NEMO

  フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「NEMO」。 2000 年結成。作品は十枚。フレンチ・ロックの希望の星。 おそらく SPOCK'S BEARD の大ファン。 最新作は 2015 年の「Coma」。 ギタリストはマイケル・シェンカーが好きなんだそうです。

 Le Ver Dans Le Fruit
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Jean Pierre Louveton guitars, vocals
Guillaume Fontaine keyboards, bagpipe, vocals
Lionel B. Guichard bass, chorus
Jean Baptiste Itier drums, chorus
David Zmyslowski chorus, guitar on 6,8

  2013 年発表の第十作「Le Ver Dans Le Fruit」。 内容は、あいかわらずの骨太ハード・シンフォニック・ロック。 逞しく弾力のあるリズム・セクションとギター、キーボードとが一つになり、ヴォーカルのリードのもと、エネルギッシュでガッツのある演奏を繰り広げる。 バンドのダイナミックな運動を支えるヘヴィなギター・プレイに加えて、ひさしぶりに華やかで伝法なピアノも帰ってきた気がする。 シンセサイザーも非常に練られていて、あるときはヴァイオリン、あるときは管楽器とさまざまなサウンドでタイムリーにアンサンブルを彩り、音楽に広がりと深みを加えている。 他にもオルガンやメロトロン、ミュージック・ソー風の音など、演出の結果として、ギターと並んでエレクトリック・キーボードが場を仕切るところは多いように感じる。 もちろん、本グループの作風の基本を支える特徴的なギター・プレイも、強引にへヴィなリフでねじ伏せ、シングル・トーンのソロで思い切りむせび泣くなど、今回も安定している。 (この、やや古めかしい HM ギターのスタイルがオールド・ファンにとっての分かりやすい入り口として機能するはずだ) そして、アコースティック・ギター、バンジョーなどアコースティックな音によるアメリカンで乾いたタッチも上手く使われている。 長丁場でもロックな強度と繊細さをレンジ大きくキープして的確に配置できるところがこのグループの魅力だが、そういった場面展開の巧みさは本作でも遺憾なく発揮されている。 その意味で ATOLLYES の比べられることは理解できる。 いかがわしさ、狷介不羈さ、怒号調、哀願調、都会的なけだるさ、重いウェットさといったフランス語の響きに特有の味わいもたっぷりあり。 音楽的な力量、情報量など ECHOLYNTHE FLOWER KINGSSPOCK'S BEARD らと同列に語るべき現代を代表するシンフォニック・ロックであり、オールド・ロック・ファンには絶対見逃せない作品である。 基本的に変拍子、というところもプログレ・プロパーの面目である。
   CD-1 の第二曲の展開には胸がすく。第七曲は NEMO 節といっていい怪しさと切実さとデリケートな情感が交差しながらもあくまで堂々と進むハード・シンフォニック・ロック。 CD-2 は、冒頭からカッコよすぎる RUSH 的なテクニカル・ハードロックでトリッキーに迫る。第三曲はジャズロック風味もあるキレのいい小品。終盤のアコースティック・ギターも冴えている。第四曲は意表を突くアメリカン・オルタナティヴ風の作品。
   CD 二枚組。収録時間はほぼ LP 二枚分。このボリューム感と充実度合い、絶好調時の THE FLOWER KINGS に匹敵。 ヴォーカルはフランス語。

  「Stipant Luporum」(2:00)アカペラ・ハーモニーの序曲。
  「Trojan (Le Ver Dans Le Fruit)」(8:50)プログレ・メタル、というかメタル・ギターでリードするヘヴィ・シンフォニック・チューン。変拍子リフ、GENTLE GIANT ばりのリズム・チェンジや切り返しなどヘヴィなサウンドに独特のグネグネ感あり。 緩急自在でドラマを描く。
  「Milgram, 1960」(5:56)のたうつようなギター・テーマとエフェクトを効かせたキーボードで迫るグラマラスなハードロック。 このグルーヴはドラムスの主張おかげ。ガレージ風味もあり。
  「Verset XV」(7:55)メランコリックなバラード。古びたオルガン風のバッキングはメロトロンか?
  「Un Pied Dans La Tombe」(7:09)硬軟メリハリあるも基本は叙情派のシンフォニック・チューン。傑作。 冒頭は、前曲に続き、ハーモニウム風の厳かなメロトロン。 ハードなメイン・パートにも弦楽奏の響きが重なり、雄々しくも厳粛、あるいは古典悲劇的である。
  「Neuro Market」(6:36)雰囲気のある邪教系ネオプログレ。 昔のイタリアン・ロックを思わせるオープニングの怪しいハモンド・オルガン、中盤のムーグ・ソロ、ピアノのバッキングなど、ギターは抑え目でキーボードが活躍。 ギターはアコースティックで、ジャジーないい感じのアクセントをつける。 終盤、アコースティックで謎めいた演奏へと沈み込み、一発逆転の見得を切る。
  「Le Fruit De La Peur」(9:34)フランス・ロックらしい官能豊かな演劇/御伽噺調の表現が冴える作品。 アコースティックな音も多いが、基本的にハードロックのイメージである。前半の DEEP PURPLE 風のギター・リフのせいだと思う。

