ÑU

  スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「ÑU」。 ホセ・カルロス・モリナを中心にマドリッドで 74 年に結成。作品多数。今なお現役。 メタリックなサウンドにフルートとクラシカルなヴァイオリンを持ち込んだ邪悪なハードロック。ヴォーカルも過激。

 Cuentos de Ayer y de Hoy
 
Jose Carlos Molina vocals, fute, keyboards, harmonica, percussion, concertina(buttoned accordion)
Enrique Ballesteros drums, percussion
Jose M.Garcia electric & acoustic guitar, Mellotron
Jorge Calvo bass
Jean Francois Andre violin, batuta

  78 年発表の第一作「Cuentos de Ayer y de Hoy」。 邦題は「落日の貴族」。 内容は、ノイジーかつメタリックなギター、GS 哀願調とエキセントリックなシャウトが特徴のハイトーン・ヴォーカル、いささか素っ頓狂なヴァイオリンとフルートらを盛り込んだ、過激なハードロック。 ワイルドなリフが猛る演奏にクラシカルなテーマが絡みつき、せわしなくせめぎあい、奇天烈なヴォーカルが拍車をかける。 そのインパクトはかなり強烈だ。 そして、ハードロックとはいえ直線的で頭の悪い感じはなく、複雑とまではいかないにせよ、密度の高い演奏をしている。 演奏の中心は、リーダーであるホセ・カルロス・モリナであり、ヴォーカルからフルート、アコーディオン、ハーモニカまで八面六臂の活躍を見せる。 特に、ヴォーカリストとしての存在感は圧倒的といっていいだろう。 いわゆるカステリヤ/サラセン/スペイン風味の旋律はないが、スペイン語の響きのおかげで、ただでさえ個性的なヴォイスがより一層独特の粘りつくような響きを帯び、エキゾチックなイメージを強めている。
  ハードに攻めたてる曲調には、いわゆるハードロックのブルーズ感覚よりも HR/HM につながる鋭角的なヘヴィネスがある。 そして、荒々しく咆哮するような調子に対照するのは、フルートやヴァイオリンによるトラッド/クラシカル・テイストだ。 アコースティックで正調なプレイに加えて、デフォルメの効いた素っ頓狂なプレイも披露するところもおもしろい。 特にヴァイオリンは、テーマを受け持ちながら、場面によっては不安定な音程で錯乱させるように暴れ回る。 フルートもトーキング・スタイルでの乱舞が得意なようだ。
   一方、ギタリストはオーソドックスなハードロック・ギターを披露しており、ノイジーなバッキング・リフから存在感のあるソロまでガッチリと曲に食い込んでくる。 バランスとしては、ヴァイオリン、フルート、ギターらを主役にしたノイジーかつヘヴィなサウンドが主なのだろうが、ピアノや手数のわりに安定したリズム・セクションもきっちりと仕事をしている。 そして、メロトロンがシンフォニックな広がりを加えているのも忘れてはならない。 全体に、技巧という点では、かなりのレベルの作品だ。
  特異なヴォーカルやクラシカルなアンサンブルが作り出す音は、中世暗黒時代、魔女狩り、異端審問といったヨーロッパ的な凶凶しさをイメージさせる。 そういった邪悪さの演出も、昨今の HM と通じるところである。 もっとも、本作についていえば、いわゆる NWBHM よりも時期が早いので、当時はハードなプログレという風にとらえられたのだろう。 現役ということだが、現在は間違いなくヘヴィ・メタル・グループになっているだろう。
  けたたましいギターが吠え捲くるスピーディなハードロックの激情と、ふくよかに歌うヴァイオリン、JETHRO TULL 風としかいいようのない目まぐるしいフルートが醸し出す抒情を、まぜこぜにして押し切った痛快さが本作の魅力だろう。 前半はヘヴィなギターとヴァイオリン、フルートがせめぎあうハードロック調の作品が並び、後半の二つの大作「El Juglar」と「Paraiso De Flautas」は、それぞれアコースティックでシンフォニックな作品とフルートをフィーチュアしたスケールの大きなドラマチックな作品である。 この二曲がアルバムの内容を総括するといっていい。 イタリアン・ロックの荒々しさのまま、テクニカルな安定感と誇張された美意識をもつといえば、一番イメージに近いだろう。

  「Profecia」(3:50) 疾走感あるギター、ヴァイオリンによるテーマからもがき苦しむような呪文ヴォーカルへとなだれ込み、有無をいわせぬオープニング・ナンバー。

  「Preparan」(6:47)メロディアスなヘヴィ・メタル。 QUELLA VECCHIA LOCANDA ばりのヴァイオリンは、テーマで狂喜乱舞し、フルートとはたおやかなアンサンブルを成す。 泣きのヴォーカルも強烈だ。 後半はベース、ドラムス、ギター、ヴァイオリン、フルートによる快速アンサンブル、インタープレイが続く。 ギター・ソロは堅実な主流派。 テクニカルなドラムスにも注目。

  「Algunos Musicos Fueron Nosotros」(3:28)快速ロックンロール。 凄まじく歪んだギターとヴォーカルがリードするメイン・パートはスピード感たっぷり。 ギター・ソロ、ブルージーなハーモニカなどお約束どおり。 ヴァイオリンのリフ、フルートのトリルが鮮やかだ。 さらに中間部ではリリカルなヴァイオリン、ピアノのアンサンブルをもうけてアクセントをつけている。

