T2

  イギリスのハードロック・グループ「T2」。 70 年、元 GUN のピーター・ダントンを中心に結成。 同年 DECCA から唯一作を発表。 解散後も、ダントンを中心に再編される。 サイケデリック・ロック、ブルーズ・ロック色濃いインスト主体のヘヴィ・ロック。

 It'll All Work Out In Bloomland
 
Peter Dunton drums, lead vocals
Keith Cross guitar, keyboards instruments, harmony vocals
Bernard Jinks bass, harmony vocals

  70 年発表のアルバム「It'll All Work Out In Bloomland」 キース・クロスの破天荒なギターを中心にしたヘヴィ・サウンドを軸に、アコースティックな音やキーボード、オーケストラを交え、シンフォニックな展開をもたせた作品である。 サイケデリックな爆発とブルージーな感傷、乾いた叙情性をすべて兼ね備え、まさに劇的という言葉がふさわしい内容だ。 曲の展開は、ごくシンプルであり、きわめて即興風である。 しかし、ど派手なギターや奥行きのあるキーボードといったセンスあるプレイの味わいに加えて、メタリックにたたみかけるギター・ソロと翳のあるヴォーカル・パートの間の目もくらむ落差、けたたましいハードロック調と悠然たるバラードの間のドギツイ対比など、ダイナミクスや音質の変化に関わる極端さという面白さがある。 昨今のアーティキュレーション不足の音に浸り切った運動不足の耳には、危険過ぎる。 そして、最大の特徴は、硬質かつ凶暴なギターの音に古臭さがないことだろう。 とにかく、一気呵成の勢いとダイナミズム、これこそが本作の醍醐味である。 一方、アコースティックな場面のくすんだ雰囲気は、JETHRO TULLLED ZEPPELIN、さらには FAIRPORT CONVENTION などブリティッシュ・トラッド系にぐっと接近する。 この、ラウドな音とフォーク・タッチをごく自然に同居させるセンスは、到底見過ごせるものではない。 キース・クロスの才気迸る傑作である。 作曲は、すべてピーター・ダントン。 プロデュースはピーター・ジョンソンとグループ。 未発表の第二作もあるとか。

  「In Circles」(8:37)ハードなギターをフィーチュアしたヘヴィ・メタリック・ロック。 クールなヴォーカルと左右のチャネルに振り分けられた、けたたましいギターのアドリヴ。 音も切れ味がいい。 小気味よく、痛快に押し捲る。

  「J.L.T.」(5:55)エレピ(ヴァイブ?)、ピアノ、メロトロンを用いてメランコリックなヴォーカルを守り立ててゆくバラード。 アコースティック・ギターのストローク以外は、ギターレス。 後半は、メロトロンの響きに管弦が重なって、シンフォニックな盛り上がりを見せる。 前曲の熱狂の余韻を冷ますような、哀感あるアコースティック・ギターによるオープニングと、ブラスとメロトロンが重なり合う終盤は感動的。

  「No More White Horses」(8:37)ヘヴィかつミステリアスなギター・リフで始まるが、本編はアコースティック・ギター伴奏による泣きのバラード。 ヴォーカル・パートは、フォーク風といってもいいくらいの枯れた空気をもつ。 ここでも、後半すうっと突き通るようなブラスが、効果的に使われている。 ヘヴィなギター・リフとけたたましいソロは繰り返し現れて、曲にメリハリをつけている。 ギターとともにエキサイトする圧倒的手数のドラムスも痛快。 JETHRO TULLLED ZEPPELIN を思わせるリリシズムとヘヴィネスの交錯と重厚な構成。 名曲。

  「Morning」(21:11) 即興風ながらも緊迫感あるプレイで綴ってゆく、CREAM 路線の超大作。 アコースティック・ギターを用いた空ろなヴォーカル・パートを軸に、熱狂的なインタープレイや爆発力のあるギター・ソロなど、ハードな場面を次々と繰り出してゆく。 緻密さよりも、ライヴをそのまま収録したような臨場感と迫力を味わおう。 クロスの才気煥発ぶりを堪能できる。

(BRC-29206)


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