  「A La Une」(4:59)
  「Triste Fable」(7:43)
  「Allah Deus」(5:05)
  「Opium」(9:04)
  「Arma Diania」(17:19)
  
(PPRCD014)

 Les Nouveaux Mondes
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Jean Pierre Louveton guitars, vocals
Guillaume Fontaine keyboards, vocals, acoustic guitar
Benoit Gaignon bass
Pascal Bertrand drums, marimba, percussion

  2002 年発表のアルバム「Les Nouveaux Mondes」。2007 年のリマスター盤。 内容は、ギター、ピアノをフィーチュアしたパーカッシヴなシンフォニック・ロック。 ハードロック調もたっぷり交えた、一体感あるアンサンブルによる痛快な演奏であり、ECHOLYNIZZ といったオルタナティヴ・ロック以降のスタイルとの共通点を感じる。 リズム・セクション、ピアノ、ギターそれぞれがアタックを効かせて跳ね回って重なり合い、ヘヴィな音ほどには HM 的ではない、一種小気味のよさが特徴となっている。 ギターが親しみやすく明快なフレーズを次々とためらいなく打ち出してくる(最終大作冒頭の変拍子リフの鮮やかなこと!)ところも特徴的だ。 そういう運動神経のよさを活かした作風を基本に、アコースティック・ギター弾き語りやクラシカルなキーボードの高鳴り、果てはオリエンタルなエキゾチズムの演出も盛り込んで、幅広い表現でストーリーを展開する。 ストレートなようで全体演奏にはヒネリがあり、ギターとキーボードを中心にしたアンサンブルもいろいろ工夫されている感じだ。 また、重さが耽美な手触りに変わり音に深みが出てくるような場面では、MARILLION のバラード作品のような色気とインパクトもある。 そこへフランス語のヴォーカルが声色も使って重々しく迫り、毒気と洒落っ気も放つのだから、ANGE を思い出すなという方が無理である。 バラード調の歌い込みで見せる鬼気迫る表情や、物語調の展開での器楽とヴォーカルの呼吸のいいやり取りを想像して欲しい。 もっとも、どちらかといえば、幻想譚の澱みに沈み込むよりはロックな爆発力を活かして跳び回る方が得意なようであり、その割合の違いがそのまま ANGE との違いになっている。 また、こちらはヴォーカルは二人で分け合っている。
   密度濃くテンションの高い作品が並ぶが、特に最終大作は、多彩な音と雰囲気を活かし切った傑作。 おそらくかなり意図的にオールド・ファッションな音、スタイルに則っているんだろうが、それがカッコいいのだから問題はない。 クラシックやジャズに寄り過ぎて、または泣きのメロディ・ラインに頼り過ぎて、ロックなカッコよさやダンディズムを忘れた耳には新鮮な刺激になるでしょう。 グループ名とジャケットからしててっきり「海底二万里」かと思ったが、曲名からするとモチーフはややマイナーな処女作「気球に乗って五週間」のようだ。 タイトルは「新世界」。

  「Abyssses」(9:04)
  「Dr Fergusson Et Les Caprices Du Vent Vol.1 : Au Dessus Des Toits」(6:19)
  「Danse du Diable」(2:58)
  「Tempete」(7:11)
  「Dans La Lune Encore」(6:07)
  「Dr Fergusson Et Les Caprices Du Vent Vol.2 : Au Dessus Des Pyramides」(5:46)
  「Phileas」(20:22)エキゾティックな演出もある超大作。全然長さを感じさせません。
        「a)Depart-Europe」(4:50)
        「b)Les Fleuves Sacres」(3:18)
        「c)Luna」(6:05)
        「d)Nouveau Monde」(6:09)
  