  「Cuentos De Ayer Y De Hoy」(5:27)ホルンのような音で始まるクラシカルで田園風のテーマをもつハードロック。 ヴァイオリンのテーマは、ヴィヴァルディ風でせわしなく狂おしい。 ワイルドなギターとともに演奏をリードする。 もう一人の主役であるフルートは、トリルの連続で舞い踊るトーキング・スタイル。 間奏はアコースティックかつクラシカルな美の世界だが、突如手拍子とお囃子も入る。 パストラルでクラシカルで狂気地味たところは、イタリアン・ロックと近い世界である。

  「El Juglar」(8:07)アコースティック・ギターとフルート、ピアノによるきわめて牧歌的な序章から、ストリングスを得て悠然と広がり、一気にエモーショナルなギター・ロックへと変転する。 堂々たるギターを受けて、メロトロン・ストリングス、アコースティック・ギターのストロークとともに軽やかに走ってゆく。 終盤は、やはりフルートとヴァイオリンが溌剌としたデュオで迫る。 パストラルなフォーク・ロックを基調とした作品である。

  「Paraiso De Flautas」(9:34)フルートがリードするややジャジーな序奏にハードなギターが炸裂、祈祷師風のヴォーカルとともに 1 曲目でも見せたエキセントリックなハードロックが繰り広げられる。ただし、メロトロン、フルートによる「受けとめ」が絶妙、神秘的なムードも生まれてくる。 フルートは 2 管吹きも行っているようだ。厳かな歌唱とメロトロン・ストリングス。 その後もフルートを中心に叙景的なアンサンブルが繰り広げられる。 初期 CRIMSON のニュアンスがなくもない、と思っているとギターが爆発して一気にハードロック化。 このイージーな展開も捨てがたい味わいである。 シンフォニックなハードロック。

  「La Explosion Del Universo」(3:09)URIAH HEEP のようなハードロック。 フルートが大爆発。 やはり、独特の艶っぽさと毒気が本グループの特徴だ、と再確認できる作品である。CD ボーナス・トラックのようだ。

(SRMC-3015)

 A Golpe de Latigo
 
Jose Carlos Molina vocals, fute, piano, organ, mellotron, harmonica, percussion
Eduardo Garcia electric & acoustic guitar
Jorge Calvo bass, mellotron
Jean Francois Andre violin, viola de gamba
Raul Garrido drums

  79 年発表の第二作「A Golpe de Latigo」。 内容は、フルートやキーボードを多く用いたミステリアスでメタリックなハードロック。 ハイトーンのヴォーカルのシャウトはなかなか刺激的である。 ただし、へヴィなリフが轟きキーボードのクラシカルなアクセントが散りばめられたハードロックとともに、フォーキーな哀愁あふれるバラードや弾き語りもある。 そういう作品では、金切り声を上げていたヴォーカリストも人が変わったようにコブシを効かせた歌い込みを見せる。 つまり、JETHRO TULL の作風をずいぶんと意識しているのだ。 特にフォークソングやバラード調の作品では、ヴォーカリストは完全に「スペイン語のイアン・アンダーソン」と化す。 声も節回しもじつによく似ている。 当然、唾を飛ばしまくるフルートもこのヴォーカリストのプレイである。 類似はヴォーカルだけではなく、凝ったリズム・パターンを使ったこねくるような弾力のあるアンサンブルにもある。 フォークソングだけではなくハードロックにも、この傾向は明らかにある。 演奏は、フルートおよびワイルドで鋭いリフやソロを放つギター、突き刺さるようなシャウトがリードすることが多いが、勢いがついたときに飛び込むオルガンもカッコいい。 雷鳴、鐘の音など効果音やクラシカルなピアノ、ヴァイオリンらを配した劇的な演出も巧みに行われている。 曲の展開に合わせたリズム・チェンジも非常にカッコいい。 4 曲目のような作品をさらりとハードロックの合間に混ぜ入れるセンスがプログレ以外の何物でもない。 エキセントリックな派手さは前作ほどではないが、雰囲気にまとまりのあるプログレッシヴなハードロックの佳作である。

  「Entrada Al Reino」(2:10)プロローグ風のインストゥルメンタル。
  「A Golpe De Latigo」(6:12)メタリックな快速ハードロック。 金切り声を炸裂させるヴォーカル、直線的なノリにトーキング・フルートがからみつく。
  「A La Caza De Nu」(7:13)捻じれるような妖しさを放つへヴィ・プログレの力作。 TULL を越えて KING CRIMSON にも迫る。 躍動するフルートはもちろん、シンコペーションによるリフ、奔放なピアノ、リズム・チェンジといった演出が効いている。
  「El Flautista」(4:40)フルートをフィーチュアしたタランテラ風の賑々しいフォークソング。名作。 ふと気づいたのは、P.F.M のフォークソング調にもイタリア民謡だけではなく、JETHRO TULL からの影響もあるということ。(初期ライヴでは P.F.MTULL のカヴァーもしている)
  「La Galeria」(2:44)ストリングスもフィーチュアしたバラード。イタリア、カンタトゥレにも通じるものが。
  「Velocidad」(4:32)再びメタリックなハードロック。ヴォーカルは、あまり知らないのですが、デヴィッド・カヴァーデイルのようです。
  「La Ilegada De Los Dioses」(6:25)
  「El Expreso」(6:12)

(ZAFIRO 74321 933242)


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