POLLEN

  カナダのプログレッシヴ・ロック・グループ「POLLEN」。 72 年結成。 初期には HARMONIUM ともメンバー交流する。 作品は 76 年の一作のみ。 同年解散。 グループ名は「花粉」の意。

 Pollen
 
Jacques Tom Rivest vocals, bass, acoustic guitar, keyboards
Sylvian Coutu drums, vibraphone, percussion
Claude Lemay keyboards, flute, vibraphone, backing vocals
Richard Lemoyne electric & acoustic guitar, keyboards, bass

  76 年発表のアルバム「Pollen」。 内容は、キーボードを中心とした緊密なアンサンブルとテクニカルなユニゾンが特徴的なシンフォニック・ロック。 変拍子を多用し、小刻みなビートを生むリズム・セクションやヴァイブ/フルートらのデリケートな音使いなど、きわめて技巧的なサウンドである。 複数台体制のキーボードの演奏は、GENESIS スタイルのクラシカルなリフレインを主とし、オルガン、ムーグ、ピアノが精緻なモザイクのように絡まりあう。 傑出するのは、朗々と歌い軽快に走るムーグ・シンセサイザーだ。 リリカルに歌うのもよし、スタカートを刻むピアノ伴奏の上をなめらかに駆け巡るテクニカルなプレイもいい。 ギターはキーボード・アンサンブルに比べて目立たないが、スティーヴ・ハウがさらにジャズ・ギターを修練したようなテクニシャンであり、5 曲目で華麗なリード・プレイを見せる。 全体的には、ナチュラル・トーンを用いた緻密なバッキングでキーボードの延長のような演奏をしている。 そして、リード・ヴォーカリストによると思われるアコースティック・ギターのプレイが一種清涼剤的なアクセントとなっている。 ヴォーカルは、フランス語独特の厚ぼったい響きを除けば、シンプルといってもいい表現スタイルである。 凝ったメロディ・ラインではなく、ハーモニーや繰り返し、器楽との対比で主メロディ・パートを担っている。 熱く高まるところでは ANGE を思い出してしまうが、基本はむしろ英国ロックへと通じるメランコリックな響きをもっている。 全体に演奏は、音数の多さのわりには、力強さよりも鋭角的で細身というイメージが強い。 目もくらむような激しい演奏だが、エネルギッシュというよりは張り詰めたような緊張感が印象的だ。 これは、オルガン、メロトロンではなくエレピとシンセサイザーを主に用いるという演奏と、70 年代後半のエレクトリック・キーボードの音そのものに起因するのかもしれない。 また、アコースティック・ギターのさざ波のような響きやギターとキーボードの込み入ったアンサンブルなどは GENESIS、悠然と歌い上げるムーグや叙情的なコーラス・ハーモニーは YES、たくさんの楽器が絡み合うめまぐるしい展開は GENTLE GIANT といったように、英国の技巧派グループの影響が強いようだ。
  アルバムとしては、ギターやキーボードが細かいフレージングで緻密に反応しあいハイ・テンションの演奏が続くパートと、アコースティックに歌うパートのバランスがよく、最後の大作ですべてが現れるという理想的なものだ。 ギターのナチュラル・トーンとヴァイオリン奏法、ムーグのプレイが YES に聴こえてしまう人と、アコースティック・ギターの響きや走り気味のリズムが GENSIS に聴こえてしまう人に分かれるような気もします。 特に随所に見られる「A Trick Of The TailGENESIS のコピーのような演奏にはおもわず頬が緩みます。

  「Vieux Corps De Vie D'Ange」(7:11)ギターとムーグによる目まぐるしい変拍子テーマに厚ぼったいヴォーカルが重なるオープニング。 ギターとキーボードのフリーなプレイを交えつつも緊迫感に満ちたトリッキーな演奏が続く。 中間部、やおら訪れた静寂を貫くフルートは「Supper's Ready」風。 ここからアコースティック・ピアノとヴォーカル主導で、叙情的にして力強く着実に盛り上がってゆく。 全体にリズムの変化がすさまじい。 エレクトリックな音とアコースティックな音のブレンドも巧み。 変幻自在の力作だ。

  「L'Etoile」(6:24)さえずるようなフルートと鳴り続けるアコースティック・ギターが GENESIS を思わせ、ヴァイオリン奏法の巧みなギターとゆったり広がるヴォーカル・ハーモニーが YES を思わせる叙情作。 1 曲目に続きヴァイブを用いている。 中盤と後半のムーグ・ソロがクライマックス。 バッキングのギターにも注目。 比較的ストレートな流れが活きる。 名作。

  「L'Indien」(4:50)憂鬱なメロディ・ラインがフランス語の響きとマッチした弾き語り。 二つのアコースティック・ギターのアルペジオと寂しげなエレピのオブリガート。 後半スキャットに重なるムーグ、ヴァイブが美しい。 イタリアン・ロックの歌ものが好きなら気に入ると思います。 HARMONIUM にも通じる世界。

  「Tout L'Temps」(3:26)派手なエレピが高鳴るリズミカルな変拍子ソング。 切り刻むようなビート感とメロディアスなヴォーカル・ハーモニーが拮抗しつつ進む。 しかし次第にキリキリ舞いするような演奏が他を圧し、ムーグのソロで頂点へ。 フェード・アウトは残念。

  「Vivre La Mort」(5:28)珍しくオルガン、ギターが多用され古典的プログレな色調の強いナンバー。 頭を押さえつけられたような独特の歪みをもつ和声がおもしろい。 ギターのオブリガートは「Lamb」。 ギターは自らのヴァイオリン奏法をバックに華麗なソロを見せる。

  「La Femme Ailee」(10:30)GENESIS の影響を強く感じさせるトリッキーにしてドラマチックな大作。 詩的な美しさと表裏一体をなすヘヴィな暗黒面を見せるところは、まさに GENESIS。 「Knife」かなという瞬間もありますが、ギターとキーボードが意外にも力強く突き進む演奏には改めて感動します。

(KOZAK K02502-2)


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