(QUAD 15-07)

 Présages
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Guillaume Fontaine keyboards, vocals
Benoit Gaignon bass
JB Itier drums, marimba, percussion
Jean Pierre Louveton guitars, vocals
guest:
Pascal Bertrand marimba on 6
Olivier Soumaire vocals on 11

  2003 年発表の第二作「Présages」。2007 年のリマスター盤。 内容は、再びギター、ピアノ、フランス語ヴォーカルをフィーチュアした小気味のいいシンフォニック・ロック。 弾けるリズムに灼熱のパワーコードが轟き、きらめく音の粒がピアノから放たれると、すっかり忘れていた熱くしなやかなグルーヴが胸に湧きあがる。 自信にあふれた語り口は冒頭からガッチリとリスナーをつかみ、集中力をすべて音に注ぎ込むように仕向けてくる。 勢いよく走り続ける演奏には、ベタつくような泣きはないし、ヘヴィなギターの音をうるさく感じさせることもない。 なにせ、一度ギターの轟音をフレンチヴォイスが受けとめると、けたたましさは一瞬にして薄暗く耽美な響きを帯びて揺らぎ、気がつけば、エレクトリックな原色の混沌を厳かな弦楽奏が憂鬱な調べとともに拭い去ってゆくのだから。 もちろんアコースティック・チューンには華やぎと洒落っ気もある。 ギターが弾き捲くって全体をリードするなど、全体にライヴなプレゼンスを考えたアレンジながらも、アイデアのままにさまざまに 音を振り回して、どこまでも劇的に迫ってくる。 じつは激しい表現も叙情的な表現もけっこうスタイリッシュだが、それがイヤミにはならず、あふれる演奏力の勢いに身を任せようという気持ちにさせてくれる。 こんなに「生な」エレキギターの音はひさしぶりに聴いた気がする。 THE FLOWER KINGS のように大人なメッセージを歌い上げるのもいいけれど、俺たちゃついつい口調が荒っぽくなっちゃうのさ、別に若ぶってるわけじゃないけど、この足腰ならいつでも次の冒険に飛び込めるぜ、というような音なのだ。(笑) この開き直ったような、何もかもを放り出すような姿勢がすごくカッコいいのである。
  虚々実々無限のドラマを、ものすごく分かりやすいメロディ、フレーズとハードロックのサウンドで骨太に描くフレンチロックの傑作であり、英国ギターロックとプログレメタルの十数年が生み出した大成果の一つ。 オープニング 1 曲目の堂々とした王道モダン・ロック調にはかなりの感動が。シンプルでキャッチーなリフ、フレーズを盛り込んで勢いよく走る姿は、絶好調時の SPOCK'S BEARD(「V」の頃ですかね) に匹敵します。 タイトルは「前兆」。

  
(QUAD-06-03/2)

 Prélude À La Ruine
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Guillaume Fontaine keyboards, vocals
Benoit Gaignon bass
Jean Baptiste Itier drums, backing vocals
Jean Pierre Louveton guitars, vocals, banjo
guest:
Pascal Bertrand marimba
Joanna Sobezak violin

