indecisione(Vedi "I King")」(4:55) チンピラ風のヴォーカルと切れ味鋭いドラムスがカッコいいテクニカル・チューン。 クラシカルなオルガンとヘヴィなピアノがガッチリと脇を固め、後半はキーボードが主導権を握って「Toccata」風に突き進む。 ヴォーカルはベーシスト。

  「Io」(3:32)シャープなオルガンとランニング・ベースがカッコいいアシッド・ジャズ調のハードボイルドな演奏にカンツォーネという、天晴れな取り合わせ。

  「Anja(Coscienza E Vanità)」(4:37)クラヴィネット、オルガン、アナログ・シンセサイザー、ストリングス・アンサンブルをセンスよく用いたシンフォニックな歌もの。 日焼けした顔をしわだらけにして笑う農夫のような、暖かみある歌メロがいい。 後半をリードするコンプレッサをかけたようなアナログ・シンセサイザーのテーマが、なんともノスタルジックで胸を打つ。

  「Vox Dei」(4:57)ミステリアスかつクラシカルなヘヴィ・ロック。 オルガンは、エマーソン風の凶暴なテーマで雄たけびを上げ、ウェイクマンばりのバロック調のオブリガートで大見得を切り、火を噴くようにパーカッシヴにコードを叩きつける。 これが文句なくカッコいい。 低音を強調し、重くコードを刻むピアノ。 前半はベースもフィーチュアして、ヘヴィなインストが続く。 ところが、ヴォーカル・ハーモニーは、気が抜けるほど牧歌ラヴソング調。 後半やおらドラムスが勢いづいてテンポ・アップし、ピアノとオルガンによるスリリングな疾走が続く。 フォークソングの伴奏/間奏だけをヘヴィにしたような不思議な作品だ。

  「Turba」(4:09) ファズ・ギターとシンセサイザーがフィーチュアされたスリリングなジャズロック・チューン。 テーマ部はアップ・テンポでビートを細かく刻んで緊迫感を演出し、ギター、シンセサイザーのリードに絡むオルガンのリフもカッコいい。 1 曲目同様、ドラムスのフィル・インにしびれる。 スピード感あふれる演奏に、シンセサイザーがマジカルな広がりと停滞感を演出する。 中盤には、クラヴィネットとストリングスによる TRACE のように愛らしいクラシカル・アンサンブルのブリッジもある。 インストゥルメンタル。

  「Consiglio」(4:48) MUSEO ROSENBACHURIAH HEEP 調のヘヴィなバラード。 オルガンによる引きずるようにヘヴィなリフ、呼吸よく応じるベース・ライン、メイン・ヴォーカルはあくまでメロディアスであり、スキャットによる哀愁のハーモニーが寄りそう。 そして、ハードロックらしからぬモダンなイメージを強めるのはシンセサイザーのネジを巻くようなロングトーンによる間奏。 二度目の間奏部のにじみ切った音はギターだろうか、シンセサイザーだろうか。 ファズ・ギターのリードでテクニカルなジャズロック調に一瞬切り換わるも、激しいオルガンの挑発でブルージーなメイン・テーマに回帰する。

  「Visione Della Morte」(6:42) アコースティック・ギターがきらきらと響くフォークソング調から、一転ピアノのストロークがリードするリズミカルで挑戦的なジャズロックへ、そしてユーモラスなシンセサイザーとオルガンの突っ込みを吹き飛ばすのはドラムス・ソロ。 なかなか破天荒な展開である。ぼうっと聴いていても挑発的でポリリズミックなアンサンブルからドラム・ソロ、あたりで目が醒める。 エフェクトされたスペイシーなオルガンのテーマが提示されるも、アコースティック・ピアノに引き継がれ、そのままクラシカルな独奏へ。 ピアノ演奏のイメージはアルフレッド・ブレンデル辺りだろうか。 ピアノに話しかけて最後のアンサンブルを導くのはフルートだろうか。 穏やかな牧歌調の終幕である。

  「Scherzo」(0:22)テープ高速回転操作にハードなオルガンの演奏が重なり一瞬で消えてゆく。エピローグ。

(EMI 7243 4 79468 2 0)


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