ROOM

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ROOM」。 68 年結成。 DERAM からの唯一作で知られる。

 Pre-Flight
 
Steve Edge lead & rhythm guitars
Chris Williams lead guitars
Bob Jenkins drums, conga, percussion
Jane Keverns vocals, tambourine
Roy Putt bass

  70 年発表のアルバム「Pre-Flight」。 内容は、ブルーズ・ロックにオーケストラや管楽器など多彩なアレンジを持ち込んだプログレッシヴなハードロック。 地味だがドスの効いた女性ヴォーカルとけたたましいギターをフィーチュアしたブルージーな音を軸に、ジャズやフォークなどさまざまな方向に変化する、英国ロックらしい多様なスタイルである。 ストラヴィンスキーばりのブラスやストリングスを多用した大仰な音つくりが全編を彩るが、イメージの中心にくるのはフォーク風のアコースティックな表現による色褪せた写真のような「郷愁」である。 そして、管絃の音質とヘヴィなブルーズ・ロックの対比、音の厚みの変化は劇的としかいいようがない。 ドラマチックなアレンジを主眼とした結果、個々の楽曲の中ですら、統一された流れよりも、瞬間の勢いと予想外の展開の生むスリルが聴きものとなっている。 したがって、アルバムを通したイメージはノスタルジックな色調以外は散漫といってもいいくらいにまとまらない。 とはいえ、ギター、ドラムスなど、各プレイヤーのセンスはかなりいい。 ダブル・ギターがせめぎあい、パワフルかつ俊敏なドラムスがからむインスト・パートは迫力満点だ。 ギターは、ブルーズ・スケールによるいわゆるリード的な表現に加えて、T2 の唯一作のような荒々しくコードをかき鳴らすスタイルがカッコいい。 そして、ギターもドラムスにも、ハードロックといい切れない、ジャジーななめらかさと細やかさがある。 そこがユニークだ。 楽曲は、やたらと思わせぶりなオープニングからシンバル・ワークがさえる 1 曲目のドラマチックな大作、そして、LED ZEPPELIN を思わせるブルージーな 2 曲目がいい。 また、5 曲目のテーマもいかにも懐かしい。
  全編を貫くスタイリッシュな感じ、つまり「偏屈だが見栄っ張り」な感じもまた、英国ロックのエッセンスである。 プロデュースはミッキー・クラーク。 また、6 曲目「War」以外の音楽監督としてリチャード・ハートレイなる人物の名前がある。 ジャケットの複葉機のイラストが佐藤さとる/村上勉の名コンビを思い出させます。

  「Pre-Flight - Part I,II」(9:00)管弦楽による勇壮な調子と枯淡のフォーク・タッチが交じり合った、あまりにドラマティックな佳曲。 スリリングな第一部、そして弦楽奏をブリッジにはさんで、フォーキーに始まる第二部に分かれるようだ。第一部、第二部ともにクライマックスではブラス・セクションとギターが炸裂する。 この音の少なさはただごとではない。

  「Where Did I Go Wrong」(5:30)LED ZEPPELINJEFF BECK GROUP ばりのカッコいいブルーズ・ロック。 パンチあるヴォーカルと泣きのツイン・ギターの呼吸のいいやり取りとともにリズム・セクションも健闘。 軽くならないままたたみこむフィル・インが確かにジョン・ハイズマンに似ている。 風格あり。

  「No Warmth In My Life」(4:37) クールなブラス、ヴォーカルとハードロック調のリフの交差は、やがてアコースティック・ギターとトランペットによるジャズ・コンボに変容し、その後も唐突なドラム・フィルを狂言回しに次々と調子を変えてゆく。 全体を貫くのは、パワフルだがけだるいヴォーカルだ。 トラッド調とジャズが交じったような悩ましいギター・アドリヴもいい感じだ。 この唐突さとギクシャクした動きはアメリカン・ロックにはあり得ない。

  「Big John Blues」(2:36)やや埋め草感あるブルーズ小品。 ここでもツイン・リード・ギターがカッコいい。

  「Andromeda」(5:10)ニューロックらしい夢見心地と悠然とした広がりのある作品。 ヘタなヴォーカル、奇妙に歌謡曲風のメロディ、10 拍子パターン、ツイン・ギターの絡みなど、ラフでまとまりのないところが個性に感じられる面白い作品だ。

  「War」(4:37)ブルーズロックを基調に、いくつかのアイデアを無理やりつなげた作品。 フェード・インの意味が分からないと悩んでいると、その後の展開にはさらについていけない。

  「Cemetry Junction - Part I,II」(8:29)地を震わせるドラミングと苦悩するギターが雄大なオーケストラを貫くドラマティックな作品。第一曲とこの作品のおかげでアルバムの評価が決まっているような気がする。

(BRC-29201 / DERAM SML 1073)


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