  2004 年発表の第三作「Prélude À La Ruine」。2007 年のリマスター盤。 内容は、パワフルでパーカッシヴ、ロマンティックにしてスカッと突き抜けたハードロック風プログレ。 前作よりもさらに明快、イノセントなロマンチシズム、ヒロイックな冒険心と秘境の神秘への無限の夢を取り込んだ男の子向けのサウンドである。 勢いあるフレーズ、ノリのいいリフ、切れのあるオブリガートでギターとキーボードが追いかけあうアンサンブルを、ピアノ、ヴァイオリン、マリンバといった品のあるアクセントで整え、フランス語やアラビア風旋法などのエキゾチックな響きも散りばめ、つむじ風のようなビートに乗せてきっちりとまとめている。 ピアノやヴァイオリンそして時にはギターがリードするクラシカルなタッチの演奏も堂に入っているし、芝居っ気あふれるヴォーカリストは、しっかりとシャンソン風に決めてくれる。 とにかくこの無窮動のしなやかでたくましい演奏、いきなりクライマックスな演奏が魅力である。 メタルっぽいギターが分かりやすいフレーズとともにガンガン走り回るが、不思議と知的に整理された印象を与えるアンサンブルになっていて、ジンマシンが出るどころか、頬は緩むはむやみに元気になるは、個人的にはかなり珍しいことです。 音を惜しまずオカズもたっぷりのロック・ドラムスにも喝采を送りたい。 いってみれば、ANGE と同じ「粋」の境地に FESTA MOBILE みたいなピアノが加った、ギターが目立つ SPOCK'S BEARD である。 ハードに攻め、クラシカルに引き、ラテン風にかわす、走り澱みまた走る、その呼吸は本当によく SB に似ている とにかく、小難しいことはいわず荒っぽささえ感じさせる音なのに、知性と真摯な姿勢がにじみ出ている。 ユーロロックの伝統に則ったクラシカルな奥深さがあるといってもいい。 こういう音ならオールド・ファンは間違いなく破顔、そして若者だって虜になると思う。 大傑作。 タイトルは「破滅への序曲」。

  
(QUAD-xx-xx/x)

 Si Partie I
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Jean Pierre Louveton guitars, vocals
Guillaume Fontaine keyboards, vocals
Jean Baptiste Itier drums, vocals
Lionel B. Guichard bass, vocals

  2006 年発表の第四作「Si Partie I」。 ベーシストがメンバー交代。 内容は、力強いフランス語ヴォーカルを中心に骨太なアンサンブルで迫るハードロック調シンフォニック・ロック。 ギターもキーボードもハードなロックの本道を行く音で正面切って勝負をかけてくる。 特にけたたましく唸りをあげるアナログ・シンセサイザーと吹き荒れる音の嵐の中の陥穽のようなアコースティック・ピアノが印象的。 どこまでも大仰過ぎるほどにドラマティックな演奏である。 そして、ヘヴィな音にもかかわらず PINK FLOYD 風、あるいはポストロック調のあてどなさや浮遊感がある。 この憂鬱で空ろな表情はポンプ・ロック勢にもあったものだ。 また、プログレ・ファンなのは分かるが、SPOCK'S BEARD そのままなリフや、「Yessongs」そのものなギターとピアノはいかがなものか。 2 曲目では ECHOLYN も顔を出す。 最終曲の五部構成の大作では、ジャズロック的なしなやかさやシャンソンらしいけだるく厭世的な表情やエキゾティックな艶かしさもたっぷりと披露する。 エンディング、無駄にカッコつけずにタフでやんちゃなまま去ってゆく感じも似合っている。 全体としては、英国ロックのメランコリーを抱えたまま北米勢に追いつけ追い越せで走る運動神経抜群のモダン・シンフォニック・ロックである。
  
  「Douce Mort」(16:26)
  「Ici, Maintenant」(6:27)
  「Miroirs」(6:44)
  「Si」(8:00)
  「Apprentis Sorciers」(20:05)

(QUAD-12-06)

 Barbares
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Guillaume Fontaine keyboards, chorus, flute
Jean Pierre Louveton guitars, vocals
Jean Baptiste Itier drums, chorus
Lionel B. Guichard bass, chorus

