MOTOR TOTEMIST GUILD

  アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「MOTOR TOTEMIST GUILD」。80 年結成。 5UU'S とともに北米 ReR の老舗。 二つの木管、チェロ、エレクトリック・ギターの編成による即興演奏が中心。効果音やダイアログも多用。

 Archive One
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James Grigsby trumpet, bass, guitar, zither, synthesizer, vibraphone, chapman stick, voice, percussion, piano, accordion, organ
Nigel Bladen drumsChristine Clements clarinet, voice, alto sax, percussion, piano
Jessica Zaccaro voicesEric Strauss drums, chapman stick, violin, tenor sax, percussion, vibraphone
Stuart Hathaway guitarBilly Paul voice, guitar, synthesizer
Dave Paul Brown guitarThomas "G" Dodgbst xylophone, percussion, drums, organ, alto sax, voice
Iris Alberts voicesDavid Goodman piano, synthesizer

  96 年発表のアルバム「Archive One」。 84 年発表の「Infra Dig」と 86 年発表の EP「Contact With Veils」からの抜粋で構成されるアーカイブ集。 (前者はオリジナル LP の A-3、B-1 を除いて収録、後者は全曲収録されている)
   LP の内容は、SLAPP HAPPY がクラシカルでパラノイアックになったような現代音楽調ガレージ・ロック。 4 トラック宅録のチープな音質を逆手に取って、声を含めたノイズや無調性の音列、反復パターンで無機的かつ執拗に攻め立て、変則リズムでつまづかせる。 秩序のなくなったところに、ルーツにあるクラシックやジャズやポピュラー・ミュージックを解体して放り込んでみる。 脱力したままの堂々巡りか、起承転結の永劫回避か、独特の「逸脱」や「不真面目さ」もまた特長である。 極端に歪んだギター、饒舌極まる鍵盤打楽器、ピアノ、うるさめのベース、ジャズ風でない管楽器など、ザッパなど前衛系のロックに欠かせぬ構成要素がここでも見られる。 楽器を無調性の音や不協和音を発する装置としてとらえたときに機能性が高いのがこれらの楽器なのだろう。 打楽器系による衝撃音も音楽的な効き目がありそうだ。 女性ヴォーカリストはロリ声でしなを作るかと思えばイタコの如き不気味さで迫る、いわば憑依系 SSW ともいうべきスタイルである。 そういった音を用いてどこにもない自分だけの音楽を追い求めたときに生まれたのがここにある。 狂騒的なハイ・テンションになったときのエネルギー量は SAMLA に匹敵するが、ロックな爆発力を利用したメリハリよりもイメージを喚起するアンサンブルに妙味がある。 ドラムスとエレクトリック・ギターが勢い任せに絶叫するようなハードロック的なシーンはない。 音楽的インテリであり、演奏よりも演奏前のアイデア会議と演奏後の編集に力が入っていそうだ。
   EP では、ヴァイオリンの導入によって自然な緊張感を導くとともに、オーケストラルな音の広がりと厚みが旋律や和声を際立たせ、さらにそこからの逸脱によって秩序や調和感を打ち消す勢いも得ている。 詩的な美も湛えた衝撃的な現代音楽である。 安定感のあるアヴァンギャルドというと矛盾した表現のように聴こえるが、音の配置に隙がなく、音楽的な立ち位置が明確になった作品だと思う。

Infra Dig」より。
  「Edison Games」(3:53)
  「Aunt Iodine」(3:56)
  「Get Angry」(4:12)
  「Mute Tape Process」(1:52)
  「The Totem Motorist」(7:00)
  「Humus Maskaself」(1:22)
  「Stares In Steps」(8:49)波の音とイタコ・ヴォイスと透徹なピアノ即興、そしてチープで厳かなバンド演奏という、雰囲気のある作品。
  「Insular Phantastikos」(2:45)
  「Lap Over Chop Over Ring」(5:54)
  「In Sackcloth And Ashes」(1:45)

Contact With Veils」より。
  「Unterm Rad」(2:37)
  「Nigh」(4:05)
  「A Mixture Of Guise」(9:48)管弦入りでパンクなセンスもあるアヴァンギャルド・ロック。アブストラクトでカッコいい。
  「Felis Felicific」(4:39)
  「Cuneiform」(12:03)
  
(nml/MTG1)

 Archive Two
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James Grigsby guitars, bass, keyboards, trumpet, vibraphone, percussion, voice, tape
Lynn Johnston clarinet, sax
Emily Hay voice, flute, piccolo
David Kerman drums, percussion, toy rat
Eric Strauss voice, percussion, violin, keyboards, pan pipe, short wave
guest:
Nigel Bladen drums on 10Gene Carl keyboards on 5
Brad Laner percussion on 1,3Eric Johnson bassoon on 4
Trelaine Lewis voce of Barbie on 10William Roper tuba on 5
Curt Wilson ghost on 5

  96 年発表のアルバム「Archive Two」。 85 年発表のカセット・テープ「Klang」、88 年発表の「Shapuno Zoo」、89 年発表の「A Luigi Futi」 からの抜粋を集めたアーカイヴ盤。 HENRY COWART BEARS 直系の作風や管弦楽器をフィーチュアした UNIVERS ZERO ばりのチェンバー・ロックなど、アヴァンギャルド、レコメン系の王道にある作品集だ。 無調や不協和音を多用する複雑で晦渋な展開の中にもかかわらず脱構築的、逸脱調ではなく音響効果を生かしてストーリーを丹念にたどる演奏である。 したがってメロディアスなポップス風の音のインサーションによる破断も非常に映える。 フルートや木管楽器、弦楽器らによるクラシカルなアンサンブルが生む緻密な構築性とともにロックなキレをちらちらと見せるところもいい。 即興演奏もあるが、どちらかといえば作曲指向ではないだろうか。 衝撃的である以上に音楽として凜と美しい。

Shapuno Zoo」より。
  「Set Of Crayons」(4:09)
  「Do The Crawl」(5:08)
  「Familiar Philippic」(6:19)映画音楽やクラシック音楽の断片が印象的。
  「Indian Bingo」(4:51)ダイアローグ群と渦巻くような伴奏。
  「Imperfections」(4:27)
  「Prisms Of Ribbon」(11:46)強烈な即興。
A Luigi Futi」より。
  「Omaggio A Futi」(20:01)エネルギッシュ。
Klang」より。
  「Birth By Injection Mold」(4:07)
  「Marriage & Divorce」(2:47)
  「G.I. Joe VS. Ken」(4:48)
  「Barbie In Hell」(2:42)
  
(nml/MTG2)


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