STANDARTE

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「STANDARTE」。 93 年結成。 ATOMIC ROOSTER を思わせる 70 年代ハードロック・フォロワー。 サウンドは、翳りのあるオルガン・ロック。 98 年新作 EP 発表。 BLACK WIDOW レーベルのトリビュートものの常連。ドラマーは LONDON UNDERGROUND で活動。

 Standarte
 
Michele Profeti organ, mellotron
Daniele Caputo vocals, drums
Stefano Gabbani bass
guest:
Steve Mattews spoken words

  95 年発表の第一作「Standarte」。 なんとジャケットまでキーフまがいという、徹底したブリティッシュ・ロック・オタク作品。 裏ジャケにはヴィンセント・クレインの写真と弔辞まであり、入れ込み方が分るというものだ。 内容は、メロトロン、オルガンを大フィーチュアしたハードロック。 作風、演奏は、凶暴にして哀愁たっぷりである。 英語の発声がややたどたどしいため、あっけらかんとした印象のあるヴォーカリストはともかく、ヘヴィな中に典雅なまろやかさと怪奇な冷気が同居する演奏は、まさしく英国王道である。 ヘヴィ・メタルに我慢ならないわたくしも、こういうハードロックなら O.K. です。 ポイントは、ファズを効かせたギターと、変調し歪んだオルガン、そして怒涛のメロトロンである。 ギターは、ノン・クレジットだが明らかに使用されており、なかなか冴えたリフで曲をリードしている。 メロトロンは、オールド・リスナーの目を醒まさせるように要所を締め、凡庸なヴォーカルも、ネバつかないスタイルがかえってストレートなドライヴ感をもつ演奏には合っているようだ。 モノローグやコラールなど劇的な演出も効いており、比較的シンプルな演奏を、小道具やヴィンテージな音色でカバーする作戦が図に当たっている。 もっとも、総じて演奏にはかなり余裕が感じられ、かなりのテクニシャンであることが分かる。 モダンな録音による明快な音もうれしい。
  クラシカルなオルガン、メロトロンとヘヴィなギターが繰り広げる英国風ハードロック。 これは、ずばりストライクな人にはたまらないと思います。 エンディング・ナンバーでよだれを流してください。 ヴォーカルは英語。

  「Dream Love Sequence Nr.9」(7:53)
  「One Strange December Evening」(4:55)
  「As I Wandered」(3:24)
  「Tolerance Town」(3:40)インストゥルメンタル。
  「Beat Pimp Muzak」(5:07)インストゥルメンタル。
  「A War Was Declared」(7:22)執拗なリフで圧倒するナンバー。 エンディングはチャーチ・オルガン。
  「In My Time Of Dying」(6:33)
  「Traumland」(5:20)インストゥルメンタル。
  「I Want You」(2:39)

(BWRCD 007-2)


 Curses And Invocations
 
Daniele Caputo drums, percussion, vocals
Stefano Gabbani bass, mellotron, moog
Michele Profeti organ, piano, harpsichord, mellotron, moog

  96 年発表の第二作「Curses And Invocations」。 再び冒頭から迸る古式ゆかしきメロトロン。 そして、枯れ果てたオルガンの調べに風采の上がらないヴォーカルとくれば、これはもう VERTIGO の隠し玉としか思えない。 金管楽器を模したムーグやピアノ、ハープシコードも加わって、クラシカルなサウンドはさらに充実し、ハードロックにとどまらないブリティッシュ・ロック全般へとその表現の幅を広げている。 オルガンにも、DOORS を思わせるサイケデリックな毒々しさとバウンスするようなプレイが現れた。 いわゆるキーボード・ロック的な面は強まっており、プログレ・ファンは頬が緩むだろう。 今回はギタリストは不在のようだ。
  シュアーなリズム・セクションとクラシック調の整ったキーボード・プレイのブレンドが生み出す作品は、3 曲目「Cities Of Towers」を筆頭に、意外なほどキャッチーである。 R&B テイストはオルガン・ロックには欠かせないファクターの一つだ。 ムーグによる、サイケデリックで大時代な効果も見逃せない。 さらに、5 曲目「Gehenna」のように、ハードロックから一歩進んだシンフォニックなサウンドも目立つ。 ハードなリズムと奇怪なハモンド・オルガン、そしてミステリアスなメロトロンが冴え渡るインストゥルメンタルの 6 曲目「Arrival Of The Traveller」は、KING CRIMSONGENESIS に迫るドラマチックな展開であり、これこそが新生面といえるだろう。 そして、三部構成の大作「Mooning 'Round The Mill Hill」では、エネルギッシュなハモンド・オルガンを軸に、ハープシコードでアクセントをつけたハードロックに端を発し、荒れ果て寂寥たるメロトロンを活かした映像的緩徐楽章を経て、分厚いキーボードが響くスペイシーなインストゥルメンタル・パートへと進む。 ゴシック調の重厚なストーリー展開だ。
  比較的シンプルな構成に魅力的な音色のキーボードが詰め込まれた、オルガン・ロック・ファン納得の作品。 ハードロック、プログレ両方のファンにお薦め。THE NICEEL&P ファンはマスト。 ヴォーカルは英語。

  「Dysangelium」(5:52)王道メロトロン。
  「What More I have To Pay」(2:35)
  「Cities Of Towers」(4:16)ポップな歌と電気処理したハープシコード、ピアノの取り合わせが奇妙な味わい。
  「Ordeal」(8:40)
  「Robin Redbreast
  「Gehenna」(3:09)
  「Arrival Of The Traveller」(3:28)
  「Herald」(2:06)
  「Mooning 'Round The Mill Hill」(11:56)
    「Wise Lane Revenant」
    「Paddington Bury」
    「Moon In Cancer」
  「N.T.F.B.Y」(2:23)
  「The One You Fear And Hate」(3:11)
  「Crossing」(2:46)

(BWRCD 015-2)


 Stimmung
 
Daniele Caputo drums, vocals
Davide Nicolini guitar
Michele Profeti organ, piano, moog, mellotron
Stefano Gabbani bass

  98 年発表の第三作「Stimmung」。 専任ギタリストが加入し、正式に四人編成となってのアルバム。 今までの作品でもギターの音は聴こえていたので、今回ようやく正式にクレジットされたということなのかもしれない。 内容は、新録音が 5 曲で、残り 5 曲は既存曲も含めたライヴ・テイク。 新曲のほとんどにギタリストが関わっており、演奏面でも、前作とは異なり、ギターがリードする場面が多い。 サウンドは、ギターの大幅な導入に伴って、前作で極めたキーボード・ロックに鋭い重量感/運動性のつけ加わったものとなった。 重く沈みこむようなところは BLACK SABBATH、走るところは DEEP PURPLE など、70 年代初期のサウンドをみごとに再現している。 もちろん、オルガン、メロトロンの見せ場もたっぷりある。 叙情的な英国風味たっぷりのハードロック。

  「Intro」(2:17)
  「(We Want) A Peaceful Village」(3:43)
  「Kankweezler」(4:57)
  「Stimmung」(3:20)
  「Sonnermensch」(4:42)
  「Moon In Cancer」(5:34)ライヴ録音。
  「Dark Satanic Mill」(4:36)ライヴ録音。
  「In My Time Of Dying」(8:26)ライヴ録音。
  「Yellow Cave Woman」(3:48)ライヴ録音。
  「I Won't Start Another Song」(9:08)ライヴ録音。

(BWRCD 028-2)


  close