  2009 年発表の第八作「Barbares」。 内容は、ダークで荒々しく劇的なハード・シンフォニック・ロック。 ヴォーカルの表情やメロディ・ラインはセンチメンタルでどこか不器用、無作法な感じ(フランス製「ニューシネマ」のような)があり、へヴィなギターやリズムとの取り合わせが、否応なくドラマを紡ぎ出している。 そのメロディが叩きつけるビートと交錯する合間を縫って、古めかしいメロトロン・ストリングスが高まったり、アコースティック・ギターがささやきかける。 もちろん、アコースティック・ピアノも変わらずフィーチュアされている。 いわゆるへヴィ・メタル、プログレ・メタルのような無駄にテクニカルでまとまり切っている感じがまったくなく、どうしようもなく情緒優先なところがいい。 初期と比べると、小刻みな場面展開をなめらかできわめて自然な語り口でこなすようになっている。 ヴォーカルがリードするかと思えば、ギターが印象的なリフで飛び出し、またヴォーカルが重なると今度はピアノが歌いだす、かように演奏者の呼吸を感じさせる編曲になっている。 クリシェに飛びつくようなところもないし、奇を衒うような未熟さも払底している。 まさに、「ながら」で聴いているリスナーをスピーカの前に正座させる音であり、はや風格が備わったといっていい。 この感じ、YESPINK FLOYD が大好きなハードロック少年がそのまま大人になったみたいだ。 とにかくユニットやプロジェクトやセッションや寄り合い所帯ではない、「いいバンド」である。 かすかに古びた音の風合いは、1981 年辺りのコミック・タッチのジャケットとよく合っていると思う。 そういえばジェイン・フォンダの「バーバレラ」も元はコミックでしたっけ。 ジャジーな音や現代的でスタイリッシュな音もさりげなく散りばめている。南米ベネズエラの雄、TEMPANO にも通じる懐の深さを感じます。 5 曲目「Faux Semblants」は名曲。タイトル曲は 25 分を超える大作であり、伝承音楽風のタッチが新鮮な佳作。 今のところ本アルバムが最高傑作でしょう。

  「Loi」(9:40)
  「19:59」(6:48)
  「Le Film De Ma Vie」(7:33)
  「L'armée Des Ombres」(9:59)
  「Faux Semblants」(7:45)
  「Barbares」(25:59)

(QUAD-17-09)

 R€volu$ion
 No Image
Guillaume Fontaine keyboards, chorus, flute
Jean Pierre Louveton guitars, vocals
Jean Baptiste Itier drums, chorus
Lionel B. Guichard bass, chorus
David Zmyslowski chorus, guitar on 6,8

  2011 年発表の第九作「R€volu$ion」。 内容は、拝金主義が導いたダークな近未来(というか現実?)を弾けるような運動性と重量感をもって描くハード・シンフォニック・ロック。 巧みなテンポやムードのきりかえのおかげでドラマティックであり、東洋風のエキゾチズムがいいアクセントになっている。 ただ、このロマンチシズムとハードなサウンドの取り合わせ(いってみれば、CAMEL がヘヴィメタル化したような音)に若い世代が惹きつけられるかどうかがよく分からない。 無闇に複雑にしないところや加速し過ぎないところ、メロディ・ラインを分かりやすく浮き立たせる配慮など、基本的には、ハードロックとプログレとをごちゃごちゃにして洗礼を受けたオヤジ向きな気がする。
   近年のハリウッド映画のような暗然たる未来世界を主イメージに、ダークで陰鬱、ダンディズムを欠いたハードボイルドともいうべき暴力的で絶望的なタッチで全編が貫かれている。 へヴィで歪み切ったギターの音から湧き出るのは、凶暴さと痛みのある切なさが交じり合った絶唱。 訴えたいイメージと音との相性が非常にいい。 とにかく、極太の荒々しいタッチで物語を嘘くさくなく綴るのが、このギターの役割である。 そして、それだけ絶望的なドラマなのに、終局には躍動するポジティヴな力に輝きが戻り、帰り道の足取りを軽くしてくれる。 「なんだかんだで人生捨てたもんじゃないさ」というやつだ。 そういうところも、年寄り向けだと思う。
   何もかもが混沌として色分けも判然としない世界において、この方たちは、いわゆるオルタナティヴ、カウンターカルチャーの担い手として誇り高く踏ん張っているようだ。 波乱の予兆たる 1 曲目のタイトルからして「自由、平等、叛乱」(おそらくフランスの国是「自由、平等、博愛」のヒネリであろう)であるからにして。 ヴォーカルはフランス語。 内容や曲名から判断して前作の続編の可能性あり。 若さにあふれる ANGE の後継者の一つ。 血塗られたバットを片手に仁王立ちする東洋系と思しき少女の無表情さ、アングルからして打ち倒されたのは「わたし」なのでは。

  
  「Liberté Egalité Insurrection」(2:23)
  「Je Suis Un Objet」(5:43)
  「R€volu$ion」(5:08)弾力に富むスタイリッシュなハードロック。
  「Aux Portes Du Paradis」(2:21)
  「Seul Dans La Foule」(9:36)
  「Chiens En Laisse」(5:35)
  「Loins Des Yeux(Barbares Parties VIII à XII)」(24:30)
  「Notes Pour Plus Tard」(6:43)

(QUAD-19-11)


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